ON AIR DATE
2015.08.16
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

「ポートランド」



「カッコーの巣の上で」の原作者、ケン・キージーの取材でオレゴンに行った。

彼が旅に使ったスクールバス。

行き先は、こう表示してある。


further


振り返らず、好奇心をもって、ただただ遠くへ。

ここではない、どこかへ。



TUDOR logo

Theme is... PORTLAND

ここ数年、大人気の街=アメリカ・オレゴン州の「ポートランド」!
自身の体験に基づいた訓市ならではの目線による「ポートランド」の魅力とは?!
ポートランド旅で実践していただきたい過ごし方の提案もお届けします。


★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

この夏の「旅体験エピソード」、そこで聴いた曲、
そして、「こういった特集をやってほしい」「あの国の話が聴きたい」
というリクエストも随時募集しています。

番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2015.08.16

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Midnight At The Oasis / Maria Muldaur

アメリカの女性シンガーソングライター、マリア・マルダーが1973年にリリースしたファースト・ソロ・アルバム『Maria Muldaur』に収録されている曲で、彼女の代表作。邦題は「真夜中のオアシス」。

2

If You Were There / The Isley Brothers

黒人ヴォーカリスト、ロナルド・アイズレーを中心としたR&B、ファンク系バンド、アイズレー・ブラザーズ。絶頂期にあたる1973年にリリースされたアルバム『3 + 3』は歴史的名盤です。

3

Dream A Little Dream Of Me / The Mamas & The Papas

1960年代後半に活躍した女性2人プラス男性2人からなるフォーク・バンド、ママス&パパスが1930年代に生まれたジャズ・スタンダードを取り上げた作品です。

4

A Man's Wisdom Gives Him Patience / Ray Barbee

レイ・バービーはカリフォルニア出身のスケートボーダーで、ギタリスト。訓市の友人でもあります。

5

You're So Cool / Hans Zimmer

ドイツ人作曲家のハンス・ジマーが手掛けた1993年のアメリカ映画『True Romance』のサントラに収録されている曲。

6

Many Rivers To Cross / Jimmy Cliff

ジャマイカ人レゲエ・シンガー、ジミー・クリフが1969年にリリースしたアルバム『Jimmy Cliff』に収録されている代表曲。名作です!

7

Better Days / Graham Nash

ホリーズ、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングなどの活動で有名なシンガーソングライター、グラハム・ナッシュが1971年にリリースしたファースト・ソロ・アルバム『Song For Beginners』に収録されている曲で歌詞が秀逸!

8

Summer Madness / Kool & The Gang

1960年代半ばに結成され、70年代から80年代に一世を風靡したR&B、ファンク系バンドのクール・アンド・ザ・ギャング。1974年にリリースされたアルバム『Light Of Worlds』に収録されているサマー・アンセムの名曲。

2015.08.16

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking...


