KYOCERA
TECHNOLOGY COLLEGE

21:40 - 21:50

毎月1名のゲスト講師が登場。週替わりのテーマで学生向けの授業を実施。
未来へのヒントが詰まったコーナーです。

2020年新卒採用|京セラ

YouTube J-WAVE CHANNELで、学生向けの授業の様子をダイジェスト配信中

2022.09.02 ~ 2022.09.30
阿部高志(筑波大学)

学生向け授業 9月の講師は、世界トップレベルの睡眠医科学研究拠点である、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 准教授/主任研究者の阿部高志さん!授業のテーマは「睡眠や眠気の研究とテクノロジーの関わり」。また、9月の「KYOCERA TECHNOLOGY COLLEGE」は、林瑠奈さん(乃木坂46)がピンチヒッターとして参加します。

第1回のテーマは、「眠気とは」。「眠気に伴う事故、ヒューマンエラーを防止する研究」を筑波大学で行っている阿部さん。「睡眠不足に伴うパフォーマンス低下を検出する技術」や、京セラと共同で「睡眠不足を軽減」し「入眠促進」する研究をしているそうで、「仮眠を最適化する」ことを目標としていると言います。阿部さんは「眠気の正体は実はまだよくわかっていない」けれど、「睡眠不足に伴い、タンパク質のリン酸化が解明されて」おり「脳内でどのような現象が起きているかを研究中」だと解説。「理論的には、『睡眠の生理的欲求』」が眠気だそうで、「お腹が空いたら食べたくなる」のと同じく、「睡眠不足になると生じる」ものとのこと。「眠気が生じる要因は分かって」いて、現在「(要素の)操作によって生じる現象を多面的に測っている」と阿部さんは解説しました。(9/2)

第2回のテーマは、睡眠不足とパフォーマンスの関係。日本人の睡眠時間は、経済協力開発機構(OECD)の2020年の調査によると、「世界主要33国の中で最も短い」そうで、「平日、6時間未満が4割」「7時間未満は8割」と阿部さん。睡眠時間とパフォーマンスに関する研究を行い、7時間・6時間・5時間睡眠の被験者たちに、実験室の中で何日間も暮らしてもらったとのこと。その結果、「9時間睡眠の人はずっとパフォーマンスが変わらない」「8時間睡眠の人も、統計的にはフラット」「7時間睡眠未満の人は、日を追うごとに低下して」「主観的には、ある程度まで眠気が高まると、眠気は頭打ち」して「過小評価する」ことが判明。「だからパフォーマンスを測らなければいけない」と阿部さんは言います。「基本的に、睡眠は夜間に」しっかり取るのが理想で、仮眠を日中に取ると深い睡眠になりにくく「できれば途中で分断するより長く寝た方がいい」と解説。二度寝も「スヌーズを使うと、起きる直前の睡眠が浅くなって」しまい、「昼寝をする頻度が上がってしまう」ため良くないと語りました。(9/9)

第3回のテーマは、「睡眠不足に伴うパフォーマンス低下の検出技術」。パソコンに向かって、刺激が出てきたらすぐにボタンを押すという検出方法を開発した阿部さんは「目や瞼の動きからいろんな指標を取り出し、機械学習で反応速度を算出」するとのこと。阿部さんは元々「睡眠不足と交通事故の因果関係を研究して」いて、「事故発生時、ドライバーの前日の睡眠時間が、他のタイプの事故より短かった」ことから「睡眠不足の状態をどうにかしないといけない」と考えたそう。「自分の睡眠時間が足りないことを知り」「目の状態を使って簡単に測れるように」したと阿部さん。川田さんから自動車業界との協業について聞かれると、阿部さんは「所属していた研究機関で」開発したと言い、「なかなか自動車業界との共同研究とはならなかった」理由として「自動車業界は、顔表情で眠気を推定する」ことから「違うものを正解としている」と解説。「顔表情は睡眠研究ではほとんど使われていない」という側面も説明しながら「ドライバーの居眠り、居眠りに至るまでを検知するところから始め」て、「自動運転から手動運転に切り替える際に必要な技術」と、阿部さんは自身の研究内容の意味を語りました。(9/16)

京セラの渡邉孝浩さんも交え、「3年ほど前から阿部先生と共同研究」しているという「仮眠・起床・AIシステム」について解説。「簡単に言うとお昼寝センサー」で、「血流が見られるセンサー」だと渡邉さん。「現状は耳からの血流」を測っていて、「早く寝かす技術と、気持ちよく起こす技術の2つがある」そう。今年のCEATEC(アジア最大級の規模を誇るIT技術とエレクトロニクスの国際展示会)にてお披露目。形状は「一般的なウェアラブルデバイスに近い」とのこと。早く寝かす技術は「左右異なる周波数帯の音を使う」と言い、「人間はある一定の揺れを感じると眠くなる」「物理的に揺れを起こすのは大変なので、音で知覚化する」と渡邉さんは解説。逆に「気持ちよく起こす」という側面に関しては、渡邉さん自身が「お昼寝をよくするんですけど、毎日うまく起きられない」「それを何とかしないというのが発端」だと言います。「AIが起こしどころを判定して」「睡眠に入ってから9分後が(科学的に)一番起きられる」という意外な回答が。「あんまり寝すぎるとボーっとしてしまう」ため、「クイックな仮眠に価値がある」のだそう。「ベットじゃなきゃ眠れないという人を助けたい」という、多忙なビジネスマンが効果的に取り入れられる側面も。「生活にシームレス」で「ウェアラブルでありたいと思っていた」このデバイスは、「昨年度、e-Sports選手への診断も実施した」そうです。(9/23)

阿部さんの授業・最終回は学生からの質問。「研究室で眠ってパフォーマンスを測るとなると、通常の睡眠状況と違うのではないか?」という問いに阿部さんは、「調べたい指標以外は、採取しないようにする」「調べたいことだけを研究室で調べて、フィールド(別の環境)で別の調査もする」と回答します。次に「明晰夢をよく見て」「それが嫌な夢」という学生が、「言語がわからない英語の音楽やスピーチを聞くと、悪夢を見る機会が減った」と自身の体験を紹介。一方阿部さんは「レム睡眠中に匂いを嗅いでもらって夢を操作する」ことが可能だと言い、「好きな匂いを嗅がせたら、夢が不快になっていく」「嗅覚刺激は直接感情を想起する海馬につながっている」「快の状態にするため、研究を進めている」と興味深い回答を。「目がよく動いている時に(人を)起こすと、夢を覚えている」「目が止まっている状態は音刺激の処理をしている」など、研究者ならではの視点で睡眠の質を解説。最後は「ショートスリーパーかロングスリーパーかの判別」「ロングスリーパーを、ショートスリーパーにできるのか?」という質問。阿部さんは遺伝が関係すると言い、「7時間睡眠が必要な人がショートスリーパーになろうとするのは、無理がある」と答えました。(9/30)

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