「旅と食」
うまい料理もいろいろ食べた。
でも、心に残るのは、そういう食事ではない。
ひもじい思いをしたことや、まずかった料理のほうが
記憶に残る。
焚き火をかこみ、仲間と食べた記憶。
安い酒をつぶれるまで飲んだ。
いつかまた、そんな旅をしたい。
Theme is... MEALS
世界約50ヶ国を旅した野村訓市が
各地、各都市で食べた「料理」「食」にまつわるエピソードを語ります。
貧乏旅行だった故のユニークな体験、
もう一生分を食べて、今は頑なに拒んでいる「料理」などなど・・・
美味しい話をお届けします!
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
現在、「ドライブ」にまつわるエピソードと
その時に聴いていた曲について大募集中!
日本、海外、どちらの体験でもOKです。
今後、リスナーの皆さんの「ドライブ体験」というテーマで
ご紹介する予定!
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Intro / The XX
ロンドン出身の3人バンド、The XX。この曲は2009年にリリースされたデビュー・アルバム『XX』に収録。訓市は先日、仕事でニューヨークに行った時、二日酔いで入店した行きつけのカフェで流れているのを耳にして思い出したとか。
Days Of Wine And Roses / Cassandra Wilson
邦題「酒とバラの日々」でお馴染みのジャズ・スタンダードで、作曲は映画音楽の巨匠ヘンリー・マンシーニ。カサンドラ・ウィルソンのヴァージョンはクリント・イーストウッドが監督を務めた1997年の映画『Midnight In The Garden Of Good And Evil』のサントラに収録されています。
Warm Beer And Cold Women / Tom Waits
訓市のフェイヴァリット・アーティストの一人、トム・ウェイツの1975年のアルバム『Nighthawks At The Diner』に収録。訓市曰く、「ラジオ局には、肌がCOOLなWOMENはいない!」とのこと。
Golden Brown / The Stranglers
1970年代に大活躍したイギリスのパンク・ロック・バンド、ザ・ストラングラーズ。シングルのリリースは1981年で、その後、アルバム『La Folie』に収録されました。
And The Folklore Continues / Tommy Guerrero
訓市がプライベートでも付き合いのあるミュージシャンでスケートボーダーのトミー・ゲレロ。彼の地元サンフランシスコで連れて行ってもらった店で食べたタコスを思い出す1曲とか。
Everything I Own / Bread
米カリフォルニア出身で、1960年代から70年代に活躍したバンド、ブレッドのアルバム『Baby, I’m A Want You』に収録されている美メロ名曲です。
Diggin' On You / TLC
T-Boz、Left-Eye、Chilliの女性3人からなるR&Bグループで、1990年代前半に一世を風靡したTLC。この曲は1994年にリリースされた大ヒット・アルバム『Crazy Sexy Cool』に収録されています。
I Don't Wanna Play On Your Yard / Peggy Lee
訓市によれば、「テキサスに留学した時にお世話になったホスト・ファミリーのお母さんが口ずさんでいた曲で、これを歌いながら食事を作っていました。とても懐かしいです」とのこと。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
★★★★★★★
ボクは長く旅をしていたんですけど、その中の喜びの一つというのに「ごはん」があります。ボクらが若い頃、インドやタイといったアジアの国をよく回っていたのは、もちろん国が綺麗だったり色々な人と出会えるとか、そういうのが理由の一つだったんですけど、もう一つは物価がすごく安くてですね、貧乏な腹ペコヤングたちが好きな時に好きなだけ「ごはん」を食べられるっていうことがすごく大きかったと思います。東京にいるとコンビニ飯とか安いものしか食べてなかったのが、アジアに行くと朝からステーキ食おうと思ったら食べられちゃうんですよね。当時は現金やトラベラーズチェックっていうのを「マネー・ベルト」っていうお腹に隠すベルトに入れてみんな持ち歩いてたんですけど、必要に応じてそのお金を両替するんです。円高だったんですよね。なので物価も安かったですし、1万円札を両替するとものすごい分厚い札束になってですね。生まれて初めて見る札束っていうことで、よく自分の顔や友達の顔を札束でひっぱたいたりしてましたね。「気持ちいい、気持ちいい」なんて喜んでたんですけど。バンコクやデリにいる時っていうのは大体安宿街にいて、そこからカフェとかに行って朝からパンケーキ食べてフルーツ食べてアイスクリーム食べて、100円とか200円みたいな世界でした。本当にそれが幸せで、朝、友達と会ったりすると「今日は何を食べる?」って言ってニヤニヤしたものでした。僕が好きだったのは南インドのほうに行って、海沿いに現地の人から一部屋借りるんですけど、そういうのが一番安いというか。家の外のビーチで朝、ぼーっとしていると現地の人が頭の上に籠を乗っけてそこにフルーツを満載して歩いて売りに来るんですよ。それが熟したマンゴーだったりパイナップルだったりして、その場で切ってくれるんです。あれが本当に美味しくてですね。暑いので汗かいて口が渇いているときに新鮮なフルーツをその場で食えるっていうのは本当に幸せでしたね。あとは揚げパン売りとかもいまして、中にチョコレートとかが入ってるんですけど、それも美味しくて。東京にも昔は自転車でお豆腐を売ってる人とかいましたけど、野菜の行商とか。やってくれないですかね。道でフルーツ売りとかあったら嬉しくないですか?
