「空港」
空港で 友と別れ、旅に出る。
旅立つ人も、見送る人も、
どちらの胸にも 少しの寂しさが残る。
でも、旅人には、未知の世界が待っている。
国境を越える準備はできているか?
見知らぬ国の見知らぬ文化に心をひらく準備はできているか?
旅はここからすでに始まっている。
Theme is... AIRPORT
世界約50ヶ国を旅した野村訓市が語る「空港」。
旅の玄関口であり、経由地でもある空港で体験したエピソード・・・
貧乏旅行だった故のユニークな体験、
一人で過ごした空港での待ち時間に感じたことなどなど。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
現在、「ドライブ」にまつわるエピソードと
その時に聴いていた曲について大募集中!
日本、海外、どちらの体験でもOKです。
今後、リスナーの皆さんの「ドライブ体験」というテーマで
ご紹介する予定!
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Love's Theme / The Love Unlimited Orchestra
超低音ヴォイスが魅力で、コンポーザー、アレンジャーとしても豊かな才能を持ったバリー・ホワイト率いる、ザ・ラヴ・アンリミテッド・オーケストラ。この曲はストリングスのアレンジも秀逸ですが、最大の聴き所は、ギターのカッティング・・・ ワカチコ、ワカチコ?♪
No Expectations / The Rolling Stones
初期リーダーのブライアン・ジョーンズが在籍していた1968年リリースの名盤『Beggards Banquet』に収録。
Paper Aeroplane / KT Tunstall
スコットランド出身の女性シンガー・ソング・ライター、KTタンストール。2007年にリリースされたセカンド・アルバム『Drastic Fantastic』に収録されている曲です。訓市は彼女の「歌声」がお気に入りとか。
Deep Blue Sky / Brian Eno
ドキュメンタリー映画『Apollo』のサウンド・トラックとして1983年にリリースされたアルバムに収録されている曲で、訓市は旅先の空港での待ち時間に、この曲を聴きながら大きな窓越しに見える「青い空」を眺めるのが好き・・・とのことです。
時間旅行 / 松田聖子
1986年にリリースされた通算13枚目のアルバム『Supreme』に収録されている曲で、作詞は松本隆、作曲は松田聖子本人が手掛けています。
Feel Flows / The Beach Boys
オリジナル・メンバーの一人、カール・ウィルソンが実質的リーダーだった1971年のアルバム『Surf’s Up』に収録されている曲です。
I'm Not In Love / Will To Power
1980年代から90年代前半にかけて活躍したWill To Powerが1990年にリリースしたセカンド・アルバム『Journey Home』に収録されている曲で、10 C.C.のカバー・バージョンです。
Black Butterfly / Money Mark
ビースティー・ボーイズ第4のメンバーと言われるキーボード・プレーヤー、マニー・マーク。2007年にリリースされたアルバム『Brand New By Tomorrow』に収録されています。
Take Me Home / Poolside
米ロサンゼルスをベースにしたデュオ、プールサイドが2011年にシングルでリリースした曲です。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
★★★★★★★
最近はね、仕事でしか海外に行くことがないので、一度出かけると短期間で帰ってきます。なので直行便を使うのであまり空港にいないんですけども。昔はとにかく安いオープンのチケットを常に探していて、見つけるとだいたいそれが物凄く色々な空港を経由する安いチケットだったりしたので、空港で過ごす時間がすごく長かったですね。今は成田や羽田に行ってすぐ目的地に着いてしまうんですけど、目的地に行くまでに何回も空港を経由して行く。空港っていうのはこれから旅に行くっていうので高揚感に溢れている場所でもありますし、それと同時にお別れも多いのでどこか悲しいというか、おセンチになる場所でもあると思います。僕も孤独を感じてしまったりするんですけど・・・ おセンチといえば思い出深いのが、昔の「成田空港」。まだ第2ターミナルもなかった頃で、第1ターミナルしかなくてですね、セキュリティを通ってパスポート・コントロールに出るところが広場になっていて、上を見るとガラス張りのテラスになっていて、そこからお別れをする友達が見えたんですね。高校時代、留学する友達を見送りに行くとみんなそのガラスの前に立ってバンバン叩きながらバイバイをして、友達が手を振りながら地下に消えて行くんですけども。自分も留学する時、その立場になりまして。上を見上げると友達がみんなそのガラスの所にいてバンバン叩きながら大騒ぎしてるのが見えるんですけど、何を言ってるのかが全く聞こえなくてですね、それがもうあと1年会えないのかと思うとすごく寂しいんですよね。顔の動作やふざけた動作でおちゃらけてるんですけど、口だけ見てると、「行ってらっしゃい」とか「元気でね」っていうのが見えるわけです。僕は僕で「行ってきます」って。声は出さないですけど、「連絡するよ」とか。当時ですから手紙を書く振りとかして向こうが手を振るのを見ながら名残惜しく歩いてゲートに消えて行くっていうのがありまして。でもすごくあの場所っていうのが、本当に旅に出るっていうかお別れだっていう雰囲気を倍増する装置みたいな役割を果たしていて。今はそういう場所もないですし、自分が空港に行っても一人で行って一人でさっさと入って寝るべって感じなんですけど。ああいうおセンチな気分ていうのが空港で、懐かしく思います。
