It reminds me something already I forgot...
Theme is... FREEDOM
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「自由」。
長い旅を終え帰国して母親と交わした会話で感じたこと、
訓市が精神的に大きな影響を受けた映画、
『カッコーの巣の上で』にまつわるエピソード・・・。
そして、今年、若くして亡くなった友人の死を受けてアップされた
追悼ビデオについて語ります。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
12月は今年一年間の感謝をこめて・・・
皆さんからのメッセージをバンバンご紹介します!
☆☆☆
特に募集するリクエスト曲のテーマは、
「冬のヘヴィメタル・バラード」
「冬のドライブ・ソング」
そして、「あの曲をもう一度」
日頃、一度オンエアした曲は2度と選ばない!という鉄のルールを
この時期だけ緩めて(笑)お届けします。
☆☆☆
リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Thank You / Dido
Desperado / Linda Ronstadt
Drink You Gone / Ingrid Michaelson
My Love / Paul McCartney
海を見ていた午後 / 荒井由実
The Giant Of Illinois / Andrew Bird
At Last I Am Free / Robert Wyatt
It Never Entered My Mind / Miles Davis Quintet
One Flew Over The Cuckoo's Nest (Closing Theme) / Jack Nitzche
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
旅が好きだったり、仕事でもしょっちゅう海外に行っていると『自由でいいねぇ。』とよく言われます。旅=自由なのかもしれないですね。仕事で行ってたとしても自由に見えるようです。僕がまだ若く、旅をしながらふらふらナイーブにいろんなことを考えていた頃は、自分は好きでやっていたので深く考えていませんでしたが、僕の親はやはり心配していたみたいです。“便りがないのは元気な証拠”といいますけども、元気がありすぎて年をまたいで連絡を一つもしなかったので、何年かの間、僕がどこにいるのか、野たれ死にしてるのかもわからなかったみたいです。いま自分が子供を持つ身となって、自分の娘にそんなことをされたら一生許さない、と思いますので本当にひどいことをしたなぁと思います。とにかく親はこちらが何を考えているのか少しどころか1mmも理解できなかったようで、さらに僕は男なので、喧嘩をしたり朝帰りを繰り返してそのうち帰らなくなったり、学校から呼び出しを何度もくらうということも無数にありました。親にしてみると、やんちゃな男の子だし、思春期というのはちょっと荒れたりするものだ、くらいに思っていたらしいです。…僕の想像ですけど。ところが旅を繰り返すうちに角がすっかり落ちてしまいまして、完全平和主義者になった時の方が親は戸惑っていました。たまに会うと『あなた、将来はどういうふうに考えているの?』『平和に暮らせればいいかな。金いらないし。最低限あればいい。金は人を不幸にするね。』『でもそんなこと言ってて、どこに住むの?』『世界中、安いところはいくらでもあるし、そこでのんびり暮らすよ。自由がいいわ。』会話も全然かみ合わなかったです。僕は心の自由さえあればいいと思ってまして、物欲もすっかりなくて、荷物もバックパック1個分くらいしかありませんでした。とにかくものより経験、近所より遠いところ。そういうふうに考えてる息子を親は全く理解できなかったみたいです。それだけ勝手に好きなことをしているくせに、さらに自由でいたいと言ったこちらのセリフにずっこけていたとも思います。ところがあるとき長い旅から帰ってきたとき、ものを取りに実家に帰りました。すると母親が『あなた“カッコーの巣の上で”という映画を知ってる?』と聞いてきました。これはアメリカンニューシネマの名作で、著者のケン・キージーは会いに行くほど好きでした。ヒッピームーブメントの先駆けとして、人の精神とはどういうところからきているのか、自由とはなにかというのをすごく追求した人で、運良く僕は彼が亡くなる前にオレゴンの牧場で会うことができて、ものすごい影響を受けました。
★★★★★★★★
“カッコーの巣の上で”という映画ですが、これは管理主義的な精神病院に仮病で入ったジャック・ニコルソンが、持ち前のエネルギーで周りの患者を巻き込んで管理主義に抵抗していく話です。最後はロボトミー手術、昔あった手術で廃人になっちゃうらしいんですが、ジャックもそうなりました。そのとき、彼の仲間でネイティブアメリカンのチーフが、枕でジャックの息の根を止めて、自由を求めて病院から出て行く話です。これだけ聞くとなんの映画かと思うかもしれませんが、『人間の尊厳とは』とか、『本当の自由とはどういうことか』というのを追求した映画です。僕の母親は、寝ようとしてテレビをつけたらたまたま深夜放送でこの映画がやっていて、眠気も忘れて見入ってしまったというんです。『我が母親ながらいい趣味だね。』と言うと、『あなたは最後のシーンをどう思う?もし自分がジャック・ニコルソンだったら、同じように死にたいと思う?』と尋ねてきました。僕は『もちろんだよ。自分が自分じゃない状態でいるのは嫌だ。死んだほうが自由だ。』とわかったような口で答えました。母親は『あなたの言っていた“自由”がどういう自由なのか、やっと理解できた気がするわ。もう何も聞かないから好きにやってきなさい。』と言いました。それからたまに会う機会があっても、もう何も聞かれなくなりました。理解してくれたのか、諦めたのか。いまだに彼女は僕がなんの仕事をしているのか知らないと思いますが、自由というのはなんなのか、というのを考えるとき、僕はこの映画とこのときのことをよく思い出します。そして最近この映画についてまた思い出すことがありました。アメリカにディラン・リーダーというスケーターがいました。僕はいろんなスケーターに会ってきましたが、彼は僕が出会ったスケーターの中で、一番ハンサムでスケートも本当にうまくてモテるし、少女漫画の主人公みたいな男の子でした。一緒にお酒を飲んだり遊んだりしましたが、世の中にこんな完璧な男の子っているのかと本当に思いました。そんな彼がある日、白血病になりました。2年半前ですかね。骨髄移植をして手術自体はうまくいったという話だったんですが、治療が続きスケートもできなくなりました。最初にその写真を見たときは本当にショックで。やせ細ったディランというのが、もう知っているディランじゃないですから。ただ、目だけは強く輝いていて、いつか復活したらなぁと思っていた矢先、再発してしまい、先日亡くなりました。まだ28歳。インスタグラムでは彼への追悼の写真がすごくて、最後はCNNのニュースにまでなりました。彼が所属していたチーム、ジェイソン・ディルという友達がやっているんですけど、彼は死ぬまでディランの面倒をみていて、最後に追悼のビデオを作ってWEBにあげたんです。元気だった頃のディランがスケートをする様をスローモーションで流していて、ディランを忘れるなよっていうメッセージが伝わる素敵な映像だったんですが、僕が何よりびっくりしたのは、そのビデオにカッコーの巣の上でのクロージングの音楽を使っていたんです。ずっとスケートもできなかったディラン。死んだのはすごく悲しいですが、もしかしたら今はやっと苦痛から解放されて、天国で自由にスケートをしているのかなぁと、そう思える映像と音楽でした。明日は月曜日。体は仕事にとらわれるかもしれませんが、心だけは空高く自由でいましょう。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。