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Let's travel! Grab your music.
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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#495 --- 訓市にとっての“アートの入り口” ---
番組前半はリスナーの皆さんからの“お便り”を紹介!
リクエスト曲もオンエアします。
後半のテーマは「マーガレット・キルガレン」。
小学生の頃、訓市が最初に触れたアメリカ文化である
「スケートボード」がきっかけとなって知った
女性アーティストのマーガレット・キルガレン
なぜ、彼女の作品に魅了されたのか?
その時に抱いた夢は叶わなかったが・・・
現在、東京で彼女の作品を直に観られる展覧会が開催中!
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Run Away With Me / Carly Rae Jepsen
Shape Of You / Ed Sheeran
Eye On It / Partynextdoor
Free As A Bird (2024 TWM Edit) / The Beatles
なごり雪 / イルカ
Sunday / The Cranberries
Forever Changed / DJ Shadow
Cry Without End / Sam Morton feat. Alabaster Deplume
Say Yes / Elliott Smith
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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KUNICHI was talking
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僕はすごくアートが好きなんですが、自分が一番最初に触れたアートというのはスケートボードです。一番最初にスケートを見たのは確か僕が小学校の1年生の終わりか、2年生頃だったと思うんですが、横須賀の米軍基地でした。学校の友達のお父さんが基地の中で商売をしていたらしくて、そこでお偉いさんを知って、僕たちを基地の中に連れて行ってくれたのです。その米軍基地の中が僕が初めて見る外国で、本当にびっくりしたんですけども、お金もドルですし、確か「バーガーキング」とかもあって、見たこともない感じで、芝生が生えていて。そこで「ミッドウェー」という空母に乗せてもらいました。ものすごく大きいんですよね。300メーターあるんでフットボール場より大きくて。そこの移動にアメリカ軍の水兵さんがスケボーをして移動してたんですよ。もう一目惚れってやつで、「将来、僕は絶対あれを買って乗るんだ!」と決心しました。実際にちゃんとしたアメリカのスケートボードというのを手に入れたのはそれから随分あとで、中1くらいだったかな。スケートのデッキを選ぶ時に何が違いなのかさっぱり分からず、結局そこに描かれているグラフィックで選んで決めたんですけども、それが僕が最初に本当に触れたアートで、そして初めて買ったアート作品でした。今もなんですけどね。アート作品っていうものを僕は持ってますけど、大体が友達がくれたもので、自分は買ったことがないんですけども、スケートデッキは好きなアーティストがデザインしていると今でも使わなくても買ってしまうんですが、そのスケートが始まりとなって、誰がこのグラフィックを描いているのか?とかを調べるうちに僕の知識は広がっていきました。それで随分と色んなボードに手を出したんですけども、そうやってスケートカルチャーのアートを知っているうちに、90年代頃からスケーター上がりのさまざまなアーティストっていうのが出現して色んな活動を始めました。例えば、写真を撮る人、絵を描く人、グラフィティを手がける者。皆バラバラなのですが背景にスケートボードというものがあって、DIY、なんでも自分でやれっていう精神がそこにありますから、何かすごくシンパシーを感じてストリートから派生したアート、ストリートアートの一つなんですけども、そういうものがすごく好きになりました。好きなアーティストを挙げていくとキリがないんですけども、例えばマーク・ゴンザレスとか、ハリウッドへと進出して映画監督になったスパイク・ジョーンズとか。その中でも一番好きだったアーティストにマーガレット・キルガレンという人がいました。
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彼女は90年代に出てきた、ストリートアート界の中ではまだとても珍しかった女性で、僕はその背景も何も知らないうちから、その作品が一目で大好きになりました。当時、ストリートアーティストがたくさん住んでいたサンフランシスコのミッション地区という所で活動していた人で、2次元的というかすごくフラットな絵を筆で描くのですが、そのモチーフも選ぶ言葉も発色も独特で本当に素晴らしいのです。アメリカには「ホーボー」と呼ばれた、貨物列車に無銭乗車し季節とともに移動しながら労働する人たちがいたのですが、彼らが電車に残した落書きがグラフィティの始まりだという話があります。マーガレットはそれをよく調べ、実際に電車に飛び乗ってグラフィティを描いたりしていながら、自分の画風というものを作っていきました。そうして出来上がった作風というのが、どこか昔の絵の雰囲気のあるフォークロア的なもので、他のグラフィティー上がりの人とまったく違うことをしていて、そこが僕はすごく好きになりました。2000年に大きな合同展が東京であって色んなアーティストが来日したんですけども、僕ももちろん彼女目当てで見に行きました。僕に買える物はTシャツくらいしかありませんでしたが、初めて、「いつかお金を貯めて絵が欲しい!」・・・そう思ったのが彼女の作品でした。いつかお金が貯まるだろうって思ってたんですが、すぐにそれは叶わないことだっていうことを知りました。というのは彼女は妊娠が発覚した時に癌に罹っていることが分かり、子供を産むことを決心して、病状が進んでいるにも関わらず最後に大きな個展を開いて、1人娘を出産したあと、2週間後に亡くなってしまったからです。まだ30歳くらいだったかと思います。決して多くの作品を残したわけでもなく、その作品は誰もが大事に保管してオークションにも出てこないので、彼女の作品を見る、もしくは買うっていうのは中々難しい貴重な存在になってしまいました。いつか本物の作品を見たい、そうずっと思っていたのですが、かつてのパートナーであったバリー・マッギーと、2人の娘が先日来日して、彼らが家に持っていた彼女の作品を集めた小さな展示会を、「スクーターズ・フォー・ピース」という神宮前のギャラリーで開催してくれました。僕ももちろん初日の前にも見に行きました。亡くなって20年以上経っていますが、彼女の作品っていうのは色褪せないですし、タイムレスな本当に素晴らしい作品でした。僕はその1つつを眺めながら、彼女が活動していた昔のサンフランシスコや乗っていたであろう貨物列車、彼女はサーファーだったんですけども、水の冷たいシスコの海を思い浮かべました。4月13日までやっていますので、皆さんもぜひ見に行ってください。行って彼女の作品を見れば、きっとtravelling without moving な時間を過ごすことができると思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。