ANA WORLD AIR CURRENT

世界の各地で体験した思い出を語り合う60分。
EVERY SATURDAY 19:00-19:54 on J-WAVE

NAVIGATOR : 葉加瀬太郎
ON AIR
2021/02/27
GUEST
小倉ヒラク
DESTINATION
World of fermentation

発酵を巡る世界の旅。

発酵デザイナーの小倉ヒラクさん。発酵文化の専門家として、世界各地の発酵事情をリサーチし、様々な活動を行っている小倉さんに、国内外の発酵カルチャーを巡る旅のお話を伺います。葉加瀬さんも大好きな発酵食品の奥深き世界、そして東洋と西洋の発酵のボーダーラインとは!?

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MEMORIES

発酵文化をたずねる旅では驚くことが度々あるそうで、中国雲南省の金沙江も思い出深い土地の一つ。そこに住むリス族の人たちに飲ませてもらったのは、梨のような味の焼酎。作り方はというと、おじいちゃんが山に登って青い色をした不思議な薬草を取ってきて、天日干しにして挽いたものを、水で練ってお団子にし、そこにカビを生やして麹を作り、その土地でとれるコーリャンや麦を混ぜて作るんだそう。日本の麹は大体穀物で作られており、薬草で作る麹を見たのは小倉さんもこの時が初めてだったそうです。
お茶の葉を馬で運んだことから名付けられた「茶馬古道(ちゃばこどう)」と呼ばれる道。チベットからネパールまで約4000km、馬の背中にプーアール茶を乗せて発酵させながら運んでいくという文化で、紅茶のように茶葉の酵素による発酵ではなく、微生物を介した発酵が行われている。かかる時間はなんと最低半年、長い時は2年ぐらいかけて行くそうで、実際に昔の道を通ってみると凄い崖! 何故そんな大変なことをするのかというと、チベットは標高の高さゆえに野菜が育てられないので、ビタミン不足を補う為にお茶を飲むという必要があったんだとか。
何度も訪れているという、ハンガリーのトカイ地方。きっかけは、現地の人からの「面白いカビがあるから見に来ないか」という誘いで、行ってみると、畑のブドウがボトリティス・シネレアという灰色カビでクシャクシャになっていて、地元の人曰く「これで酒を造るんだ」。カビは旨味を作り出すと同時に水分を抜き取るため、そのブドウからは濃厚で甘いデザートワイン「トカイワイン」が出来る。多くは高級ワインとして海外に輸出されるが、たまに地元の人たちが飲む時はフォアグラに合わせると聞いてまた驚いたそう。
トカイワインに使われているブドウは、フルミントという品種のブドウ。ヨーロッパのブドウはワイン用にチューンナップされたものが多い中、フルミントは地ブドウで、実は特にワインに向いてる訳ではないんだそう。実際、フルミントで作るワインの半分以上は貴腐ワインでなく、普通のドライな白ワイン。それを地元で頂いて、またびっくり! 小倉さんの地元、甲州勝沼の白ワインとそっくりな味がしたのだとか。トカイはヨーロッパにしてはミスティな土地で、勝沼と気候が似ているところも。ちなみに、甲州ワインを飲むときに合わせるのは、沢庵やマグロのぶつ切り、お寿司などで、一方ハンガリーではトカイワインにフォアグラ……そんなところからも感じられる発酵文化の“多様性やかわいらしさ”がまた、小倉さんにとってもたまらないんだそうです。

PLAYLIST

  • Around The World / Kings Of Leon
  • Wasn't Born To Follow / Yo La Tengo
  • Something Has to Change / The Japanese House
  • Feels Right / Biig Piig
  • 組曲「もうひとつの京都」より第1曲 茶かほる / 葉加瀬太郎
  • Once Upon A Time / SHAED

GUEST

小倉ヒラク

発酵デザイナー。「見えない発酵菌たちのはたらきを、デザインを通して見えるようにする」ことを目指し、全国の醸造家や研究者たちと発酵・微生物をテーマにしたプロジェクトを展開。東京農業大学で研究生として発酵学を学んだ後、山梨の山の上に発酵ラボをつくり日々菌を育てながら微生物の世界を探求している。アニメ『てまえみそのうた』でグッドデザイン賞2014を受賞。著書に『発酵文化人類学』『日本発酵紀行』。YBSラジオ『発酵兄妹のCOZY TALK』パーソナリティ。2020年4月に下北沢に店舗『発酵デパートメント』オープン。

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NEXT FLIGHT

ON AIR
2024.12.28
GUEST
角幡唯介
DESTINATION
Philadelphia
1976年北海道生まれ。探検家・作家。チベットのヤル・ツアンポー峡谷の単独探検や、極夜の北極探検など独創的な活動で知られる。近年はグリーンランドとカナダ・エルズミア島の地球最北部で狩りをしながら犬橇で旅をするエスキモースタイルの長期旅行を実践する。『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』で開高健ノンフィクション賞・大宅壮一ノンフィクション賞など、『雪男は向こうからやってきた』で新田次郎文学賞、『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』で講談社ノンフィクション賞、『極夜行』で大佛次郎賞などを受賞。近著に『裸の大地』第一部・第二部、『書くことの不純』。