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2024.11.24
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  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

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 Why do you travel? Why you're not?

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TUDOR logo

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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。

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#529 ? “まずはトライ!” ---

テーマは「ミラネーゼ」

かつて、訓市が金銭的に苦しかった頃に
美味しい料理をご馳走になり、
食の面で“オトナの愉しみ方”を学んだ先輩との思い出。

取材旅行で訪れたイタリアで
先輩に誘われて訪れたレストランでのディナー・・・
大嫌いだった食材が一転!
感激とともに大好物になったものとは?

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毎週1名の方には、
「500回オンエア記念Tシャツ」をプレゼント中!

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当番組のPodcastは・・・
毎週日曜日の20時に最新版をアップします。
こちらも聴いてください〜

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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。

訓市がセレクトした“お便り”の中から
毎週1通を厳選して、
「番組オリジナルTシャツ」をプレゼント!

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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2024.11.24

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Tage Wie Diese / Die Toten Hosen

2

Disillusioned / Daniel Caesar

3

Underdog / Alicia Keys

4

Young Lion / Sade Adu

5

Seabed Eden / 青葉市子

6

Congratulations / Mac Miller

7

Juna / Clairo

8

Somewhere / LANY

9

Landslide / Smashing Pumpkins

2024.11.24

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。


KUNICHI was talking

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今年いくつもあったんですけども、先日また知り合いが亡くなってお葬式に行ってきました。年齢的にそういう歳に差し掛かってきたからなのか、まだまだ若いのに病に倒れる知り合いが多いのか分かりませんが悲しいものです。それぞれが歳を重ね仕事に忙しくなると年に1度会えればラッキーという古い友人たちというのが増えていくものですけども、そういう人たちにお葬式でたくさん出会いました。「昔はみんなと顔を合わすのが結婚式だったのに、いつの間にか葬式になっちゃったなぁ」と歳上の知り合いがぽつりと言いました。「まさか、あいつがねー」とか、「まさか、この歳で、こんな急に」「本当、まさかまさかの重なりだなぁ」という話になりました。クリスチャンの方だったので教会のお葬式で、まあいろいろ滞在時間が長いんで考えることが多かったんですけども、ここでその故人を偲んで食べ物の話をしようと思います。番組をやっているとよくお便りで「旅先で一番美味しかったものは何ですか?」とか「思い出深い食のエピソードを」なんていうお便りがよく来ます。旅の目的が美味しいものを食べるというグルメ旅の人もたくさんいるんじゃないんでしょうか。ちょうど先日もどっかのニュースで「旅は見るから食べるへ」なんて記事も見かけましたし。今となっては自分も古い友達たちも歳をとり、色んなお気に入りのご飯屋さんなどに連れてってくれるので、海外に行くとわりと美味しいものにありつけています。もちろん、僕はギラギラの男の人と香水プンプンの女性が高級料理をむさぼる流行りの店なんていうのが好みじゃないのを知っているので、地元の人に人気の老舗とか、ここは汚いけど美味いぜというところばかりに連れて行ってもらって、「うーん、こいつは美味い」と舌鼓を打っています。例えばニューヨークに行くとスライスピザというのがあります。大きなピザをスライスで切ってあって、注文するとパッと温めて出してくれる。なんですかね、安くてうまくて早い、日本で言う牛丼のような立ち位置でしょうか。これにしても美味しい店とそうでない店では同じピザとは思えないほど味が違います。「スライスピザ屋はイタリア人がやってる老舗に限る」と向こうの友達は言っています。本当に違うんですよ。脂っこさとか、それは聞かないと分からないって感じなんですけども、ステーキにしても国際的に有名で予約が取れない老舗で高いものを食べなくても、地元の友達たちがお祝いの時に行くお店というとこのステーキの方がはるかに安くて美味しいものを食べられます。と言う訳でいつの間にか“古くて美味い”とか“安くて美味い”というメシ屋さんをたくさん色んなことで知ることができましたが、30代になるまではそんな店1つも知りませんでした。ずーっと食に関しては安さの1択。ニューヨークだったらダラーピザ。つまりさっき言ったスライスピザが1ドルの所とか、「あそこの方が美味しいよ」って言われても安い方で選んでいましたし。ロンドンなら一番安いケバブとかチャイナタウンで一番安い中華屋とか、基準は全て値段でした。