★★★★★★★
10年前にポートランドの話をしたら、「え、ポーランド?」ぐらい、誰も気にも留めなかったと思うんですけど。最近は、この何年かくらいですかね、ポートランド流行りというか、どこに行ってもポートランド、ポートランドっていう話になります。きっかけっていうのは多分、サードウェーブと言われるコーヒーの流行りがポートランドから始まったとか、それからライフスタイル雑誌のKINFOLKみたいなごはんの雑誌ですけども、オーガニックだったり、すごく素敵な内装のお家が出てきたり。あとAce Hotelっていう流行っている、アメリカ、それからパナマとロンドンにもあるホテルがポートランドに大きいのができて、そういうところからおしゃれなイメージになったと思うんですけど。どうもそういう流行りとかおしゃれだっていうと、反対のことを言いたくなってしまうんですが。確かにポートランドっていうのはすごくいいところですけども、そのおしゃれだなんだっていうよりは、とてもリベラルで変わったところに寛容な街っていうのが一番素晴らしいところなのかなと思います。もともと船乗りとかが多かったみたいで、川から上がってくるのかな。船乗りが溜まる街っていうのはどこもアウトサイダーというか、大多数の人じゃない人が集まってきても寛容なところがあると思います。サンフランシスコとかもそうですし、ニューヨークもそうですし。ポートランドというのはオレゴン全体に言えるんですけど、60年代にカルフォルニアのヒッピーたちがヒッピーカルチャーを起こしてそのあとカルフォルニアが住みづらくなった時に、ずいぶんオレゴンの方に引っ越してきて、森の中にコミューンを作って住んだりとか。それからゲイカルチャーもすごく強いですね。まだまだ理解がなくって住みづらかった時に、いろんな人たちがポートランドに流れてきて、街がそれを受け入れるっていう寛容なところがあると思います。
僕が一番最初にポートランドに行って思い出深いのが、ケン・キージーという作家の人がいて、彼を取材に行ったのがオレゴンでした。ケン・キージーというのはヒッピーカルチャーの前、そしてビートニクという文学運動があったんですけど、それをつなぐ間のような人で。代表作というと「カッコーの巣の上で」ってみなさん観たことありますかね。ジャック・ニコルソンが出てくる素晴らしい映画です。彼が実際にそれを書いていて、ヒッピーみたいなコミューンに住んでいたんですけど、60年代の終わりかな。仲間や家族を連れてやっぱりオレゴンのユージーンという学生の街があるんですけど、第2の街。ポートランドから1時間2時間南にあるんですけど。その郊外に牧場を買って住んでました。そこに行ってインタビューをさせていただいたんですけど。僕も雑誌の仕事をしていろんな人を取材するっていうのが一番多い仕事なんですけど、それのきっかけになった人ですね。僕が会った時はカウボーイハットを被って、ヒッピーみたいな格好でもなくて、普通のアメリカのお父さんみたいな感じでしたけど。「見てくれはどうでもいいんだよ。」っていう話をしてくれまして。「心が変わらず自由であれば、人間は何をしてもいいんだ。」っていう話がすごく印象的で。自分をどういう風に見せようかっていうのに少し囚われていた自分は目からウロコというか。一生忘れない出会いになったんですけども。そしてグレイトフル・デッドとか昔の彼の旅の仲間たちにも会わせてもらって。リベラルというかいろんなことをオープンに考えるというのはこういうことなのかなっていう風に自分が思うきっかけになったところで。以来、オレゴンというのは僕にとってはすごくリベラルでおっきい視点を持つ州というんですかね。なにかカルフォルニアとかニューヨークとは違うイメージを持っています。そしてケン・キージーというのは昔のスクールバスを買ってアメリカを旅した人なんですけども。そのインタビューで彼の牧場に行った時にそのバスがまだ置いてあって、バスの行き先の地名が入れられる小さいスクリーンがありますよね。例えば、「となりのトトロ」でしたら“七国山病院”とか出るところですけど。あそこに一言”ファーザー”と書いてあるんですよ。“ファーザー”というのは父親という意味ではなくて、“Far”、「遠くへ」の最上級で、それが彼のモットーだったんですけども。それを見て、やがてそれが自分のモットーになりました。とにかく遠くに行きたい。それはすごく深い意味があって、好奇心をずっと持って、行ったところのないところ、見たことのないものを見ようっていうのに繋がるんじゃないのかなと思っています。なので、皆さんも次にどこ行きたいとか、旅の目的地はなんだ、と思ったら“Further”、もっと遠くへっていうのを常に頭に入れてみるのもいいんじゃないかなと思います。


★★★★★★★
ポートランドというのは実際すごく小さい街です。そのうち観光客に人気があるのはオールドタウンというか、ダウンタウンの部分ですね。昔の工業地帯だったりした古い建物とか、工場の跡っていうのがそのまま残っていて。どこかニューヨークのダウンタウンとかブルックリンに近い雰囲気を残しています。そういう建物とかが若いアーティストとか、自分で何かを作ろうという若もの達の手で改造されてどこかおしゃれな雰囲気を生み出してるんだと思います。内装でいってもインダストリアルっていうのはここ何年も人気があって、僕も内装やるんでずいぶんやりましたけども。それにちょっと古いアンティークの家具を並べて、ちょっとオーガニックな感じのパブリックのものとか絵を飾ったりするとあっという間におしゃれな雰囲気に、今の時代感にあったものになるんですけど。そんなおしゃれなお店よりかはやっぱり昔からあって、年配の人が紅茶を飲みに行くような喫茶店のような店とか。雨が多い街なんですけども、本当に人がいない工場の前で路面が雨に濡れると夜、街頭が光って本当にポートランドって綺麗なんですよ。僕はそういう何気ない景色の方にすごくひかれます。ポートランドというのは例えば、ナイキの本社があったり、ライバルのアディダスのアメリカ支店の本社っていうのもポートランドにあったり。それからすごく有名な広告代理店の本社があったり。確かに食もたくさんあってお金が回ってるんですけども。そんな華やかなところより、昔ながらの街の顔が残っているところの方が好きです。ポートランドっていうとあんまりみなさん知らないですけど、人口あたりかもしれませんけど、全米一ストリップバーが多いですね。それがなんでかはわからないんですけども、州によってはそういうところだと喧嘩が起きたりするのでお酒がのめないんですけども、ポートランドは飲めます。そしてそういうバーをですね、普通のバー代わりにみんな使うんですね。普通に女の子同士がそういうところで飲んでてショーを見たりして、DJの音楽のように普通に飲んで喋ってるんですよ。それがすごく面白くって、いろんなところに連れてってもらったんですけども。もちろん観光客が来るような豪華な、高そうなお店もあるんですけども、そうじゃなくものすごく古くて鄙びてて、場末な感じのおじさんが一人で行って何を見るでもなく、一人ウィスキーを飲みながらぼーっと前を眺めるっていうのがすごく似合うお店なんかもたくさんありまして。こういうお店に行くと自分が観光客じゃなくて、その街の一部になったっていうか、ぼーっとしていると誰にも声をかけられないというか。特別な存在でもなんでもなくってその夜の一部になるっていうような感覚がありまして。そういう雰囲気を味あわせてくれるっていうところは例えば、ニューヨークとかではもうほとんどなくなってしまいました。この街ならではの住人が何気なくお酒を飲んでいたりとかっていうような場面に出くわすことがなくなってきたので、そういう意味でもポートランドっていうのは素敵な街だなと僕は思います。なので、雑誌やなにかで見て、ひたすらおしゃれだ!とか素敵な街なんじゃないかっていうのでそういうところばかり見ないでですね、ぜひ、自分で夜歩いてみて飛び入りでお店に入ってみたりしてみてください。


