ANA WORLD AIR CURRENT

世界の各地で体験した思い出を語り合う60分。
EVERY SATURDAY 19:00-19:54 on J-WAVE

NAVIGATOR : 葉加瀬太郎
ON AIR
2021/12/04
GUEST
山田五郎
DESTINATION
Salzburg

山田五郎さんのルーツを探る旅。

美術評論や街情報など、さまざまなことに精通する評論家、山田五郎さん。学生時代のオーストリア・ザルツブルクへの留学体験や、ヨーロッパ中の美術館を巡ったエピソードなど、今の山田さんの活動につながる旅の想い出を伺います。さらに、最新刊「機械式時計大全」のお話も!

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MEMORIES

アムステルダム国立美術館(ライクスムゼーウム)で、版画や素描の部屋で作品検索をしたときのこと。レンブラントの素描が見たくて検索すると、何も守られず裸の状態でトレイにのって出て来たことにびっくり! 水性のインクで描かれているのに、もしもくしゃみしたら大変なのではと学芸員に問うと「じゃあ、くしゃみしないでくれ。私達は市民の財産を預かってるんだから、市民が見せてくれと言ったら出して当たり前だ」と言われ、意識の違いに衝撃を受けたんだそう。
当時のロンドン・ナショナル・ギャラリーの地下には、ナショナル・ギャラリーが今まで掴まされた贋作のコーナーがあり、何年何月に幾らで購入し、その後こういう理由で工房作と分かったなど、詳しい説明が書かれていた。これは中途半端に真作を見るより勉強になると、毎日通っていた山田さんに、学芸員が「何がそんなに面白いんだ? なるほど美術史やってるのか、もっとあるぞ」と色々出して見せて説明してくれた。贋作だと分かると隠してしまう日本との気質の違いを感じたそう。
「大英博物館は世界の泥棒倉庫だ」と言うと、イギリス人は「だってギリシャ人やイタリア人に任せてたら全部駄目にしちゃうから、俺達が保管してるんだ」と返す学芸員ジョークに、確かに一理あるなと思った学生時代の山田さん。実際ドイツ、オランダ、イギリスの美術館・博物館はとても良かったそうで、特にイギリスは自国に古典の美術が無かった分、保存や研究が進んでいた。一方イタリアはというと野放し状態で、とても驚いたのだとか。
ローマでは人生の中で大きな気付きとなった、とある出来事が。ある夜、サッカーか何かで大盛り上がりのローマの街角で、酔っ払いがベルニーニの彫刻に立小便をしていたのを見かけた山田さん。これはさすがにいかんと「そういうことしてるからイギリス人に『イタリア人には美術任せられない』と言われるんだ」と言うと、「イギリス人は自分達で作れないからそんなこと言うんだ。壊れたらまた作ればいいじゃないか」と返された言葉に、人の暮らしとして一体どちらが豊かなんだろう、後生大事に保管するよりイタリアの方が豊かなのでは…と考えてしまったそう。

PLAYLIST

  • My Favorite Things / Pentatonix
  • トルコ行進曲 / KRYZLER & KOMPANY
  • Trans Europe Express / Kraftwerk
  • 博士ちゃん / 葉加瀬太郎
  • 歌劇「アイーダ」?凱旋の合唱 / カラヤン指揮、ウィーン楽友協会合唱団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

GUEST

山田五郎

編集者・評論家。1958年東京都生まれ。上智大学文学部在学中にオーストリア・ザルツブルク大学に1年間遊学し、西洋美術史を学ぶ。卒業後、(株)講談社に入社『Hot-Dog PRESS』編集長、総合編纂局担当部長等を経てフリーに。現在は時計、西洋美術、街づくりなど、幅広い分野で講演、執筆活動を続けている。

MESSAGE

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NEXT FLIGHT

ON AIR
2024.12.28
GUEST
角幡唯介
DESTINATION
Philadelphia
1976年北海道生まれ。探検家・作家。チベットのヤル・ツアンポー峡谷の単独探検や、極夜の北極探検など独創的な活動で知られる。近年はグリーンランドとカナダ・エルズミア島の地球最北部で狩りをしながら犬橇で旅をするエスキモースタイルの長期旅行を実践する。『空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む』で開高健ノンフィクション賞・大宅壮一ノンフィクション賞など、『雪男は向こうからやってきた』で新田次郎文学賞、『アグルーカの行方 129人全員死亡、フランクリン隊が見た北極』で講談社ノンフィクション賞、『極夜行』で大佛次郎賞などを受賞。近著に『裸の大地』第一部・第二部、『書くことの不純』。