「夏の終わり」
始まりがあれば 終わりがあるとは言うけれど、
夏の終わりを受け入れるのは 難しい。
夏の終わりから逃げるように、南へと向かった。
勝ち目は ない。
でも、南へと向かった。
夏の記憶をポケットに詰め込んで。
Theme is ... END OF SUMMER
何とも物悲しい空気が漂う9月、秋。
一年のうちでもこの時期が「嫌い!」という訓市が体験した切ない思い出・・・
かつて、湘南の海岸で運営していた「海の家」にまつわる
夏の終わりのエピソードなどを語る。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「こういった特集をやってほしい」「あの国の話が聴きたい」
というリクエストも随時募集しています。
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
Antenna TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Please Don't Leave Me / Pretty Maids
デンマーク出身のヘヴィメタル・バンド、プリティ・メイズが1991年にリリースしたアルバム『SIN-DECADE』に収録されている曲で、タイガース・オブ・パンタン、シン・リジー、ホワイトスネイクなどのバンドを渡り歩いたギタリスト、ジョン・サイクスのカバー・ヴァージョンです。
Summer Daze / Nick Holder
カナダのハウス・ミュージック・シーンを代表するプロデューサー、ニック・ホルダーによる名曲!
Set Adrift On Memory Bliss / P.M.Dawn
アトレルとジャレットのコーズ兄弟からなるラップ・デュオ、P.M.ドーン。スパンダー・バレーの代表曲「True」をサンプリングしたこの曲は日本でも大ヒットを記録しました。
Don't You Know / Jan Hammer Group
ジャズ畑出身でロック・ミュージシャンとも数多くの共演を果たしているキーボード・プレーヤー、ヤン・ハマーのソロ・アルバム『Melodies』に収録されているメロー・トラックです。
忘れられたBIG WAVE / Southern All Stars
長期にわたる活動休止を経て1990年にリリースされたセルフ・タイトル・アルバム、そして、映画『稲村ジェーン』のサントラにも収録されているアカペラ曲。
Cayman Islands / Kings Of Convinience
訓市のお気に入りバンド、キングス・オブ・コンビニエンスのアルバム『Riot On An Empty Street』から。
One Of Those Summer Days / Rhye
デンマーク出身のロビンとカナダ人のミロシュからなるデュオ、ライ。シャーデーに似た歌声ですが・・・男性です!
Baby Can I Hold You / Tracy Chapman
1988年リリースでグラミー賞も受賞したデビュー・アルバム『Tracy Chapman』に収録されている曲。
スカンピン / 鈴木慶一とムーンライダース
1976年にリリースされた鈴木慶一とムーンライダース名義でリリースされたデビュー・アルバム『火の玉ボーイ』から。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
★★★★★★★
僕が一番好きな季節は日本だと桜の咲く季節なんですけども、一番嫌いなのは今です。夏の終わりっていうのはなんでこう寂しいんでしょうかね。楽しい時が終わって家に帰んなきゃいけないっていうのに、ものすごく近いというかですね。あと、どんな気分に近いかっていうと、朝まで遊んでみんなといて結局始発みたいな電車に乗って家に帰る気分にも近いですね。毎年夏のために生きているような僕にとって、この8月の終わりや9月の頭っていうのは本当に寂しくなってしまうんですね。青空を見るとなんかこう7月8月の青空の青とは違いますし、雲もだんだんこの季節から薄く横に伸びていくじゃないですか。あれを見ても寂しくなりますし。特に今の時期に避暑地とかに行ってしまうと寂しさが3割増しというかですね、本当に寂しいですよね。だいたい蝉の声がツクツクボウシになると「あぁ!もう終わってしまう!」っていう焦りにも似た焦燥感を覚えてしまいます。旅ばかりをしていた頃っていうのはとにかく夏が終わってしまうのが嫌で、だいたい北のほうから遊び始めてだんだん南下していくんですよ。気温がちょっと下がったりすると「もうやだやだやだ。」みたいな。どんどん地中海のほうに行って海に出てしまって、もうこれ以上ダメだっていう時はアジアに逃げたものでした。タイとかに行くとリセットするというかですね、「全然ここ夏じゃん。」みたいな。でも夏の終わりにイビザに行った時とかも寂しかったですね。特に夏の初めにもイビザに行ったことがありまして、その時はもう船が港に着く時から高揚感がすごいんですよ。船の中も、着いた港も。カフェも人がいっぱいで。9月の終わりとかに行ってしまうと、カフェなんか誰もいなくて働いてる子達がやる気がゼロなんですよ。もう終わったから来ないでくれ、みたいな雰囲気が。あっちのほうをぼーっと眺めちゃってですね。あの時は落ちましたね。この夏全体が幻だったんじゃないかってそんな気分になりました。
