Why do you travel? Why you're not?
Theme is... Visit to a GRAVE
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「墓参り」。
パリにある「モンマルトル」「モンパルナス」「ペール・ラシェーズ」といった
墓地巡りをして、芸術家やミュージシャンの墓前で感じたこと。
そして、つい先日、ロサンゼルスで訪れた敬愛する作家のお墓での
エピソードなどについて語ります。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
旅に紐付いた「リクエスト曲」をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
3曲セットの「ミュージック・ストリーム」セレクションでもOK!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
訓市からのリクエストは「BPM120」以下。
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお願いします。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Being Boring / Pet Shop Boys
ヴォーカリストのニール・テナントとキーボード・プレーヤーのクリス・ロウからなるイギリスのデュオ・グループ、ペット・ショップ・ボーイズ。1990年にリリースされた4枚目のアルバム『Behavior』のオープニング・トラックで、この曲のミュージック・ヴィデオはフォトグラファーで映画監督のブルース・ウェバーが手がけています。そして、あのソフィア・コッポラにも影響を与えたとか。
Have You Ever Seen The Rain? / Karen Souza
アルゼンチン、ブエノスアイレスの女性ヴォーカリスト、カレン・ソウサ。ロックやポップスのヒット曲をジャズ・アレンジでカヴァーしたアルバム『Essentials』に収録されているこの曲はアメリカのロック・バンド、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバルのカバー・ヴァージョンです。
Here's That Rainy Day / Carmen McRae
ニューヨーク、ハーレム出身の黒人女性ヴァーカリストで、サラ・ヴォーン、エラ・フィッツジェラルドと並び「御三家」の一人と呼ばれるカーメン・マクレエ。1964年にリリースされたバラード集『Bittersweet』に収録されているこの曲はフランク・シナトラからビル・エヴァンスまで、多くのジャズ・ミュージシャンが取り上げているスタンダード・ソングです。
Gaucho / Steely Dan
ヴォーカル&キーボードのドナルド・フェイゲンとギタリストのウォルター・ベッカーの二人からなるスティーリー・ダン。アルバムごとにセッション・ミュージシャンを迎えてバンド・スタイルによる作品を数多くリリースしています。1980年にリリースされたアルバム『Gaucho』は現在のスタイルを確立した記念碑的作品です。
Oh My Little Girl / 尾崎豊
もともと、1983年リリースのデビュー・アルバム『十七歳の地図』に収録されていた曲で、1994年にシングルとして発売。
Mon Dieu / Edith Piaf
フランスが生んだ20世紀を代表するシャンソン歌手、エディット・ピアフ。1963年に47歳の若さで亡くなった彼女の遺体はパリの「ペール・ラシェーズ墓地」に埋葬されています。
Chan's Song / Herbie Hancock
アメリカのジャズ・ピアニスト、バド・パウエルが晩年を過ごしたパリでの実話をもとに製作された1986年の映画『Round Midnight』のサントラから。映画はジャズ・サックス・プレーヤーのデクスター・ゴードンが主役を演じ、その他にもハービー・ハンコックを始め現役のジャズ・ミュージシャンが出演しています。
Riders On The Storm / The Doors
1960年代半ばから70年代にかけて活動したザ・ドアーズのラスト・アルバムとなった1971年の作品『L.A. Woman』のエンディングを飾る曲。バンドのヴォーカリストでカリスマ的人気を誇ったジム・モリソンはアルバム・リリース後、パリに移住し間もなく死去しました。彼の遺体もエディット・ピアフと同じ「ペール・ラシェーズ墓地」に埋葬されました。
Landslide / Fleetwood Mac
イギリス出身のドラマー、ミック・フリートウッドを中心としたバンド、フリートウッド・マックが1975年にリリースしたアルバム『Fleetwood Mac』に収録されている曲です。バンドは本作からギタリストのリンジー・バッキンガムと女性ヴォーカリストのスティーヴィー・ミックスが加入し、このあと、全盛期を迎えました。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking…
★★★★★★★
