It reminds me something already I forgot.
Theme is... Best Friend in L.A.
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「ロサンゼルスの友人を訪ねて」。
先日、仕事でロスに行った際、友人宅に泊まってオフタイムの間中を
一緒に過ごした友人の魅力、彼との会話、そこで感じたことなどを
訓市が語ります。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
旅に紐付いた「リクエスト曲」をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
3曲セットの「ミュージック・ストリーム」セレクションでもOK!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
訓市からのリクエストは「BPM120」以下。
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお願いします。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Little Trip To Heaven (On The Wings Of Your Love) / Tom Waits
米カリフォルニア州出身のシンガー・ソングライター、トム・ウェイツが1973年にリリースしたデビュー・アルバム『Closing Time』のタイトル・トラック。
Corcovado / Nara Leao
ブラジル生まれの女性ヴォーカリストで、「ボサノヴァ」を代表するディーヴァ、ナラ・レオン。リオデジャネイロにある「丘」の名前をタイトルにしたこの曲は、アントニ・カルロス・ジョビンが書いたボサノヴァのスタンダードです。
Everyday I Write The Book / Elvis Costello & The Attractions
ロンドン出身のアーティスト、エルヴィス・コステロが「アンド・ジ・アトラクション」名義で1983年にリリースしたアルバム『Punch The Clock』収録曲。
I Don't Want To Live Without You / Foreigner
イギリス人ギタリストのミック・ジョーンズを中心とした英米混合のロック・バンド、フォリナー。1987年にされた6枚目のアルバム『Inside Information』に収録されている曲です。
ミルクティー / UA
1992年にリリースされた9枚目のシングルで、セカンド・アルバム『アメトラ』にも収録されています。
Minute By Minute / The Doobie Brothers
米ウェスト・コースト・ロックを代表するバンド、ザ・ドゥービー・ブラザーズにとって最大のヒットを記録したアルバム『Minute By Minute』のタイトル・トラック。
Concrete Schoolyard / Jurassic 5
米ロサンゼルス出身のヒップ・ホップ・グループで2DJ+4MCの6人からなるジュラシック5が2000年にリリースしたファースト・アルバム『Quality Control』に収録されている曲です。
The Field / Sound Providers
米サンディエゴ出身の3人からなるユニット、サウンド・プロバイダーズ。
If I Have To Go / Tom Waits
1980年代から2000年代にかけてレコーディングされた新旧の曲を3枚のCDに収めた大作『Orphans: Brawlers, Bawlers & Bastards』から。リリースは2006年です。
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking…
★★★★★★★
友達とフラッと何気ない時間を過ごすというのは、働き始めると一番難しい事になります。先日、仕事でロサンゼルスに行っていたんですけども、4泊の短い旅でした。その時、ホテルには泊まらず、仲良しの友人の家に泊まる事にしました。彼は10代の娘が2人いる普通の家庭を持つ同い歳の友達なんですが、昔はグラフィティーライターとして80年代の終わりとか90年代、まだストリートギャングがたくさんいた時に活動していた人で。酒の飲み過ぎで更生施設にも入ったり、いろいろ問題があった人でした。今はもう酒も一滴も飲まない健康体で、腕のいいアートディレクターとして働いています。とても面白い男でして、僕は大好きで一緒にいると本当に飽きないんですけど、なにしろかなりひねくれて、ねじ曲がったユーモアの持ち主でして。どんな人でも笑わせて許されますし、おもしろいのがルールを1000個くらい持っているんですよ。“こういう時はこれをしちゃダメだ”とか、“こういう時はこうだ!”とか。服装もすごく面白くて、シャツはアメリカ製だった頃のJCペニー。向こうの量販百貨店のシャツと、キューバにあるキューバシャツの工場、指定が2個あるんですけども、そこのじゃないと着ないっていう人で。パンツもディッキーズっていうよく向こうのギャングの人たちも穿いてるワークウェアのパンツがあるんですけども、それもアメリカ製の、まだ労働組合が証明して作っていた頃のじゃないと穿かないっていう男です。それを古着好きだったらお金出せばヴィンテージ屋で買えるんですけども、そういうのもけしからんと思っている男でして、買うとなると中古の特販店を探し出して、10ドル以下でしか買わないっていう人です。僕が行くと必ずそういう場所を血眼になって探して、「ほら、お前のサイズあったけど、15ドル。」「じゃあ買っちゃダメだ!」みたいな。本当に面白くてそんなスタイルなものですから、ロスの若いスケーターとかフォトグラファーから、大工さんまで。すごくリスペクトされている男です。
