「ロンドン」
変わりゆくロンドン。
地下鉄の初乗りも、家賃も高すぎる。
もう中心部に暮らすのは、無理かもしれない。
でも、変わらないものもある。
昼間っからビールを飲む男たち。
雨と 突然の青空。
ノッティングヒルのカーニバルには、音楽があふれていた。
Theme is... LONDON Vol.2
先日、久しぶりに「ロンドン」を訪れた訓市。
かつて、生活の場所だった地は変わっていたのか...
あるいは、変わっていなかったのか...
今の「ロンドン」について語ります。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「こういった特集をやってほしい」「あの国の話が聴きたい」
というリクエストも随時募集しています。
番組サイトの「Message」から送信してください。
ハガキ、手紙も大歓迎!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
All That You Give / The Cinematic Orchestra
UKロンドンをベースに活動しているザ・シネマティック・オーケストラ。ピアノ、ギター、ドラムス、ベースのリズム・セクションに加え、サックスとターンテーブリストが加わった6人組で、生楽器とサンプリングをミックスしたジャズ・テイストのサウンドが特徴です。
The Living Years / Mike And The Mechanics
イギリス出身のギタリストで、元ジェネシスのメンバーだったマイク・ラザフォードを中心としたグループ、マイク・アンド・ザ・メカニックス。1989年にリリースされたこの曲は全米チャートでもNO.1を記録し、最大のヒット曲となっています。
Rough Rider (Future Pilot AKA) / The Pastels
スコットランドのグラスゴー出身のオルタナティヴ・ロック系バンド、ザ・パステルズ。このヴァージョンは1998年にリリースされたリミックス・アルバム『Illuminati』に収録されています。
Love Is A Losing Game / Amy Winehouse
ロンドン出身の女性ヴォーカリスト、エイミー・ワインハウスが2006年にリリースしたセカンド・アルバム『Back To Black』に収録されている曲です。なお、将来が嘱望されていたエイミーでしたが、2011年に27歳の若さで逝去。
Seasons / Terence Trent D'Arby
米マンハッタン出身で、元ボクサーというキャリアをもつ黒人男性シンガー、テレンス・トレント・ダービー。1987年にリリースされたデビュー・アルバム『Introducing The Hardline According To Terence Trent D’Arby』は全世界で1,000万枚を超えるビッグ・セールスを記録しました。なお、現在は「サナンダ・マイトレイヤ」という名前で音楽活動しています。
SRXT / Bloc Party
ロンドン出身のギター・ロック・バンド、ブロック・パーティー。この曲は2007年にリリースされたセカンド・アルバム『A Weekend In The City』に収録されています。
Tracy (Kid Loco's Playing With The Young Team) / Mogwai
スコットランドのグラスゴー出身、ギター・サウンドをメインにしたインストゥルメンタル系ロック・バンド、モグワイ。オリジナル・ヴァージョンは何故か「富士銀行」の写真が使われたデビュー・アルバム『Young Team』に収録されていますが、番組ではフランス人アーティストのキッド・ロコが手掛けたリミックス・ヴァージョンをセレクトしました。
Take Five / The Dave Brubeck Quartet
米ウェスト・コースト・ジャズを代表するジャズ・ピアニストの一人、デイヴ・ブルーベックと、名パートナーのアルト・サックス・プレーヤー、ポール・デスモンドを中心とした4人組。デスモンド作曲による「Take Five」はジャズ史に燦然と輝く超有名曲です!
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking...
