ANA WORLD AIR CURRENT

世界の各地で体験した思い出を語り合う60分。
EVERY SATURDAY 19:00-19:54 on J-WAVE

NAVIGATOR : 葉加瀬太郎
ON AIR
2021/03/20
GUEST
川村亘平斎
DESTINATION
Bali

インドネシアの影絵の世界。

国内外でのパフォーマンスのほか、日本各地でフィールドワークやワークショップを通じ、その土地に残る物語を影絵作品として再生させる活動も行っている、影絵師で音楽家の川村亘平斎さん。日本人として異国の伝統芸能「影絵芝居/ワヤン・クリット」に挑んだインドネシア・バリ島での修行時代のお話、インドネシア国内に残る儀礼や伝統芸能などについて伺います。

今週のPODCASTを聴く

MEMORIES

20代でガムランを学びに、30代で影絵を学びに行ったバリ。バリにおいての影絵とは、“音楽を理解した上で芝居・踊り・語りを習得していくもの”で、長い音楽キャリアがないと影絵師になれないため、ガムランをやっていた経験を生かすことが出来たんだとか。そんな伝統文化である影絵の〈芸能〉としての存在に憧れた川村さん。生業の副産物・収穫物として芸術があり、自分たちのパフォーマンスを土地に還すことで来年の恵みがより豊かになる、その循環を体現している様子に惹かれたそうです。また、バリで感じたことの1つが、日本と比べて圧倒的な生き物の多さ。動植物をはじめ目に見えない細菌など、全ての生きとし生けるものたちと折り合いをつけていかないと人間は生きていけないということを、バリの人たちは無自覚に分かっていて、土地の力の強さを理解しているように感じられたそうです。
バリ島の影絵師で、過去に通過儀礼をした外国人は何人かはいるものの、ここ100年で10人いないレベルなんだとか。川村さんが習ったのは、世界中でバリ島の影絵といえばここと言われているスカワティという村の長老で、その長老曰く、自分が教えた外国人でバリで奉納公演をやったのは人生で初めて、とのこと。そもそもバリで影絵を習うには、いわゆるインドネシア語ではなく、地方言語のバリ語に加え、普通のバリ人にも理解出来ないカウィ語(サンスクリット語に近いもの)の2カ国の言葉を話せるスキルが必要。そこからさらに呪文や歌を覚えるなどし、木槌を使って音楽家に指示を出す指揮の役割も担うなど、とにかくやることが沢山。最終的にバリで行った公演では、1時間半ほどに及ぶ古典を上演したそうです。
マレーシア・ブルネイ・インドネシアの3カ国にまたがるカリマンタン島。オランウータンが住む森を守る活動をしている友人がきっかけで、川村さんが訪れたのは中央カリマンタン。そこは東京と埼玉を足した程の面積というジャングルで、オランウータンが頭の上をビュンビュン跳ぶ中、川をのぼった先の村が目的地。村には日中電気がなく、夕方6時から翌朝6時の間だけ電気が走るという環境の中、公民館前のグラウンドにあるバレーボールのコートにスクリーンを張り、仮設の電源タップをバチバチいわせながら影絵公演を行ったんだそう。インドネシアとはいえ田舎では見たことがない人も多く、初めて見るのが日本人の川村さんの影絵というなかなかレアな異文化交流になったんだとか。そして印象的だったのが、ジャングルの音。夜、虫から鳥から発せられる音圧が凄く、圧倒的な自然を感じられたそうです。

PLAYLIST

  • Stay / Kygo feat. Maty Noyes
  • 8 Tahun / Adhitia Sofyan
  • Sabilulungan / Suara Parahiangan Group
  • Roots─舞踏組曲「JAKMAK」より / 葉加瀬太郎
  • I Just Couldn’t Save You Tonight / Ardhito Pramono ft. Aurélie Moeremans

GUEST

川村亘平斎

影絵師/音楽家。1980年、東京生まれ。インドネシア共和国・バリ島に2年間滞在し、影絵人形芝居【ワヤン・クリット】と伝統打楽器【ガムラン】を学ぶ。世界各国で影絵と音楽のパフォーマンスを発表。日本各地でフィールドワークやワークショップを行い、土地に残る物語を影絵作品として再生させる活動が高く評価されている。絵本【おそなえきのみ】(`18)、シネマ歌舞伎「The DOGGY’s LOOK」影絵演出(`19)NHK Eテレ「こころの時代」影絵演出(’20)写真集【東京影絵】(川村亘平斎・宮本武典共著)ほか、切り絵、イラストや映画、CMへの楽曲提供など幅広く活動している。ガムランを使った音楽ユニット【滞空時間】主宰。平成28年度第27回五島記念文化賞美術新人賞受賞。

MESSAGE

空港ラウンジや機内など、ANAと過ごしていただく空間で体験できる香り「ANAオリジナルアロマオイル」と「エアミスト」をセットにして毎月5名様にプレゼント!〈プレゼント希望〉と明記してご応募ください。
プレゼントの応募・感想はこちら

NEXT FLIGHT

ON AIR
2024.12.28
GUEST
角幡唯介
DESTINATION
Philadelphia
1976年北海道生まれ。探検家・作家。チベットのヤル・ツアンポー峡谷の単独探検や、極夜の北極探検など独創的な活動で知られる。近年はグリーンランドとカナダ・エルズミア島の地球最北部で狩りをしながら犬橇で旅をするエスキモースタイルの長期旅行を実践する。『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』で開高健ノンフィクション賞・大宅壮一ノンフィクション賞など、『雪男は向こうからやってきた』で新田次郎文学賞、『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』で講談社ノンフィクション賞、『極夜行』で大佛次郎賞などを受賞。近著に『裸の大地』第一部・第二部、『書くことの不純』。