ON AIR DATE
2017.04.23
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

☆☆☆☆☆☆☆

Let's travel! Grab your music!

TUDOR logo

Theme is... JOSHUA TREE




『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんからお寄せ頂いた旅のエピソードと、
その旅に紐付いた曲をオンエア!
後半のテーマは「ジョシュア・トゥリー」。
今年、リリースから30周年を迎えたU2の大ヒット・アルバム、
『The Joshua Tree』のタイトルにもなっているユッカ族の「木」。
バックパッカー時代に訓市が友人と訪れたカリフォルニアにある
「ジョシュア・ツリー国立公園」で過ごした時間・・・
キャンプ中、あまりにもヒマで退屈しのぎに手にして習得した「楽器」とは?


★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」をゼヒお寄せください。


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2017.04.23

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Little Talks / Of Monster And Men

2

I Say A Little Prayer / Diana King

3

Show Me Love / Curtis Mayfield

4

It Pays To Belong / The Blow Monkeys

5

僕の人生の今は何章目くらいだろう / 吉田拓郎

6

I Still Haven't Found What I'm Looking For / The Chimes

7

Protection (Brian Eno Remix) / Massive Attack

8

Mountain Of Needles / David Byrne & Brian Eno

9

I'm Still Waiting / Bob Marley & The Wailers

2017.04.23

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★

アイルランドのバンド、U2が出したアルバム『The Joshua Tree』。当時、僕はU2が誰なのか、そして、プロデューサーがイーノと書かれていましたけど、それが誰なのかも知りませんでした。でも、子供心に『ギターの音が綺麗だなぁ』とか、『ドラムがシンプルだけど、全くブレないなぁ』と思ったのを覚えています。そして、このアルバム『The Joshua Tree』は今年で発売30周年。信じられないです、あれが30年前というのが。一番有名な曲は”With or Without You”という曲だと思うんですが、これは完全にスタンダードになった曲で、世界中1年を通してどこかでかかっている曲だと思います。僕はこのアルバムのなかでは“終わりなき旅”という曲が好きでした。“I still haven’t found I’m looking for”、直訳すると“まだ、探し求めているものが見つけられない”という意味だと思います。このタイトルこそ旅に出る人たちの理由であったり、また、旅を続ける理由なのかもしれません。好きでやってるんですけども、くたびれた身体を引きずって、ヤドカリのように荷物を全部バックパックに詰め、駅やバスターミナルについて、“次はどこへ行こうか”と考えるときに、なんとなく頭のなかでこの曲が流れていたものです。
このアルバムのタイトル『ヨシュア・ツリー』というのがなんなのか、当時は全く知りませんでした。アルバム自体、木の写真のジャケットなので、そんな名前の木があるんだろうと、その程度にしか思ってなかったんですが、これは実際にアメリカに生えてる木の名前。木の名前といってもリュウゼツラン、お酒でいうとテキーラの原料になっているサボテンのような植物の名前です。僕は旅をしているときにこのことを知って、カリフォルニアに『ジョシュア・ツリー国立公園』というのがあることを知りました。U2のジャケットも多分ここで撮られていると思います。僕は当時、友達とサンフランシスコの新聞の広告欄で安いフォルクスワーゲンのバンを450ドルで買いました。水色と白のツートンカラーで、アメリカではヒッピーバスなんて言われてますが、これを直して全部取っ払って捨てて、後ろは雑魚寝ができるようにして、仲間と一緒に旅をしていました。座席が運転席と助手席しかなかったので、荷物はたくさん積めましたし、なかでギターを弾いたり、太鼓をたたいたりして過ごすことができました。スピードは全然でないし、オーバーヒートでいつ煙を吹くかわからないという、かなりスリリングな車でしたけど、僕らはそれをとても気に入っていまして、このワーゲンのフロントガラスから見える景色こそ、僕らが求めていたカリフォルニアの景色だ、と頑なに信じていました。そしてその旅の途中に『ジョシュア・ツリー国立公園』にぜひいってみようということになりました。


★★★★★★★★

この『ジョシュア・ツリー国立公園』、キャンプ場があるとはいえ、ただの荒地のような場所でした。このジョシュア・ツリーという木はこの荒地にボコボコ単独で生えてまして、その周りに大きい岩があったり。まぁやることがなくて最初のうちはギターを弾いて歌ったり、適当にジャンベを叩いたり、腹が減ったらコンロで湯を沸かして缶詰の食べ物を温めて食べたり、夜は星空を眺めていました。そして、携帯用の小さいスピーカーとCDウォークマンでみんなで喜んで音楽をかけていたんですが、あっという間に電池がなくなって無音の世界が訪れました。おかげで僕はディジュリドゥというオーストラリアの先住民アボリジニが吹く楽器を覚えることができました。これはユーカリの木の枝のなかを、シロアリが食い荒らして空洞になったもので、その口をつけるところに蜜蝋を塗って形を整えて隙間ができないようにしています。似た楽器というとトランペットみたいに口をくっつけて唇を震わせて吹くんですが、結構音は簡単に出ます。でも、その演奏方法、循環呼吸というのが難しいんですよ。これはどういうことかというと、息を吐いて音を出し続けながら、途切れることなく鼻から同時に空気を吸う。それで循環呼吸というんですが、上手い人たちは途切れないように1時間くらい吹き続けるんです。これが本当に難しくて、どうしても鼻息が荒い人みたいになってしまうんです。僕はディジュリドゥをサンフランシスコのヒッピーから手に入れて持っていたんですが、どう練習したってこの循環呼吸ができないんですよ。しかもうるさいんです、この楽器。でも『ジョシュア・ツリー国立公園』で、ウォークマンの電池もなくて、これしかないなと、昼間から岩の上に座って吹くんですが、なかなかできないんです。いつもだったらほっぽり出してそのままなんですが、暇なのでまた拾ってきては吹くわけです。それが4・5日目か1週間経ってたのか、ある日突然できるようになりました。循環呼吸で吹けるとすごくメディテーションに近い、心が安らぐって聞いてたんですが、1時間吹いた感想は、ただの酸欠でした。グワングワンで何も考えられないです。このディジュリドゥというのは上手い人は何十種類かの動物の声を出したりしますし、マイクとエフェクターを通してかなりサイケデリックな音を出すこともできます。今となっては僕は直径が7センチや10センチちょっとくらいで1メートルくらいの棒があるとなんでも吹けるようになってしまいまして、これが旅先で結構役立つんです。初めて行った取材先とかでロール紙があるとその芯を抜いていきなり吹いたり、子供がいる家で掃除機のパイプで吹いたりすると泣かれるんですが、最後はみんなゾンビのようにやってくるんです。『それはなんだ、どうやって音が出たんだ。』ディジュリドゥのおかげでどれくらい友達ができたかわかりません。そしてそんなディジュリドゥを吹けるようになったのは、なにもない『ジョシュア・ツリー国立公園』でした。僕にとってはとても大事な思い出です。皆さんもディジュリドゥとかギターとか、ずっと覚えたかった楽器、でも全然身につかないという人は、ぜひ『ジョシュア・ツリー国立公園』や砂漠とかに電池抜きで行ってください。必ず身につくと思います。