★★★★★★★
夏の終わりに久しぶりにロンドンの街に出かけました。何年ぶりだったかもう覚えてないんですけど、昔は自分にとってニューヨークよりはロンドンの方が第二の故郷というかですね、住んだコトもありますし、しょっちゅう行ってたんですけど。なにしろポンドが高くて今、1ポンド200円くらいですかね。ちょっと切るくらいなんですけど向こうに行くと1ポンド100円感覚で使うので単純に2倍。さらにロンドン価格というプレミアが乗せられるのでさらに高いので、僕らのような編集とかわざわざロンドンまで行ってなにかする仕事っていうのがなくなってきまして。だいたい現地のコーディネーターの人とか、旦那さんがイギリスで働いてて、ありあまった時間とパワーをどうしてくれようっていう奥さんたちがですね、バリバリ仕事をしてしまいます。まあ本当に高くて地下鉄の初乗りでだいたい900円とかしてしまうので。例えば渋谷から原宿に行くのに電車に乗ったら900円というのはちょっとありえないですよね。僕が20年前に住んでた時は1ポンドが250円だったんですけども値段自体がそこまで高くなってなかったので。それでも500円くらいしたのかな。だから1年住んで電車に乗ったのはたぶん数えるくらいしかありません。ロンドンというのはゾーン1というのが一番の中心地区で、そこから同心円状にゾーン2・ゾーン3って広がっていくんですけども。ゾーン1がだいたい東京23区というか、山手線の内側よりも小さいので僕は全部歩いてました。昔もそんなにゾーン1の中心に住めるっていうことはなかったんですけども、それでもみんなその周辺に住んで、ゾーン2の始まりくらいに留学生が住むっていう感じだったんですけども、今は僕のイギリス人の友だちももう誰もロンドンに住めなくなってきていて、ほどんどが田舎暮らしというか。というのも、家賃が高すぎてですね、1ルームでだいたい30万スタートだと。もともと古い建物が多くて物件自体もないので、中東のお金持ちとかロシア人とかが全部買ってしまってるみたいですね。今回はイーストサイド、リバプールストリートからもっと東のショーディッジというところに泊まってたんですけども。昔はですね移民の人しかいないラフな場所だったんですけども、ニューヨークでいうブルックリンみたいになってしまって。お洒落なお店がたくさんあってもう浦島太郎状態でしたね。昔は僕のバックパッカーの友だちがショーディッジに住んでましてそこに転がり込んだことがあったんですけども、パキスタンから来たルームメイトにオッケーを出したら、一週間で8人くらい親族を呼んでしまってすごい混んでまして。役割分担の掃除を一切しないんですよね。特に皿洗いを。いつも8人分食べてキッチンが汚れた皿だらけで怒ったことがあったんですけど。「皿洗え!」って。そしたらその8人が「他はなんでもやるから、皿洗いは勘弁してくれ。」と。1日18時間とかレストランで皿洗いの仕事をしてたんですね。悪かったって謝りました。
★★★★★★★
とにかくロンドンというのは景気がいいというか、シティという金融街だけがいいのかもしれませんけど、そのゾーン1にはものすごいお金が流れ込んでまして、おかげで開発する場所が足りなくなったんでしょうね。イーストロンドンのあたりなんていうのは新しいレストランやらバーやらクラブもあって、ブティックというか洋服を買うところまである。街は生き物と言いますけども本当にその通りで、人と同じように随分と変わっていくんだなと思いました。僕が知ってるイーストロンドンというのはもう記憶の中にしか存在しないんだなぁってすごく実感したんですけども。寂しいっちゃあ寂しいですけど、だんだん地元の人の生活の匂いっていうのがそこからなくなっていくのかなと思ってしまうんですけども。だから1回行ったことがあるからもう2度と行かなくていいとかは思わずにですね、定期的に行ってその移り変わりを見るのも面白いのかなとは思いますけど。ただそのイーストロンドンの道を歩いてて唯一変わらないなあと思ったのは臭い!っていうことですね。イーストロンドンというのはとにかく道が臭いんですよ、昔から。これには深い理由がありまして、いろんなところにパブがあって土日昼間からいい服を着た男たちが肩を並べあってベンチで飲んでるんですよ。で、夜通りかかったら同じ人間が立って飲んでるんですね。