★★★★★★★
ポートランドが注目される一番大きなきっかけだったのがAce Hotelというホテルにあると思います。ダウンタウンにある古いホテルを改築してできたこのホテルは、お金をそんなにかけないであるものを上手に使って古い家具を持ち込んだり。あとはグラフィックの腕がすごくよくて、それでブラッシュアップしたっていうんですかね。すごくクールなイメージにしまして、そこにサードウェーブで一番人気のあったストンプタウンコーヒーを入れたりとか、ロビーもちょっとしたサロンみたいにしていろんな人たちが集まる仕掛けを作ったのが人気を得まして。どこかホテル業界だけじゃなくてご飯屋さんとか洋服屋さんの内装とかにもものすごく影響を与えたと思います。最初のAce Hotelというのはシアトルにあったんですけど、このポートランドが2店目で。そのあとパームスプリングスやニューヨーク、L.A.、ロンドン、それからパナマにもあります。世界中に広まってきてるほど人気のあるチェーンになったんですけど、僕はこの2号店目のポートランドが一番最初見たとき衝撃というか、気に入りましたね。ロビーにわざとポラロイドでできた証明写真用のマシンが置いてあって、宿泊客がみんなそこでプリクラのように写真を撮ったりですね。ただそれがプリクラじゃなくてポラロイドというところがすごく渋かったり、ロビーのソファーっていうのもNATO軍のパラシュートとテントの生地をそのまま貼ってアーミーみたいにしてあったり、ホテルではなかなか考えられないような仕掛けがいろいろありました。部屋に置いてある毛布っていうのもアメカジが好きだった人なら一度は買ったことがあると思うんですけど、ペンドルトン社っていうオレゴンに本社がある昔ながらのウールを織る、カスタムで毛布を作っていたり、いちいちこれ買ってとか持って帰りたいと思うものがたくさんありました。僕はそのホテルの創業者のアレックスっていう、彼は一昨年亡くなってしまったんですけど、知り合う機会があって。そのあと日本の雑誌でどうやって紹介するかとか、ずいぶん手伝って仲良くなったんですけど。僕の中では豪華でもないし、大してサービスがあるわけでもないんですけど。街のサイズにあったそのポートランドのAce Hotelが一番好きです。何よりの理由っていうのが場所がとにかく良くてですね、ちょっと裏に行くとアメリカで一番大きい個人書店と言われているPowell’s Book’sっていう本屋さんがありまして、どんな本でも売っているので本が好きな人にとってもたまらないロケーションなんですけど。もう一つはですね、昔、ガス・ヴァン・サントという監督が「ドラッグストア・カウボーイ」という映画を撮ったんですけども、マット・ディロンが出ている映画です。彼が泊まっているうらびれたホテルっていうのが実はこのAce Hotelで、名前がAce Hotelになるまえはコモンウェルスっていうホテルだったのかな。なので、僕は最初それ知らないで行って、泊まっている時にここは「ドラッグストア・カウボーイ」のロケ場所だよって言われた時はなんとも言えない感動をしまして。あの廊下だ!みたいな。マッド・デュロンが歩いていた廊下がこの廊下みたいな。「木とか張り替えたの?」ってきいたら「いや、表面を削って綺麗にしただけだ。」とか。映画のあの場所にそのまま泊まれるっていうのがすごく嬉しくって。で、僕はガス・ヴァン・サントともちょっと仕事をしていたのでAce Hotelでお茶を一緒にしたんですけども、ガス本人もあの映画の撮影の時から考えると、昔はすごく危なかった地区らしくて「あの場所の、あのホテルが、今こんなにおしゃれになって、世界中から人が来るようになるなんて信じられん。」と言っていました。ガスはすごくリベラルなこの街の雰囲気が好きで、70年代かな。ずっとポートランドに住み続けています。ハリウッドに引っ越さないの?って聞いたら「引っ越す意味があるのかい?」って聞かれましたけど、その引っ越す理由があるのかい?って言われたのも、行ってみればなんとなく肌で感じることができるのではないでしょうか?オレゴンといいますとカリフォルニアの上ですけども、9月が一番すごしやすい時期で暖かい日が続きます。このあと休みを取ろうという方はポートランドっていうのを候補地の一つに入れてみてはいかがでしょうか?