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その先日亡くなった友人は僕より4つほど歳上で、若い時からとにかく美食家というか、美味しいワインと食べ物に目がない人でした。それも「あそこのアレをつまみに、この酒を飲むと合って美味いんだよ」とか、すごい細かいグルメなんですよ。「あのレストランは有名だから行ったら何でも美味いから、あとはお任せ」みたいなことは決して言わないんです。「この焼き鳥だったら、この部位を塩で食え」とか。それで東京で偶然会ったりすると、そのうんちくを聞きながらご飯を奢ってくれたりする。当時は1週間で最も食べるご飯がコンビニ飯みたいな大変豊かでない食生活でしたから、この人と会うと有難いことこの上なかったです。ある時、僕は友達とイタリアミラノにいました。インテリアデザインを中心とした大きなフェス「サローネ」っていうのが春先にミラノで毎年あるのです。ぼくらはそこに寝袋を持って参加しました。寝床は向こうのプレス会社の事務所かなんか、そこで雑魚寝です。ミラノに行っても美味しいご飯なんて食べられるわけがない。美味しいもの食べたいな。ミラネーゼ、ミラノカツレツとか。そんな時、その友人と会ったんですよ。それで「くんいち?、ミラノにさ、行きつけの好きなレストランがあるんだよ。食いに連れてってやるよ」「え、ミラノのレストラン、行きたい。けど、俺連れの友達がいるし」。すると、「もちろん連れてこいよー。一緒に美味いもん食おうぜ〜」僕は即座に頷いて、その夜、連れと指定されたレストランに向かいました。そこは観光客なんていなそうな、いかにも老舗の感じのいい小ぶりのレストランでした。ワインの銘柄なんて1つも分かりませんが、これは美味いに違いないというボトルのワインを飲み「あー、やっとイタリアミラノに来れた」と喜んでいました。「さてさて、何がここは美味しいんだろうか?」「ミラネーゼ、肉とか食えるのかな?」「名物はなに?」。すると友人が「この季節はさ、ミラノと言えばホワイトアスパラなんだよ。採れたてをさ、バターソテーで頂く、卵とチーズが乗ってね。やはり季節のものを食べるに限るんだよ」。僕と連れはがっかりしました。ホワイトアスパラは缶詰を食べたことがありますが大嫌いだったんです。ぬめっとしてなんか変な匂いがあって、ちょっとウーパールーパーを食べてるみたいな、そんな感じじゃないですか。前菜は美味しかったんですけど、「最後がホワイトアスパラかぁ、残念だ」という気持ちでいっぱいでした。そこにうやうやしく登場したんですよ。その嫌いなアスパラが。ご馳走になってる訳だから嫌だとも言えず食べたんですが、その時の美味しさときたら今まで食べていたホワイトアスパラは違うものを白く塗っただけなんじゃないかっていうぐらい違う。友人はその様子をニヤニヤして眺めながらワインを飲んでいました。きっと分かっていたんだと思います。がっかりした僕らの表情と、食べたら美味いって言うに違いないっていうこと。以来、僕はホワイトアスパラが大好物になり色んな所で食べますけども、食べる度にその友人に感謝していました。嫌いなものを一生嫌いと思わず、たまにトライする。もしかしたらすごく美味しいと感じるようになるかもしれないということを僕はホワイトアスパラで学んだんです。いつか奢り返したいなあと思っていました。食べたことのないようなものを食べさせて、「訓市〜、これは食ったことねーよ」って言わせたかったです。1度も奢ることなく友人は亡くなってしまいました。お礼っていうのはやっぱり引っ張らないで、すぐやんなきゃいけないんだなって感じた週末でした。