考えてみると10時間とかそのくらい余裕でひたすらビールを飲むんですよ。パブの建物のトイレは小さいですよね。そうするとネイチャーコーリングというやつですよね。みなさん壁のほうに行ってキョロキョロ周りにお巡りがいないか見て用を足してしまうんですよね。本人はしっかり左右を見ているつもりなんでしょうけど、まああからさまですよね。千鳥足で壁にみんな並んでわっはっはってやってるんですけど。あれだけビールを飲んだらですね、どうしたって近くなりますよね。ロンドンを綺麗にするにはゴミ拾いじゃなくてビールの消費量を減らすしかないんじゃないかと思ってます。でもその匂いすら臭かったですけど、やっぱりこの人たちは飲兵衛で変わってないなあと思って嬉しくなってしまいましたけど。
あと変わんないのは天気予報というか変わりやすい天気ですよね。昔はアプリの天気予報なんかなかったですけど、見て晴れてるはずがあっという間に曇って雨が降ってきて、あわてて予報を見ると降水確率が80%とかになってるんですよ。こんなん後出しジャンケンじゃないかっていうくらいロンドンはこの時期っていうのはすごく難しいと思うんですけど。ただ霧雨がすごく多いんですよね。ザンザン降りにならないので、今思い返してみると僕が住んでた時も傘を持ってた記憶がないんですよ。みんな降ったらフードをかぶってちょっと急ぎ足で歩いて止んだらそれを外してっていう手ぶらの旅と言いますか。ロンドンを旅したらその雨もその一部だと思って楽しんでください。
★★★★★★★
仕事もちょっとしたんですけど、今回1番楽しかったのは久しぶりにノッティングヒルのカーニバルに行ったことです。ノッティングヒルっていうとみなさん「ノッティングヒルの恋人」みたいなので覚えてるかもしれませんが、ウエストエンド・西の外れです。庶民的な街だったらしいんですけどもう高級住宅地ですね。有名な道にポートベローというのが駅すぐにありまして、そこはアンティーク・骨董市の出店が出たり古いそういうものを扱うお店があって、金土日月とやってるのかな。普段はすごい人なんですけども、この8月の終わりのカーニバルの時だけは違います。これはですね、カリビアンとかレゲエ・スカ、その手の移民たちが持ってきたブラックミュージックですかね。それが道という道にサウンドシステムを出したり、スティールパンのバンドが出たりして街を練り歩いたりですね。日曜日月曜日とあるんですけど、ものすごい賑わいです。僕は1番最初、もう20年以上前に行ったんですけど、あの時比べてだいぶ有名になって、今6万人来るとか。それも本当に住宅地ですよ。迷惑この上ないというかですね、近所の人たちはだいたいその週末窓にベニヤ板を打ち付けてどっかに高飛びします。それからポートベローのお店の人たちも分厚い板を貼って。酔っ払いが窓を割ったり、乱痴気騒ぎなんで大変らしいんですね。それでも許すところがすごく面白いんですけども。本当にでもこの陽気な音楽のカーニバル。僕は知り合いがシステムをやってたのでそこを目指してやってたんですけども、元トロージャンズというスカバンドをやっていたギャズ・メイオールという、お父さんがジョン・メイオールという、イギリスでいうブルースギターの神様みたいな人ですけども。その息子さんていうのはやっぱり音楽クレイジーというかですね、スカ・レゲエ・R&B・ソウルなんにでも詳しくてとにかくDJやってもめちゃめちゃ面白いんですよ。そのステージに行ってビールを飲みながら至福の時を過ごしたんですけども。よかったのは誰かがDJをしててバンドが出てきたんですよ。声がうるさくって誰がメンバーがわからなかったんですけどレゲエバンドで。リズム隊が出てきてレゲエのリズムを刻みだしたらドレッドヘアーの50くらいの人かな。トランペッターが出てきまして、おもむろにトランペットを吹きだしたんですよ。それがジャズの名曲「TAKE FIVE」ですね。本当に良かったですね。ボケーっと見てると今度、バッヂだらけのジャケットを着たおかしなおっさんがラムを持って練り歩いて人にショットをタダで振舞ったりしてですね、その環境の中でおじいさんおばあさん、男女関係なくみんな踊ってるんですよ。やっぱりロンドンは最高ですね。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。