ON AIR DATE
2017.03.26
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

☆☆☆☆☆

Let's travel! Grab your music!

TUDOR logo

Theme is... RADIO


『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!

後半のテーマは「ラジオ」。
思いがけずこの番組を担当した訓市が、
今、改めて感じる「ラジオ」のチカラとは?
ラジオが常に身近にあるロサンゼルスの魅力について語ります。



★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。


_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

2017.03.26

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

This Will Be Our Year / The Zombies

2

Africa / TOTO

3

Nobody Does It Better / Carly Simon

4

No Ideas / Paul Draper

5

Party's Over / 楠瀬誠志郎

6

Don't Worry, Be Happy / Bobby McFerrin

7

Sexy Girl / Glenn Frey

8

The Truth (DJ Jazzy Jeff & James Poyser Remix) / Moonchild

9

Californis / The Lagoons

2017.03.26

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★


この番組が始まってもう3年目なんですけど、今日の放送で北海道と名古屋、福岡での放送が終わります。3年もやってるということよりも、自分が2010年代という完全デジタルの時代に、まさかラジオ番組を持つなんて思ってもいませんでしたし、やるようになって“ラジオの良さってなんなんだろう”と考えるようになりました。ラジオの素晴らしさというのはまず、“ながら聴き”ができるというところ、音しかないというこの制約がもたらしてくれる、ある種の自由があると思います。僕は発信者が完パケで作品を見せてくるものより、自分が勝手に想像できたり、いろんな取りようがあるものの方が好きです。
僕はすごく写真を見るのが好きなんですけど、写真というのは一枚で物語を語れますよね。そして、それがどういう意味を持つのかというのを、その時の自分の気分で決めることができます。一枚の写真を眺めていると、その背景にどんな音が鳴っているか、どんな匂いがするのかというのを想像できるわけで、それって素晴らしいことだと思います。本も同じだと思うんです。そこに出てくる主人公の姿形や声、そしてその舞台となる街の風景を、僕たちは自由に想像することができます。そして、ラジオもそういうものの一つだと思います。語られる話とそれに続く音楽で、こちらが勝手に組み合わせて風景を想像することができます。たまにラジオのDJの方が自分に向かって一人語りしているんじゃないのかと思うことすらあります。そんな感覚というのは、テレビでは決して感じられないんじゃないかと思いませんか?ネットでもないです。ネットは自分で探さないと答えは出てきませんし。そして電波が見えない形で中を漂って、自分のいるところまでやってくる。そしてそこで初めて音が出るというのは、なんだかとてもパーソナルでロマンティックというか、あたたかい音がするんじゃないかというような気がしてくるわけです。
ラジオのことを考えると僕は友達のことを想います。先月、僕はまたロサンゼルスに行きました。ロスではホテルに泊まらないで必ず同じ友達の家に泊まります。今はおしゃれになってしまいましたが、彼の家はシルバーレイクという街の外れにありまして、古い漆喰仕立てのカリフォルニアらしい家。1階はオフィスと彼がアトリエに使っている部屋、奥さんがアイロンをかける部屋と奥にゲストルームがありあます。2階に彼の家族が住んでいて、僕は1階の奥にあるゲストルームで眠り、だいたい朝7時くらいに目を覚まして、庭でタバコを吸います。ロスの朝というのは本当に真っ青な空で、砂漠気候のキュッとした寒さがあるんですが、その中で庭に咲いてるバラを見ながらタバコをぼんやり吸うのがとても好きです。そうしていると、僕がドアを開けて外に出た音に友達が気付いて、2階のポーチから『おはよう、友よ。上がってきてコーヒーでもどうだい?』と声をかけてくれます。2階に上がりキッチンでコーヒーを飲むんですが、そのキッチンのシンクの前に置いてある小さなラジオから必ず朝のオールディーズがかかっています。



★★★★★★★★


小さなボリュームのオンボロのラジオから聞こえるアメリカの古い音楽。ちょっと陽気で、まるで『おはよう。』と言っているような音楽を聴きながら、僕と友達はコーヒーを飲みます。それを飲み終わると今度は犬を2頭車の後ろに乗せて、走って5・6分のところにある山まで朝の散歩に行きます。車の中でもラジオが鳴っていて、この時間だとなぜかステーションはキューバンジャズ。僕は朝にキューバンジャズを聴く習慣はなかったんですが、この友達の家で覚えました。朝日の中をジャズが軽快にリズムを刻んでいくのはとても気持ちがいいものです。僕らは犬を車から出すと、ちょっとした山道を登っていきます。散歩にきている夫婦や仕事前に二人の時間をウォーキングで過ごそうという若いカップル。それからヘッドホンをつけて黙々と走る、ダイエットをしようとしている若い学生の子。誰もが『おはよう』とちゃんと声を掛け合います。そして山の上に着くと、ロサンゼルスのダウンタウンや全景を全て見渡すことのできる素晴らしい景色があります。山を下って家に帰ると、友達の奥さんが1階のアイロン部屋で家族全員の洗濯物にゆっくりアイロンをかけています。彼女もその部屋にラジオを持っていて、自分の好きなオールディーズのステーションに合わせて音楽を聴いています。アメリカの洗剤が持つ甘い匂いが充満している部屋の中で、彼女がラジオでかかる音楽に合わせて鼻歌を歌う姿というのは、どこかタイムマシンで古いアメリカの家族の家に飛び込んでしまったような、そんな雰囲気があって僕はすごく好きです。ロスで仕事をしていて早く終わったりオフの時間あるとき、僕と友達は午後、車で街を流します。低層の建物が立ち並ぶ街の、様々な時代にできたサイン。そしてそれを照らす光。午後になると友達はラジオのチャンネルを古いジャズチャンネルに必ず変えます。会話の邪魔にならないような小さなボリュームで。
僕はニューヨークがアメリカで一番好きでしたが、歳をとるうちにどんどんロスが好きになってきました。それはまだ残る古い町並みと青空、柔らかい日差し、そしてあらゆる場面で聴くラジオがあるのかなぁということに気づきました。シチュエーションに合わせるというか、1日の中で好きな気に入ったラジオを常に流している。僕は自分のラジオもそんな風に聞いてもらえたらなと思いながら最近はやっています。旅先にいるわけではない皆さんと、まるで一緒に車に乗りながらどこかの通りをなんのプランもなしに流しているような、まるで風景の一部のようなラジオ。
北海道、名古屋、福岡の皆さん、今までありがとうございました。またどこかでお耳にかかれることがあるんじゃないかと思います。そして東京、大阪のみなさん。週末の旅をこれからも続けていきましょう。