「森」
縄文杉を見るために、山に入った。
歩けども歩けども、道は遠く、険しい。
文句を言う気力もなくなったころ、ようやくその姿が見えた。
人里から離れていたからこそ、縄文杉は残った。
文明から遠くあるものだけが 生き残る。
森の奥で 生き残る。
Theme is... FOREST
リスナーの方からいただいたリクエストをもとに、テーマは「森」
世界約50ヶ国を旅した野村訓市が各地で足を運んだ「森」の魅力や怖さなど、
「森」で体験したエピソードを語ります。
ミュージック・ストリームは「森」の中で聴くとココロに染み入る曲をセレクト!
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「こういった特集をやってほしい」「あの国の話が聞きたい」
というリクエストも随時募集しています。
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
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株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
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身をゆだねてください。
Noweigan Wood / The Beatles
ザ・ビートルズの1965年のアルバム『Rubber Soul』に収録されている曲で、リード・ヴォーカルはジョン・レノン。邦題は「ノルウェーの森」ですが、「ノルウェー製の木製家具」という説も。
Stand My Me / Ben E.King
アメリカのソウル・シンガー、ベン・E・キングは1950年代末、ザ・ドリフターズに加入してキャリアをスタートし、グループ脱退後の1961年にリリースしたこの曲「Stand By Me」が大ヒットを記録。それ以降、コンスタントに活躍しましたが、今年4月30日に惜しくもこの世を去っています。同曲は1986年に映画『Stand By Me』のテーマ曲となりリバイバル・ヒットしました。
Heart Of Gold / Neil Young
訓市のフェイバリッと・アーティストの一人、ニール・ヤングの代表曲。1972年のアルバム『Harvest』に収録されています。
Apple Of My Eye / Ed Harcourt
イギリス人シンガー・ソング・ライター、エド・ハーコートが2001年にリリースしたデビュー・アルバム『Here Be Monsters』に収録されている曲です。
Fake Plastic Trees / Radiohead
ヴォーカルのトム・ヨークを中心としたイギリスのロック・バンド、レディオヘッド。1995年リリースのセカンド・アルバム『The Bends』に収録。
Here It Comes Again / Tracey Thorn
イギリスの男女ユニット、エヴリシィング・バット・ザ・ガールの女性ヴォーカリスト、トレイシー・ソーンのソロ・アルバム、2007年のアルバム『Out Of The Woods』に収録。
A Reasonable Man (I Don't Mind) / The National
ニューヨークのブルックリンをベースに活動するインディー・ロック・バンド、ザ・ナショナル。二組の兄弟プラス一人というユニークな編成の5人組です。
Guaranteed / Eddie Vedder
オルタナティブ・ロック・バンド、パール・ジャムのリード・ヴォーカル、エディ・ヴェダーが手掛けた2007年の映画『Into The Wild』のサウンド・トラック・アルバムから。この映画はノンフィクション小説をベースに製作されたもので、監督と脚本はショーン・ペン。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
★★★★★★★
森は本当に好きですし、雑誌の仕事で森の特集なんていうのも作ったことがあるので、色々な森に行ったんですけど。個人的にやっぱりすごく印象深いのがアメリカの西海岸にある「レッドウッド」という森です。ここは国立公園になっているんですけど、カリフォルニア州とオレゴン州の州境から森になります。カリフォルニアというのは日本の様に南北にすごく長い州なので、北と南では気候が全然違うんですけど・・・ みんなね、カリフォルニアというとすぐ金髪のお姉ちゃんがビキニ着て街を歩いているんじゃないかって思いますが、それはサンディエゴとかロサンゼルスの一部で、サンフランシスコのほうに行くとあまりの寒さに縮み上がります。サンフランシスコを車で出発して、北へ。例えば、オレゴンのポートランドを目指して走ったりするとまず、植栽が随分変わって、自分が知っているカリフォルニアのイメージとだいぶ違うということに気づくと思います。僕が最後にこのドライブをしたのは随分前になりますけど、シスコの街を出てゴールデン・ゲート・ブリッジを渡っていくと、風景がやがて大きくうねる丘陵地帯になります。牧草があってすごくキレイなんですけども、そこからだんだん土地が上がっていってですね、州境のあたりから森になっていくんですけど。もしこのラジオを聞いて自分もやってみようという人がいたら、おススメなのが、その道からすこし海のほうに外れると、映画『Stand By Me』という名作の中で子供の仲間たちが線路を歩くシーンがあるんですけど、あれなんていうのは青春のすべてが凝縮されている胸がキュンキュンするシーンだと思います。そのロケ地の場所があります。ちょっと離れるんですけど価値があるというかですね、僕も友達を連れてそこに降りて、やっぱり歌を歌いましたよね。そこから道に戻って上がって行くとやがて「レッドウッド」の森があります。「レッドウッド」というのはその名の通り赤い木なんですけど、「セコイア」という種類の杉、もしくはヒノキの一種で、この西海岸の海岸線沿いにある木なんですが、屋久島の「屋久杉」が世界で一番古いって言われているって有名ですけど、この「レッドウッド」の森っていうのも同じくらい古い。もしくは一番古いって言う人もいるんですが、素晴らしい森です。この「セコイア」の木っていうのは一直線に80メートルくらい伸びるんですね。世界一高い木なんですけど、それがこう鬱蒼と茂る様っていうのは本当に壮大な景色でして、車から飛び降りて木に抱きついたり、こずえの先に見える遠い空を見て叫んでしまったりしますけど、それくらい価値のある森だと思います。
