ON AIR DATE
2017.01.29
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

Let's travel! Grab your music!

TUDOR logo

Theme is... Seattle


『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは後半のテーマは「シアトル」。
約17年ぶりに訪れたシアトル・・・ 
かつて、初めて長期滞在した時に実体験したユニークで印象的な出来事。
そして今回、変わってしまった景色と変わらない景色を目の当たりにして
訓市は何を感じたのか?




★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2017.01.29

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Moon River / Louis Armstrong

2

High / Lighthouse Family

3

Not Too Late / Norah Jones

4

Distant Sky / Nick Cave & The Bad Seeds

5

Nights Of The Knife / TM Network

6

The 59th Street Song (Feelin' Groovy) / Simon & Garfunkel

7

Sing A Song For You / Tim Buckley

8

The Meaning Of Love / Steve Kuhn

9

Warmest Regards / Half Moon Run

2017.01.29

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★


ちょうど年明けにシアトルに行ったんですが、最後に行ったのが99年の年末だと思うので、実にほぼ17年ぶりでした。シアトルはポートランドから車で2時間くらいなので近くにはよく行っていたんですが、なかなか寄ることがなく本当に久しぶりで。空港を出て冷たい空気を感じながら、ずいぶん昔に来た時のことを思い出しました。今40歳前後の音楽好きの人にとって、シアトルというのはグランジの発祥地として馴染みがあると思います。僕はその前にJimi Hendrixがすごく好きで、彼がシアトル出身ということでまず記憶にあったんですが、グランジが出てきた時のことは鮮明に覚えてます。80年代はすごくグラマラスな時代で、みんな派手な格好をしていて、ソフトパーマの長髪に前髪。それが突然、80年代が終わって出てきたのがグランジやオルタナティブという音楽で、僕はその普段着の古着をそのまま羽織ったような姿でパンクのように怒ってるギターや絶叫をすごく愛したというか。やっと昔のカルチャーじゃなくて自分の生きているその時代に新しいものがでてきたというか、共感するものがすごくあって、興奮したのを覚えています。特にグランジというとNirvanaだと思うんですが、最初に聴いたのはまだ僕がテキサスにいた頃で、車のラジオからインディー時代の彼らの曲が聞こえてきまして。運転していた友達と、なんだこのバンドは?!っていう。ギターの音も大きいし、ツインギターの大所帯のバンドだと思って調べたら3ピースですんごく驚いたのを今でも覚えています。とにかくこうしたNirvanaとかグランジのバンドが、年がら年中雨が降る暗いシアトルから出てきて、それまでの長髪のメタルバンドとか派手なメイクをしていた人たちが完全に冗談のような立ち位置になってしまったというか、突然それらしい格好になったのは笑いました。僕はメタリカも好きだったんですけが、彼らが90年代に入っていきなりネルシャツを着て短髪になった時は“とうとうあんたもか。”と思いました。グランジは男の子の格好もシブカジみたいでしたし、女の子もドクターマーチンに花柄のワンピースなんかを着てまして、今でもツボです。
僕がちゃんとシアトルに滞在したのは99年のことでした。そのころ僕はちょうど世界中の人をインタビューして歩くスプートニクという本を作っていて、シアトルで出会った取材先の人に取材が終わったあと『ところで訓はそんな大きいリュックを持っているけど、このあとどこに行くんだい?』って聞かれて、『いや、実はないんだけど。』『じゃあ泊まっていくかい?』ということで結局、2週間くらいいたのかな?追い出されないように朝ごはんのあとはその人の目を見ながらお皿を洗ってました。その時にシアトルをうろついたのがちゃんとした記憶です。


★★★★★★★★


泊まっていたその家の人たちはアウトドア関係の仕事をしている人で、マウンテンバイクでダウンヒルをしたり、スケボーをしたりすごく楽しかったんですが、一番思い出深いのはWTOの会議に対して大きなデモがあったことです。これは世界貿易会議っていう世界中の人たちが集まる会議がありまして、なぜかそれが反グローバリズムだとしていろんな人が集まってアメリカの国内で久しぶりに大きなデモがあったんです。僕がある日その居候の家を出てシアトルの街をふらふら歩いていると、サンフランシスコのヘイト・アシュベリーに当時いたようなヒッピーの若者がたくさんと道にいまして、なんでこういう人たちがこんなにいるんだろうと思ったら、同類と思われたのか逆に声をかけられました。『お前はどこから来たんだ?』『東京だ。』『お前はそんな遠いところからわざわざシアトルまで来たのか?!えらい!』なんの話だか全然わかんないけど『いやぁ、そうかなぁ?』みたいな。要は僕がわざわざ東京からデモのためにやってきた仲間だと勘違いされていたんです。僕はそんなの全然気づかなくて、やがてデモ隊が行進を始めた時に、いつの間にかその列の中に取り込まれてしまって、一緒に訳もからずシュプレヒコールをあげていました。周りは石投げたりしていてけっこう大きなデモでした。そのデモがなんだったのかというと、その世界貿易機構が新しい貿易の自由化を交渉するという場で、それに対していろんな団体がネットを通じて情報を発信して人が集まったんです。そこには自然保護団体とか、アンチグローバリズムのアナーキストとかが集まって暴動を起こして。結局、会議は失敗に終わったのですごい熱気でした。自分たちが起こした行動で勝利したっていう。それがいいことだったのか悪いことだったのか僕には全くわからなかったんですが、とにかく初めていろんな若い人たちが集まってデモをしているところに入って、しかもそれがネットで拡散したというのが、完全アナログ人間だった僕には理解できなくて。どうやってネットで繋がるんだ?という。それが今でもすごく強い思い出になっています。そしてシアトルというのはリベラルな雰囲気が確かにあって、人もすごい親切でしたし、若いミュージシャン崩れみたいな人たちがたくさんいまして、それは今回久しぶりに行っても変わってなかったです。だいぶ洒落ついたお店が当然のごとく増えて、こんな街だったっけなぁっていうのもありましたが、どこで人に声をかけても、昔とかわらず親切でした。それから車で昔のドラマに出てきた滝やダイナーを見に行ったんですが、そこなんかは全く変わってなくて。変わったところと変わらないところっていうのがはっきり感じることができて、久しぶりに昔きた街を訪れるというのはすごく変化が感じられていいなと思いました。僕はニューヨークにはしょっちゅう行くので、そういうちょっとした変化になかなか気づかなくて、1・2年経った後に、そういえば随分かわったなぁって思うんです。でも、シアトルの場合はあまりにも間を空けたので逆にそれがすごくクリアに見えたというか。僕はアメリカ中いろんなところに行きましたが、シアトルみたいに20年近く行ってない街というのはたくさんあります。今年は少しずつそんな街を訪れたいなぁと思っています。