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Why do you travel? Why you're not?
Theme is... BOOK STORE
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
そして、後半のテーマは「本屋」。
自らを「活字中毒」という程、本が手放せない訓市。
彼がニューヨークで行きつけにしているおススメの本屋、
そこでの時間の過ごし方について語る。
オンラインが台頭する今、訓市が思う「本屋」の可能性とは?
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
ドライブ旅で聴いた曲なども教えてください。
勿論、恋愛系も・・・
旅に紐付いた「リクエスト曲」をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
3曲セットの「ミュージック・ストリーム」セレクションでもOK!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお願いします。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
From A Distance / Bette Midler
No Surprises / Radiohead
Music From A Found Harmonium / Penguin Cafe Orchestra
ジャングルの朝 / 冨田勲
瞳を閉じて / 荒井由実
Have You Forgotten / Red House Painters
Open Book / Jose Gonzalez
デッサンあ / Cornelius
Leaves Of Millfield / The Project Club
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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僕は本屋さんが大好きなんですが、同時に大嫌いでもあります。僕はいわゆる活字中毒の人間で、活字がないと本当に落ち着かないので、本屋さんは僕の天国なんです。逆に嫌いな点は、探し物を探しに行っては全く関係のないものを買ったり、本屋に行くと下手すると半日は時間を潰してしまうのです。探していると次から次へと本が繋がってしまって、気がつくと打ち合わせの時間も過ぎてしまっていて怒られちゃうわけです。『本屋さんがいけないんです!』って言っても誰も許してくれないので、愛と憎しみ。それが僕と本屋さんの関係です。
旅と本屋。僕の旅というのはだいたい空港にある本屋さんから始まります。いつも必ず家からも買って読んでいなかったものとか、もう一度読みたいなと思っている本を持って行くんですが、空港でも文庫本をたくさん買います。なぜかというと『途中で手持ちの本を読みきってしまったらどうすればいいんだ』という脅迫観念がありまして、なにもないというのがすごく嫌なんです。友達の家に泊まりに行って、僕が手持ちカバンを開けるのを友達が見ている時に、『何冊の文庫本を持ってきてるんだ?1週間なのに。』って。彼は僕のナイーブな気持ちを理解してくれないんですよ。なくなったらどうしようっていう。常に読むものがあるという安心感がすごく大事なんですけど。
僕が年間を通して一番行く街はニューヨークなんですが、もちろん行きつけの本屋がいくつかあります。まずはブロードウェイにある“ストランド”という有名なお店で、ここのトートバッグはニューヨーク土産の定番にもなっています。ここはビル一棟本屋さんで、別のところにはレアブックスっていって昔の写真集とかも売ってます。アメリカの本屋さんは、日本と違って新刊でも定価じゃなくてディスカウントして売ってたりするんです。なので、写真集コーナーとかに行くとついつい買い込んでしまいます。本というのは重いしかさばるし、はっきり言って『日本のamazonで買っても変わんないんじゃないの?』って思うんですけど、やっぱり本屋で発見した時に『これいいな!』って勢いで買うのが楽しいのと、これ200円日本のより安いじゃん、という得したぞっていうのが気分を高揚させて買ってしまって後で後悔するんですけど。こんなの持てない!みたいな。後はニューヨークだとダッシュウッドという写真集の専門店がSOHOにあります。ここは必ず行きますね。デイビッドさんというおじさんがやってるんですが、完全に写真集のマニアです。紙の種類だの、『この写真集はアイスランドの印刷屋で刷ったんだけど、アイスランドはねぇ。』みたいな話を延々とするんですが。こういう本屋さんに行くと全く知らない興味のない写真集とかでも『君はこれを見た方がいいんじゃないか。』と解説をしてくれて、『なるほど。この人があの人に繋がるんだ。』とかいろんなことを教えてくれます。こういうのはオンラインで本を買う時には決してないんじゃないかなと思います。
★★★★★★★
本屋さんは全般的に好きですが、カルチャーを生み出した本屋として一番最初に意識して憧れたのは、サンフランシスコにあるシティ・ライツという本屋さんです。ここはビート文学、ビートの聖地です。ビートとは、戦後に新しい価値観を求めた若者たちが、ボヘミアン的な生活の中で生み出したもの。難しいことは言わないでどんなことなのかっていうと、アメリカ文学の正当な後継者といったところでしょうか。ジャズを聴いてヒッチハイクをして、新しい価値観として仏教を習ったり、既成概念にとらわれない自由な表現な詩を書いたり。カウンターカルチャーというメインストリームに対して反対するものの、オリジナルなものだと思います。音楽でいうとボブディランとかビートルズから、そのあと全てのロックンローラーに多大な影響を与えましたし、ビートの人たちがその後ヒッピームーブメントの中に大きな役割を果たしたんですけども。小説はジャック・ケルアックとか有名なのがありますけど、早い話が僕は大人になったハックルベリー・フィンの冒険のような話だと思っています。口語体で自分たちが街を舞台に自由に生きて行く、というところがすごくいいなと思います。このシスコにあるシティ・ライツという本屋さんはその当時、全然認められない若い詩人や作家たちの作品を自ら出したり、ポエトリー・リーディング、詩の朗読会の会場としてその本屋さんを使ったり。これの素晴らしいところは、志のある本屋の主人がただの物売りの場にしたのではなくて、なにか新しいカルチャーを生み出したり、新しい人たちが集まれるような場所にするという、強い意志があったということです。いま、本が売れないとか、売れたとしてもオンラインで買うのがほとんどというのが世の中の流れだと思いますが、本屋さんには本屋さんにしかできないことがまだまだあるんじゃないかなと僕は思います。例えば、“ZINE”というのが若い人に人気があります。これは個人が自分たちで作る、一番簡単なものだとコピーした自分の絵をホチキスでまとめたり、詩を書いてそれをテープで留めて売ったり、手作りで部数も限られてるんですが、今ではどんな大きな都市にも必ずそういうZINEを扱う本屋さんがあって、どこもとても賑わいを見せています。きっとそこで買う必要があるものとか、そこにしかないもの、そこでの出会いがなにかコミュニティーを生み出す。そういう必然性があれば人は来るんじゃないかと思います。それって音楽、CDが売れないと言いますが、ライブには人が来るというのにどこか似てるんじゃないかなと思います。いつでもどこでも聴ける音より、その場に行かないと聴けない音。そこにはすごく必然性があるのかなと。ZINEもそういうところがあって、特にZINEを扱うブックフェアなんか行くと本当にそこにしかない本とかたくさんありますし、元気がいい・威勢のいい若者たちがたくさんいて、独特の雰囲気を作っているというのが素晴らしいと思うんです。モノを作る人たちの活気が集まる場所というんでしょうか。そういう何かを共通に雑多な人が集まる空気というのがいまの本屋さんとかフェアにあります。それはすごく素敵だなと思うし、本屋さんとして大変だと思いますが、有名な本屋にただ行くんじゃなくて、そういう雰囲気を味わいに行くというのが今は一番正しいのかなと思います。皆さんも海外に行くときはぜひ下調べをして、街のブックフェアにぜひ行ってみてください。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。