★★★★★★★
最近は仕事で海外に行くことが多いので、海岸でフルーツを食べるとかいうようなことがないんですけど、仕事の時、食で一番好きなのは「朝ごはん」ですかね。時差ボケのせいか朝早く起きてしまって、普段あまり朝食をとらないんですけど、旅行中は絶対食べますね。なぜか目玉焼きが好きでして、必ず二つ半熟の目玉焼きとトーストを頼んで、カフェラテを飲んで、タバコを吸うっていうのが日課なんですけども。同じものを繰り返して食べるのがもしかしたら好きなのかもしれないですけど・・・ 昔は変なものにたくさん手を出して失敗したり、食べ慣れてない高いものを安い値段で見つけると無理して頼んで辛い思いをしたこともあります。ハンガリーだったかブルガリアだったと思うんですけど、あの辺は「フォアグラ」の産地だったんですね。小さい頃に食べて好きじゃなかったんだと思いますけど、レストランに入ったら「フォアグラ炒め」っていうのがあったんですよ。値段も安いし2人でいたんですけど、2皿頼んでしまいまして、お店の人は「こんなにいらない」って言ってたんですけど、安いからいいじゃないか、みたいな。頼んだら下町にある定食屋のレバニラ炒めの倍くらいの量でフォアグラをひたすら炒めたのが出てきて。最初はちょっとびっくりしながらも喜んでたんですけど・・・ 美味い美味いって。フォアグラってこんな味なんだ?みたいな。ところが、食べても食べても山が一向に減らなくてですね。フォアグラってレバーと一緒でねっとりしてるじゃないですか。飲み込めなくなってきまして、白ワインを頼んでそれでガバガバ。さすがにそんなに頼んでしまって半分以上残すのも悪いじゃないですか。まあ食べましたけど。あれ以来、しばらくフォアグラって食べなかったですね、なんかトラウマになってしまいました。
★★★★★★★
貧乏旅行だったので安いものばかり食べていましたけど、美味しいものもそれなりに食べてきました。それは自分のお金ではなくてですね、大体他人の金です。どんな時にもグルメな友達っていうのがありとあらゆる所にいてですね、自分の国に来たなら是非、美味しいものを食べてもらいたい!って張り切るんですね。「こういうもの食べたことあるか?」って。「ない」って言うと必殺技のように自分のとっておきのお店とかに連れてってくれるので、ヨーロッパとかでは特に美味しいものをたくさん食べました。フランスとかイタリアっていうのはやっぱり美味しくて、特に家庭料理のレストランとかっていうのはすごく美味しいんですよね。逆に北はダメですね。芋しか食わないっていうか、味付けも塩胡椒とか。ソーセージとかドイツ行くと、なんでこんなキャベツ食わなきゃいけないの?みたいなご飯しか出てきません。イギリスも最近はすごく美味しいみたいなんですけど、僕がいた頃は全然美味しくなかったですね。ご馳走っていうと「グレイビー・ソース」しかない。アメリカも南に行くと美味しいっていうと全部、「バーベキュー・ソース」で・・・ ルーツを感じてしまいましたけど。美味しいものを色々思い出して喋りたいんですけど、なんでですかね?覚えているのは大体まずいものとか気持ち悪くなったこととか、悲しい思いをしたことしか思い出せません。一番思い出深いのがスペインにいた時によく食べていた「食パン」です。日本でも大手のパンていうのが色々なコンビニとかでも売ってると思うんですけど、スペインにもそういう大手メーカーがありまして、どこに行っても買える安い食パンなんです。それに随分お世話になったんですけど、名前が「ビンボー・ブレッド」って言いまして。スペルも「BIMBO」だったかな。それをテントを張って友達とかとガスコンロで食事を用意して、さあ食べるぞっていう時に、必ずその横にあるのが「ビンボー・ブレッド」の袋でして・・・ 貧乏なのは分かっているからいちいち言わないでくれ、みたいな。バスに乗っている時、目の前のトラックが「ビンボー・ブレッド」だった時もあって、その時は怒りさえ覚えましたけど。だいたいお金が無い時は、3日くらい前にスーパーで買って常温で持ってるその「ビンボー・ブレッド」にですね、ヨーロッパのマヨネーズって真っ白なんですけど、あからさまに黄色になった怪しいマヨネーズだけ塗って食べたりしてましたね。もう二度と食べたくないです。二度と食べたくないといえば「ラビオリ」。ラビオリの缶詰っていうのはどこでも売っていて、すごく安いんですよ。温めてトマトソースでパスタみたいに茹でなくてよくて食べられるので、よく食べてましたけど。まあ一生分食べましたね。イタリアンに行って「ラビオリ」を勧められても頑なに拒否します。ただ食べていたものはひどかったんですけども、そのシチュエーションっていうのは、今思うと一番ごはんが美味しかったシチュエーションかなと思います。山とかビーチで友達がいて、一生懸命火を起こしたり、安いお酒を買って飲みながらお腹いっぱいになるまで食べて、お酒を飲んでその場で気絶して寝る。いつか、こういう食事が続く日々が戻ってこないかと願ってます。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。