★★★★★★★
空港っていうのは国の玄関になるわけで、どこの国でもその国家の威信をかけて作るので立派なものが多いですね。有名建築家とか。僕も建築というか内装をやるのですごく好きですし、家具とかもいいのを使っていたり、アメリカとかだとイームズが作った長いベンチとかあって、家に欲しいなぁとか思うんですけど、横一列に家族が座ることはまずないですよね。一番カッコよかったのはフィンランドの空港。やっぱり新しいんですけど、北欧デザインていう感じですごくかっこいいですね。空港の思い出というと、昔ヨーロッパに行くときによくアエロフロートというロシアの飛行機を使っていました。すごく安いんですね。そのかわりどこに行くにもモスクワを経由しなければいけないんですけど、モロッコに行った時かな・・・ 帰りの経由便がモスクワで遅れることになりまして、23時間いないといけない。当時はビザがないと空港から出られないので空港にそのままいなきゃいけない。お金も全部使い果たしてしまって一銭も持ってなくてですね、クレジットカードなんて当然持っていませんから、23時間空港の端っこで横になって、どうしようと。なにが大変だったって食事で、一軒パブがあってドルだけ使えたらしいんですけど、ドルもないし。トランジットの人たちは食事をどうするかというと、空港の人かアエロフロートの人か、全員にプラスチックのチップみたいな食券をくれるんですよ。それでご飯を食べると。もともと滞在が短いはずなのに延びちゃって23時間なんですけど、1枚しかくれないんですよね。それを頼りにしてまだか、まだかと思って、待っていて。配給が始まったと思ったら配ってるのが食パン2切れとバターなんですよ。こんなので腹ペコの育ち盛りの20代でしたからどうしようと思いまして。お金を持ってそうな人たちに「君はあのパブでご飯食べるよね。このパンいらないでしょ?」ってそのチケットをもらって、何人分かのパンをもらって自分が着ていた服のポケットに全部入れてお腹がへるとポケットからパンをむしって食べるっていうことをしてました。皆さん、旅行に行く時は必ず現金を持っているようにしてください。なにがあるかわかりません。
★★★★★★★
とにかく天井も高く開放感のあるいい建物の中にはですね、色々な人が行き交っています。これからの旅に期待で興奮してはしゃぐ人もいれば、別れの後でなんか物悲しい人とか。ヨーロッパなんか行くと家族で移民かな、一切合切持って移動している疲れた家族なんかもいたりします。僕はずっと安いチケットで色々な所を回っていたので、とにかく色々な人たちを空港で見ました。そして、すごく無駄に時間を空港で潰していたんですけど、なにしろ例えばロンドンに行くのに片道30時間かけたこともあります。直行便だったら多分10時間とか11時間だと思うんですけど、羽田から出て台北に行って、台北からバンコクに行って、バンコクからアムスに行って、そこからロンドンみたいな。ヨーロッパっていうのは北回りでシベリアの上っていうか、北極の方を飛べば近いんですけど、南に回ると無駄に遠いんですよね。だけど、それしかチケットが無い訳ですから。昔は「金はないけど時間はある」っていう典型だったので、安ければ30時間だろうが40時間だろうが喜んで行ってました。その間に空港でやることがないのでウォークマンで音楽を聴いたり、本を読んだり。はたまたシートを占領して寝たり、寝過ごして飛行機に乗り遅れたこともありますけども。それも全部尽きるとですね、人を眺めるしかなかったですね。道行く人を眺めながら、結構、自分の人生なんてのを考え込んでしまったりよくしましたね。自分もこんなことしていて、どうなってしまうんだろうっていう途方に暮れた気分になったこともよくありました。去年かな、ヨーロッパに行くときに久しぶりにKLMに乗りまして、アムステルダムのスキポール空港っていうところでトランジットしました。KLMもすごく安くて散々お世話になったんですけども。夕暮れに着きまして、次の経由の飛行機まで長い空港の廊下を歩いていたんですね。ちょうど日が差してきて色々な人たちが歩いているの見ながら。そしたら突然、昔全く同じシチュエーションに自分がいたことをフラッシュ・バックのように思い出したんですよね。全く同じ時間帯で同じ季節で、日差しも同じようで。そうしたら、その時の自分の気持ちっていうのを急に思い出しまして。決してその頃ってハッピーではないというか。まだ旅はしてましたけど、自分がこの先どこに行くんだろうっていうか、何をやりたいんだろうっていうのが全く分かってなくて、時間を潰す空港で孤独を感じた自分を急にその時に思い出しました。十何年前の自分と、今は仕事で人にチケットを出してもらって急ぎ足で歩く自分がすごくなんとも不思議な気分に感じまして。そして、その間の時間のことをすごく一瞬で思い出しましたね。自分が見てきたものや、いつの間にか会わなくなった人とか、亡くなってしまった人とか。すごく自分も遠いところに来たもんだなぁと思いました。空港ってそういうふとしたことを思い出したり、考え込む時間ていうのが何故か多い場所だと思います。僕もだんだん歳をとってきたので、いつまでこうして毎月色々な所に飛行機で行ったりとか旅をしたりできるのが分かりませんけど、できるだけ長く空港にはお世話になりたいなぁと思っています。リスナーの皆さんでいい話を持ってる人がいたら是非、仕事をください。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。