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Let's travel! Grab your music!
Theme is... HANABI
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★
番組前半はリスナーの方からハガキ、手紙、メールでお寄せいただいた
旅にまつわるメッセージとリクエスト曲をまとめてオンエア!
後半のテーマは「花火」。
訓市が子供の頃に体験したワクワクするような花火エピソード。
そして、大人になってニューヨークで観た今でも記憶に残っている
花火体験について語る。
★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「夏の旅」「夏のドライブ」の思い出を曲とともに・・・ゼヒ!
この夏の「旅プラン」も大歓迎!
リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」
「旅で聴いた思い出の曲」「動かない旅ができる曲」などなど、
リクエストもお願いします!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Rise (Acoustic Version) / Samantha James
Samba Triste / Baden Powell
Keep On / Alfa Mist
Pagodespell / Joao Bosco
水中メガネ / 草野マサムネ
Super Rich Kids / Frank Ocean
In All My Wildest Dreams / Joe Sample
Hung Up On My Baby / Isaac Hayes
If I Ain't Got You / Alicia Keys
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
僕は本当に花火が好きで、特に日本の夏に花火というのはとても似合うと思います。もし、花火と蝉がいなかったら日本の夏は、夏って言えなくなってしまうんじゃないでしょうか?
僕の最初の花火の思い出は夏の軽井沢で、いろんな子どもと一緒にした花火のことです。商店街の入り口とかに花火をずら〜っと軒先にならべた花火屋さんみたいなのがありまして、そこで単品で打ち上げ花火やロケット花火、あとは蛇玉とか線香花火を買って、大はしゃぎで花火をしました。すごく綺麗で、近くで見たいんですが、いざ渡されるとみんなおっかなびっくり。子どもは普段は“火を使っちゃいけない”って言われているじゃないですか。花火の時だけは使えるんですが、結局それで火傷したり、近づきたいけど近づけないというのが花火の思い出ですかね。あとは家族で伊豆とか熱海の方だったと思うんですが、そのあたりに行った時に、そういうところで出くわした花火大会とかもよく覚えています。その、どこかちょっとひなびた感じと夏の匂いがするしけた夜の空気というのが、なぜか特別な気がしたものでした。
東京に住んでいる人であれば神宮の花火大会に行ったことがある人も多いんじゃないでしょうか。場所柄、高校生とか大学生にとっては必殺のデートコースになっていましたね。普段見ない浴衣を着た女の子が醸し出す違う雰囲気にどきっとした甘酸っぱい思い出を持つ人も多いんじゃないでしょうか。花火大会って普通は遠くから見たりするのでとてもロマンチックだと思うんですけど、神宮なんていうのは結構打ち上げの近くで見られるんですね。そうすると、思いのほか音がおっきくて大砲みたいでびっくりしたり、あとはカラが飛んできたりして結構ワイルドな環境で。その殻からにおう火薬のにおいに『花火って危ないんだよな』と思ったりもしました。
僕らがちょうど車の免許を取りだした頃、意味もなく延々と繰り広げられた夏の夜のドライブ。そういう時に『海に行って花火でもしようぜ。』と言うと、それだけでも特別なドライブに行く理由な気がして、あっという間に人が集まって海まで繰り出したものです。当然、ふざけてやっていたので真似してはいけないんですが、“人間蛍”と言って、お尻に花火を挟んで走り回ったり、裸で花火をするもの、ロケット花火を手持ちでやったり、それを見ては腹を抱えて笑って、夜明けのデニーズなんかでまた大騒ぎ。そのままビーチで寝てしまって、黒焦げになったこともあります。僕らにはもうそんな甘酸っぱい朝というのは来ないのかもしれませんが、僕らの子どもにはこれからそんな夏が来るんだろうなと思うと、はっきり言って羨ましいですよね。
★★★★★★★★
もちろん、海外をふらふらしている時にも花火はたくさん見ました。思った以上にやっているんですよ、夏は。ラスベガスのホテルみたいに年がら年中やってるところもありますが、やはり夏に海沿いなんかで見るのがとても好きです。海外の花火というのは日本の花火みたいに模様だとか、ものすごく凝ってるというのはないんですけど、勢いと色ですね。きっと空の色が違うから違って見えるのかもしれません。南仏なんかで見た時には本当にフランスの青春映画の主人公になった様で、甘酸っぱい気持ちに一瞬なりました。でも普通、フランス映画では隣には年上のお姉さんがいるはずですが、僕の場合は男だらけで、“甘酸っぱい”から“甘い”が取れた、ほぼ酸っぱい感じでがっかりしたことをなぜか覚えています。
最近の花火のことで覚えているのは、もう何年前になるのかな。ニューヨークにいた時のことです。ものすごい暑い夏で、毎日35度を超えており、昼間は通りを人が歩かないくらい暑くって。道に消防配管というのがあるんですけど、そこを勝手に開けて水を吹き出させて子どもがびしょ濡れで遊んでいました。普通だったら怒られるかもしれないんですけど、大人がそれを叱ることなく羨ましそうに眺めるくらい暑くて。僕らは冬物のファッションの撮影をしなければならなくて、日中なんかはとても無理ですから、早朝や夜中に撮影をしたんですけど、それでも汗が吹き出るくらい暑くて、本当に結構大変な撮影だったんです。ちょうどその撮影が終わったのが独立記念日。みんなで早めの夕飯を食べているうちにバラバラといろんな友達がその店に集まってきて、20人くらいになったでしょうか。『今日は独立記念日だ。みんなで花火でも見るか。』という話になりました。するとSOHOのど真ん中に住んでた友達が『俺の家に屋上があるからみんなで来て、そこで見ないか。』と。早速、僕らはビールをしこたま買い込んで、鉄の階段を上って給水塔のタンクがある古いビルの屋上に上がりました。ニューヨークのビルの影がまだうっすらと残る、夕暮れ時の晴れた夜でした。とにかくぬるい、しけた風がハドソン川がイーストリバーから漂っていました。そうこうするうちに『花火だ!』って。車のクラクションや雑踏から上がってくる街の騒音のはるか向こうから、花火がスローモーションのように上がっては消えていく。ほろ酔い気分で大声で話していた僕らですが、いつの間にか誰もが話すのをやめて、ぬるいビールを片手に屋根の上で思い思いの場所に陣取って黙ってひたすら花火を見続けました。何も特別なことをしたわけではない、普通の夜。けど、その時いたメンバーと会うと、たまにあの夏の夜のことを話します。『あの独立記念日の夜、覚えてる?みんなで屋上で花火見たよな。なんだかわからないけどとても綺麗で、忘れられないよ。』きっと、僕らは花火の向こう側に昔のことやもう忘れてしまった何かを見ていたのかもしれません。だからその夜をすごく印象深く思い出すんだと思います。そして、その場にいた全員をそんな感傷的な気分にさせる何かが、きっと夏の花火にはあると思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。