★★★★★★★
毎年悲しいんですけれども、特に悲しかったのは僕が夏の間海の家をやってた時。その夏の終わりっていうのは本当に悲しかったですね。辻堂でスプートニクという海の家を7年もやっていたんですけども、それは7月に入ると仲間がみんな集まって、まず設営を始めるわけですよ。「今年の夏も楽しいかなぁ?」なんて言いながら。最初のほうっていうのは本当にお金がなくて、設営をする前にちゃんと土台を作らないといけないんですけども、その砂をショベルで掘ってたんですよ。これがもう本当に辛くてですね、砂浜なんで40度くらいあると思うんですけど。炎天下の中ショベルで砂を掻いちゃそれを放り投げるんですよ。やってもやっても崩れてくるんで、砂を積まなきゃっていう考えだけが頭のどこかに残ってですね、ひたすらみんな汗をかきながら砂を掘りあげてました。そこからバーを作り、ドームを作ってハンモックを吊るし、それから囲炉裏を作ったりして。いろんな自分たちの知り合いのミュージシャンやDJ、パフォーマーたちに声をかけてブッキングしてですね、フリーパーティ。全部用意すると、そこから怒涛の毎日でしたね。夢の中でもっていうか魘されながら手がくるくる回るくらい何百杯ものお酒を作ってですね、夜明けとともにもう寝たいんですけど、ビーチクリーンだと言ってゴミ拾いです。夜の間にやっぱりものすごい量のゴミが波で流れてくるんですよ、いろんな国のとか。それを全部拾って、それからバーを片付けてターンテーブルとかも塩でやられちゃうのでしまったりですね。それが終わると砂浜にブランケットとか布切れを敷いてそのままその場に倒れて寝るんですよ。それで昼過ぎまで寝れればいいんですけど影が動くのでだいたい2時間後には直射日光の中で寝てるんですよ。よく犬の散歩のおばさんなんかに「あなたこんなところで寝てると死ぬわよ!なにやってるの!」みたいな。「起こしてくれてありがとうございます。」みたいな、そんな毎日でした。鳴き続ける蝉と照りつける太陽の中でこれぞ夏!っていう日々を過ごすわけですよ。苦労があればあるほど楽しいじゃないですか。好きだったのは朝、目覚めの1杯というやつで、僕らは夜のうちから冷やしてたビールジョッキにカシスと牛乳を半々で入れて、それを飲むヨーグルト代わりに一気してましたね。もうちょっとツワモノはジャックダニエル半分とコカコーラ。ペットボトルの1/3くらい入れたり。それに半個分のレモンを絞ってやっぱり腰に手を当てて一気でしたね。とにかく酒浸りなのかと思われちゃうかもしれませんけど、大量に汗をかいているので全く酔わないんですよね。これほどお金の無駄なことはないと思っていましたけど。そんな毎日。知らない人とお酒を飲んだり、知らない曲を聴いて「こんな曲があるのか」って驚いたり濃い夏を過ごすんですけど、お盆が終わるとやっぱりそれを全部片付けて平日の昼間には誰も来なくなって、夜明けの雲の形もやっぱり変わってくるんですよ。夏の終わりで9月に片付けなきゃいけないっていう時の悲しさといったらですね、僕の人生であの悲しさに近いのは飼ってた犬が死んだ時くらいです。
★★★★★★★
夏の終わり、夏の終わりと言ってますけど、悪い事ばかりじゃないので。けして僕は高い青空が汚いとか嫌だと思っているわけではなくて、とてもきれいだと思っていますし、7月や8月に比べて湿度の落ちてくる乾いた風っていうのもすごく気持ちいいですし、好きって言いたいんですけどね。でも嫌いです。受け入れるしかないんですけども、これから来年の夏はどうしようかなとか、これまた全部捨ててどっか一人でぶらぶら終わらない夏を夢見ちゃおうかなとかいろいろ考えるんですけども、どうやってこの月を乗り切りましょうかね。みなさんどんな9月をお過ごしでしようか?僕が考えられることといったら公園にでも行ってベンチに座って遊ぶ子供たちの声なんかを聞きながら渋々ビールなんかを飲むっていうのもすごくいいかもしれないですね。それからまだまだ夜は長いというか日がまだ残っているのでそういう時にゆっくりレコードなんかをかけて夏の思い出にひたりながらお酒を飲むなんていうのもいいんじゃないでしょうか?今、もしかしてこの時間このラジオを聞きながらお酒を飲んでしみじみしている方もいるんじゃないかと思うんですけども。ねぇ、一緒に飲みたいですよね、そんなんだったらね。それならビールなんか飲んでてもつまんないんでウォッカとかライムを絞ってしょっぱいナッツなんかを、ジャイアントコーンは僕が全部もらうのでみなさんは残りのピーナツを食べてください。8月で夏は終わりと僕は決めているので、9月というのは夏のお別れ会の月ですよね。特に今週はそうです。みなさんも一人で晩酌の方、明日の用意をしながら聞いている方いろいろいると思うんですけども。今日の夜はしみじみと夏のお別れ会を開いてみてください。僕はこれから車で山手通りから駒沢通りを流したいなぁと思っています。公園沿いの道なんていうのは人がいないので停めてタバコをぼーっと吸うだけでもすごく気持ちがいいものです。そんな話をしていると皆さんと走りに行った方がいいんじゃないかと思いますけども、それも問題になってしまうので、個別に走りましょう。そんな時の印象や思い出がありましたら是非、手紙かハガキでお送りください。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。