★★★★★★★
世界の森というのもすごい素敵なんですけど、森っていったら日本が一番いいんじゃないのかなって個人的には思います。なにしろ国土の70パーセントが山と言われている島でして、北から南までいろんな植栽の森があってどこも素晴らしいと思います。東北にある「白神山地」とかブナの原生林とか行きましたけど、本当に綺麗でしたし、神奈川の山っていうのもすごく素敵ですよね。僕はよく葉山とか行くんですけど、目の前に海があって裏に山があるっていうのも素敵だと思いますし。ただ、やっぱり一番印象深いのは「屋久島」の縄文杉の森ですかね。いつか行きたい行きたいと思っていて、初めて行ったのはもう10年位前になりますけど。ただ本当につらいですね。僕はあまり考えなくてですね、休みが取れて行こうと思った時が1月だったんですよね。宿に着いてだいたいは聞いてたんですけども、シリアスに山登りになるということを聞きまして。「やだなぁ、そんなに歩くの」・・・ もう10歩歩くのも嫌な人間なので、どうしようかなと思っているうちに、前日から雪が降っちゃったんですよ。登山靴とかを借りなきゃいけないということで道具屋さんに行ったら、「お客さん、アイゼンも持って行きなさい」と。アイゼンて登山家の人がつけるスパイクじゃないですか。たかだかトレッキングだと思っていたので必要なのかと思ったら、まあ必要でしたね。朝の4時にはみなさん出るんですよね、縄文杉を見に行く人っていうのは。だいたい昼まで歩いてお昼ご飯もそこでお弁当を30分で食べて、すぐ下山しないと日没までに間に合わないって言われて、僕らは寝坊して4時半くらいに出たんですけどもう誰もいなくてですね。歩き出してトロッコ道っていうのを歩いて、そこから本格的な山道になるんですけど、僕はトロッコ道の入り口時点でもう体力なくて、そこからはもう、「自分のお金でなんでこんなに苦労しなきゃいけないんだ!」という自問自答の旅になりました。そんなに木好きだったっけ?とか、古いだけじゃないか!とか。山道に入ると結構シリアスで、前に歩いた人の足跡がないとよくわからないんですよ、雪で。必死に登って這いつくばって。やっぱり4時半に出て12時近くに着きましたかね。ただ縄文杉っていうのは麓まで行けないので見晴台みたいな所から見るんですが、確かに神々しい姿でして。実際のところ樹齢がいくつかっていうのはいろんな説があって分からないんですけども、確かに言えるのは2,000年以上生きていて、イエス・キリストが生まれる前から生きていて。下手すればブッダが生まれる前からずっといて、今、このデジタル時代まで一人山の中で生きているっていうのは、雪の中の姿を見て本当にすごいことだと感じて、午前の疲れが吹き飛ぶというか、自分の1月に来るという決断の素晴らしさに酔いしれたんですけども・・・ 帰りの道であっという間にそんな気持ちも吹き飛びまして、なんで来ちゃったんだ!っていうか、誰かもういくらでも払うから連れて帰ってくれっていう位大変でした。ただ、本当にこういう古い森、しかも人里離れたところで残っている森っていうのは本当に素晴らしくてですね、ぜひ、行ったことのない人は「屋久島」に行ってみてください。
★★★★★★★
とにかく森、すごく素敵な場所だと思います。夏になるとどうしても海とかを考えてしまいがちですが、同じ分量で森と海両方行けたらいいんじゃないかなと思います。特に森に行くと「森林浴」という言葉がありますが、すごく人の心を落ち着かせる作用があるんじゃないかと思います。知り合いのもうどうしようもなく落ち着かない男も森に連れてって放り出すとやっぱり一点を見て落ち着いてますね。なんなんでしょうかね、あの木々のせせらぎというかですね、光とか匂いとか本当に素晴らしいと思います。ただ、夜は別ですけどね。怖がりの子を夜の森に連れてったりするともう大変ですね。自分もキャンプで森の中で過ごしたことありますが、昼間のあの明るい森と違って夜、無音でいると凄いなにか生物の活動する気配というか、なんか凄くそういうものを感じますし、漆黒の闇というのは本当に森の中にしか無いのかなというくらい暗いんですけど、あれが人の恐怖心とか想像力をすごく刺激するんでしょうね。ただ、僕がずっと興味があってまだやったことのないことがあるんですけど、それはアメリカというかカナダのほうが多いのかな。国境のあたりに住んでいるネイティブ・アメリカンの人たちの間で、「ヴィジョン・クエスト」という儀式があります。これは未成年の男子が大人になるための儀式として必ずやるものらしいです。要は森のなかに身ひとつで食料も何も持たずに三日三晩篭って、そこで天からヴィジョンを授かるっていう儀式なんですね。以前、白人ですけどそれに参加した人に会ったことがありまして、やっぱりものすごく最初は怖いらしいんですよ。生命の気配とか、それこそクマがいるかもしれないし、身の危険も感じるって。それを心を鎮めて自然と一体となると、三日間自然が自分を生かしてくれるって言うんですよね。それで自分を見つめ直すことにもなるし、自然に感謝することにもなるし、それができて初めて、その勇気があって初めて大人になるっていう儀式らしいんですど。なぜかそれにすごく惹かれまして・・・ いつか行ってみたいなと思ってるんですけどね。もしかしたら一晩目で逃げて帰るかもしれませんが、それくらい森っていうのは懐が深い場所でもあるし、すごく恐ろしい場所だとも思っています。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。