僕は古いダイナーとか新しくない店が好きなんですけども、「いい店を見つけておいたぞ」って連れて行かれたのが、サウスセントラルという地区にある古いダイナーでした。ロスはすごく広いので、ロスっ子だとしてもまだ知らないお店というのはたくさんあるんですけど、このお店も最近偶然知って、「最初に行くのはお前とだ!」って言って行かずにとっておいてくれたらしいんです。このサウスセントラルというのはギャング戦争というのがあった時のまさに中心地で、昔は、入ったらすぐに撃たれるだの昼間でも絶対通りを走るなって言われてた場所です。そこに僕と友人と、その友人の全身イレズミだらけの白人と3人で行きました。車を停めてからこそこそ歩いて店に入ったんですけども、素晴らしい内装で。50年代から一切手を入れていない長いカウンターがあって、奥に使い込まれたキッチンがあって、メニューや壁に貼ってあるものもすごい味が出ていて最高なんですけども、客は全員ブラザーです。おっかない感じなのから近所のおじさんみたいのまで。僕らが入ったら全員流し目でジロッてこっちを見て、どうしようと思ったんですけど。僕の友人が気にせず「どうもー」って言って被っていたハンチングをあげたんですね。同い年なんですけども頭がツルッといってるやつなので 、帽子をあげるとそれがピカッて光ったら、ブラザーたちも笑うしかなくて。どうぞ、という感じで僕らは素敵にウェルカムされてロサンゼルスの素敵な朝を過ごしました。
★★★★★★★
本当にその友人というのが面白くて、ある時は危ない場所にある黒人専用の床屋に横付けして「10分くらい、髪を切るから待ってくれ」っていうんですね。危ない地区なので床屋のドアを開けようとしても鍵がかかってる。中から開けてもらうんですけど、覗くとまたまた角刈りとかにしてるブラザーだらけなんですよ。怪訝そうな顔の店主が「何の用だ?」って言うと友人が「かつてないほどハンサムにしてくれ」って真顔で言ったんで、店主も冗談だろ?って顔をしながらもう笑うしかなくて。「よしきた、入ってくれ」って言って中に入れてくれました。10分経って、言った事を何一つしてもらえなくてものすごく刈り上げられて。もみあげも落とされてブーブー言ってましたけど、「見れて面白かっただろ?」っていう、そういうサービス精神のある人で。万事がそんな感じなのですっごく楽しくて、僕が仕事をしてる間、横で神妙な顔をして待っていて、車に乗るとくだらない話ばかりするんですよ。例えば、南米でお腹を壊した時にトイレが見つからなかった時の話とか。海外でたまにあるんですけど、トイレの前に人がいてお金を払うんですね。それでトイレットペーパーをくれるんですけども、南米のそのどこかの国だと、お金を払ったら5センチくらいの小さな紙しかもらえなかったと。それで自分が壊したお腹をどうやって拭くかっていうのを現地の人に教えて貰ったらしいんですけど、すごく面白いですが、きっと食事中の方もいらっしゃると思うのでいつかまた別の機会に話したいと思います。そんな感じで車を流して延々とヤシの木の並木道を走りました。「ロサンゼルスの川の西側がウェストサイドギャングで、東側がイーストサイドギャングになるんだ」とか、「それはメキシコギャングの区分で、黒人のギャングになるとそれがハイウェイで分かれるからややこしいんだ」とかいう話。ここがブコウスキーが昔働いていた郵便局だぞとか、そんな話をこっちはうんうん聞きながら4日間過ごしました。本当に大人になると友達と過ごす時間というのがどんどん減っていくなって日々実感します。ましてや友達の家に泊まってご飯をご馳走になって連続してまた泊まるなんてことはほとんどないと思うんですよね。たまに、酒を飲んで終電逃して帰れないから泊めてくれって言って、朝一で怒られる前に帰るなんて話をよく聞きますけど、昔は気付いたら1週間いたとか、10日いたとか。うちには3日泊めてくれって言って2年生活した人もいましたけど、そんな呑気な生活でしたが今じゃそんな時の過ごし方っていうのが一番難しくなりました。でも40歳を過ぎた大人が2人、毎日一緒に過ごせるというのは無意味なようでとても意味があることだと思いました。1日の中に大きい出来事はないんですけども、小さい発見とか、小さな笑いがたくさんある1日。それって本当に夕暮れまで友達と遊んでた子供の頃の遊び方に近いといいますか。それをずっと4日間トム・ウェイツをずっと聞きながらやってました。トム・ウェイツや僕らの好きなブコウスキー、それからジョン・ファンテ。彼らが書いたロサンゼルスというのはもうとっくに消え失せて、その面影を探すのも大変になりました。唯一残っていたダウンタウンもすっかりおしゃれな街になって、むかし道を徘徊していたちょっとおっかないけど味のある人たちというのもみんないなくなってしまいました。ただ、探さなくてものんびりと車を走らせて景色を見ながら話をし、ステレオから流れる音楽を聴くだけでもう十分な気もしました。またぜひこういう時間を過ごしたいなと思いますが、学生、そして若いリスナーのみなさん、これから休みもあると思いますが、ぜひこういう「そんなことするの?無駄じゃない?」って思うような時を過ごしてみてください。後になってみれば、それがいかにかけがえのないものだったのかっていうことにいつかきっと気づく日がきます。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。