お墓参り。なにも自分の実家の墓や親戚の家に行くのではなく、旅先で自分が好きだったミュージシャンや物書きの墓を訪れるということです。一番最初は10代の終わりに初めて1人でパリに行った時に訪ねたパリの墓地。やることもなくブラブラしてる中で、パリには3つの大きな墓場があって、いろんな人が埋葬されているというのをどこかで読んでいたからなんですけど。有名なのはモンパルナス、モンマルトル、そして一番大きいペール=ラシェーズという墓地です。1日かけてメトロに乗ってその3つを歩きました。サルトルとかイヴ・モンタン、それからオスカー・ワイルドとかエディット・ピアフなんかのお墓もありまして。好きだった詩人のボードレールのお墓もありました。あとモディリアーニやショパン。自分が読んだり音楽を聞いたり絵を見た人たちというのは当然会ったことがないわけなんですけども。そういう本やレコードでしか見たことがない、その人たちが名前が彫られた石の下に実際に眠っているんだと思うとすごい不思議な気分になりました。どんなにすごいことを成し遂げても最後はこの石の下に収まってしまうのか。人生っていうのは虚しいなっていう考えも浮かびましたし、それと同時に初めてその本人の存在というのを直に感じるというか、「あぁ、本当にいたんだ」っていうことに感動する。相反するその2つの感情がありました。そしてこの石の下で眠りについている、あるいはもう土になってしまっている。彼らが生きていた時はどういう人でどういう毎日を過ごしていたのかなって考えずにはいられませんでしたし、それと同時にどんなに名声を残したとしても最後は死んで土に帰るんだっていうことを本当に実感しました。知名度のとおりすごく立派なお墓の人もいれば、思ったよりも小さくて見落としてしまいそうな、こんなところにいたんだっていう人もいました。その時、一番印象に残ったのはペール=ラシェーズ墓地にあったDOORSというバンドのシンガーのジム・モリソンの墓でした。どこにあるのかわからなくてキョロキョロしてると、本当はやっちゃいけないんですけど、いろんな人が墓場の中に落書きをしていて、矢印が書いてあって『JIM』って書いてあるんですよ。それを辿っていくと当時ファンであっただろう、すごい年をとったヒッピー風の女が歩いていまして、その後をついていくと四角い、シンプルなジム・モリソンのお墓にたどり着きました。
★★★★★★★
ジム・モリソンのお墓に着くと、そこにはいろんな国の人がいました。ラジカセでDOORSの曲をかけている人もいましたし、酒を墓石に注いだり、タバコの供え物をしたり、みんな考え深げに墓を眺めていました。ローヒッピーの女も「あぁ、ジム。20年かけてやっとここに来られたのよ。」とつぶやくと、墓石に抱きついて涙を流していました。当時の知り合いなのかファンなのかわかりませんけども、お墓というのはかつて僕らが憧れた人の存在を感じ、会える唯一の場所なんだなと強く思うようになって、そこから墓地巡りというのを始めました。先日、ロサンゼルスに行った時に僕は大好きな作家の墓参りをしてみました。それはジョン・ファンテという、ロサンゼルス文学と呼ばれるものの元祖の一人で、一時は本当に忘れられた存在だったんですけども。酒飲みの女好きで有名な作家・ブコウスキーがものすごく大ファンというか、自分が物書きになるきっかけになって一番影響を受けた人だということで、ファンテの本を再販して自分で序文を書いたんです。それで一気に再評価されて、今ではアメリカン文学の古典のひとつで、アメリカ人の若い人達だったらほとんどみんな読んでますね。あとはビートニクの先駆けだとか、僕も旅行中にそれで知りまして、特に彼の代表作である『Ask The Dust』っていう、日本のタイトルだと『塵に聞け』というのが大すきで。本のタイトルとして、これは一番格好いいタイトルのひとつなんじゃないかと思っています。今のロスからは、再開発でなくなってしまった古い街を舞台に、若くて貧乏で、作品が1回しか雑誌に載ったことがないというバンディーニという子が主人公で、ものすごい口語体で感情溢れる文体なんです。日本版も出てるので、興味のある人はぜひ読んで欲しいんですけど。僕を泊めてくれてた友達もファンテが大好きで、一度も行ったことないから一緒に行こうかということになって、ネットで調べて行ってみました。アメリカの墓地というのは芝生ですごく日当たりが良くて日本と違ってジメジメしてないんですけど、その中でも日が当たらない悪い場所にポツンとファンテのお墓がありました。墓石にもファンテとその奥さんの名前だけ、手前には干からびた花束がひとつ置かれていて、墓石もほとんど落ち葉と雨で流れた土で覆われていました。僕と友人はその落ち葉や泥を取り除いて、それから二人、無言で水を汲んできて墓石をピカピカに洗いました。友達はポケットからバンダナを取り出すと墓石をすごく綺麗に磨いて、ポケットから両切りのタバコを取り出してゆっくりと吸ってお供えをしていました。僕も同じくタバコを吸ってぼんやり墓石を眺めてました。そこで思ったのは、キリスト教のお葬式で必ず使われる言葉があるんですけども『Ashes to ashes dust to dust.』。『灰は灰に、塵は塵に。』。どういうことかと言いますと、我ら、塵から生まれて塵に帰るっていう、無常感溢れる言葉なんですけども。『塵に聞け』って言ったファンテも塵になってしまったんだなぁと、すごく感慨深く思ってしまいました。そこで友達が「行こうぜ、ダチよ。それから、俺たちもいつか死ぬけど、その時は火葬でバッと散骨がいいな」と言いました。僕も同じことを考えていました。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。