ON AIR DATE
2017.11.05
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

☆☆☆☆☆☆☆

訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・
追悼・USロックンロークのアイコン、トム・ペティが残した名曲5曲

TUDOR logo

Theme is... TOM PETTY

『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
前半は番組リスナーの方からお寄せいただいた
旅にまつわるメッセージとリクエスト曲をオンエア!

後半のテーマは「トム・ペティ」
先日、66歳という若さでこの世を去ってしまった
永遠のアメリカン・ロック・ヒーロへの熱い思いを語ります。
本国アメリカと日本では知名度や人気に大きく開きがある
トム・ペティがいかに愛されていたのか?

訓市がアメリカに留学していた当時、
世界的に大ヒットしていたソロ・アルバム『Full Moon Fever』からも
曲をセレクトします。


★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

リクエスト曲をオンエアさせていただいた方には
番組オリジナルの図書カード1,000円分をプレゼントします!

番組サイトの「Message」から送信してください。
手書きのハガキ、手紙も大歓迎!
日曜日の夜に聴きたい「ゆったりした曲」
「旅で聴いた思い出の曲」「動かない旅ができる曲」などなど、
リクエストもお願いします!

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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2017.11.05

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Year Of The Rat / Badly Drawn Boy

2

Beautiful Ones / Suede

3

Whenever I Call You Friend / Kenny Loggins & Stevie Nicks

4

It's You / Joyce Cooling

5

月とナイフ / スガシカオ

6

Two Gunslingers / Tom Petty & The Heartbreakers

7

You Don't Know How It Feels / Tom Petty

8

Free Fallin' / Tom Petty

9

I Won't Back Down / Tom Petty

2017.11.05

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★

今年もいろんな方がポロリポロリと亡くなっていきます。自分が育った時代をつくってきた人たち、ずっと生きていると思っていた人たちが亡くなっていくと、本当に永遠なものなんてものはないんだなと思い知らされます。まず、俳優のハリー・ディーン・スタントンが亡くなりました。スタントンは91歳で亡くなった名脇役で、それこそ出演作を数えたら100作はいってしまうんじゃないかというくらい、多くの映画に出ています。僕にとって思い出深いのはヴィム・ ヴェンダース監督のロードムービー『パリ、テキサス』。この映画を知ったのは僕がまだ小学生か中学生くらいの時で、パリからテキサスまで旅する映画なんだってボケたことを考えていましたが、実際はテキサス州にある“パリ”という小さな町の名前から取られています。テキサスというのは、大きさが日本より大きいくらいの州で、パリという町はその北東部に近いところにあります。僕が高校の頃住んでいた街からはたぶん、真東に4時間ぐらい車をとばした先にありました。アメリカに着いて地図でパリの名前を見つけたときに、僕は一人大喜びで、学校でできた友達に『ぜひ一緒に行こうよ。ドライブでパリまで行こうよ。』と言いましたが、『何を言ってるんだ?』っていう顔をされたのをよく覚えてます。彼らにしてみたら、何もない人口2万人ちょっとだったと思いますが、それくらいの小さな町に、どうして日本から来た留学生が行きたがるのか、まるで理解が出来なかったみたいです。僕がいた街というのは、アメフトが盛んな白人タウンで、カウボーイみたいな人しかいませんでしたから、ドイツ人の監督が撮ったインディのロードムービーを見ている人なんて一人もいなかったので、それもしょうがないことなんですけど。
その町まで車で走ったのは僕にとってとてもいい思い出です。何もない風景の中を走る。僕がテキサスにいたのは今からもう25年以上前のことですが、すでにショッピングモールに客を奪われた地方の小さい町というのは、目抜き通りにあったはずのお店がもう潰れていて、ときの流れが止まったような、そんな風景が延々と続いていました。どんな感じかだったかというのに興味ある人は、ヴェンダース監督がロケハンのときに撮りためた写真集『Written in the West』というのがあるので、ぜひ見てみてください。そして、パリまで走ったときは車の中でそのサントラを聴いていたわけではないのですが、僕の頭の中には最初、ライクーダーが弾くスライドギターの音色がガンガンに鳴っていました。



★★★★★★★★

僕がテキサスにあるパリという町にドライブに行ったとき、実際はどんな音楽を聴いていたのかというと、それがトム・ペディでした。本当に一回もライブを見たことがないので、一度でいいから行きたいな、できればフジロックとかに来てもらいたいなと思っていたんですが、それも叶わなくなってしまいました。トムというのはジャンルでいうと、王道アメリカン・ロック、あとはハートランド・ロックって言われるジャンルじゃないでしょうか。いわゆるアメリカの心を歌うというか、国を代表する歌い手というか。ブルース・スプリングスティーンとかジャクソン・ブラウンもたぶん、そのジャンルの中に入ると思います。アメリカの人に言わせるとそれはとても郷愁を誘う、かつての自分たちの青春とか学校にいた不良や当時の思い出を歌ったり、日本でいうと井上陽水とか浜省とかをミキサーにかけて型に出したらとトム・ペティなのかもしれません。なので、日本と本国での知名度というのは本当に違います。アメリカでトム・ペティというと、たとえそれがハードコア好きの子だったり、カントリー好きな人だったり、おじいさんおばあさん兄ちゃん、みんな「あぁ、トム・ペティっていいよな。」と。そういう立ち位置の人。特に僕がテキサスに行く1年ほど前に、バックバンド抜きで初のソロ作『Full Moon Fever』というのを発表して、それが本当に売れたらしく、当時はみんなカセットでアルバムを買ってたんですけど、僕が行った学校の友達の車の中には必ずそのカセットが積まれていました。朝の晴れた青空の下、延々と延びる1本道をトラックの窓を全開にして聞いたり、窓から手を出してドアをドラム代わりにバンバン叩いて聞く“I won’t back down”。学校帰りの夕方、道で大声をあげて一緒に歌う”Free Fallin’”。あぁ、俺はアメリカに住んでるんだな、と本当に実感する瞬間でした。トムの音というのは1本筋の通った一直線なドラムと、背中を押してくれるようなギター。そして、どこかクセのある、味のあるボーカル。トム・ペティを聞いてたときはアメフトやっているような子達も、ニューウェーブ好きも、誰も彼も一緒になって歌っていました。大きい景色に合うアメリカのアンセム。もう本当にトム・ペティの音楽というと、そう言うしかないのかなと思います。あまりトム・ペティを今まで聞いたことがないという方。もしくは、実はすごく好きで死んでしまったと聞いて打ちひしがれている方。車で、通勤の電車の中でぜひ聴いてください。特に朝。おすすめは“I won’t back down”です。俺は決して負けないぞ、俺は決して引かないぞと一人歌う曲は、月曜日の朝、行きたくないなぁと思うときに、これほどふさわしい曲はありません。そしてもし気に入ったら、いつかアメリカのハイウェイを走りながら、“I won’t back down”を聞いてみてください。ヴォリュームはフルテンで。