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訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・
パティ・スミス、盟友にして元パートナーの劇作家サム・シェパードを偲ぶ
Theme is... Literature about The Journey
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅にまつわるエピソードとリクエスト曲をオンエア!
後半のテーマは「旅文学」。
今年、惜しまれつつこの世を去った俳優で劇作家の【サム・シェパード】...
訓市が初めて目にし、旅するきっっかけとなった彼の著作、
『モーテル・クロニクルズ』について語ります。
夜長のこの時期にお届けする「読書のススメ」。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
この番組では一度オンエアした曲は、二度と選ばない!
という鉄のルールを勝手に設けていますが・・・
一年の終わり、12月ということで、
過去にオンエアした曲のリクエストも受け付けます。
今年、番組で聴いたお気に入りの曲、
過去にかかっているけど、もう一度聴きたい曲などなど、
ぜひ、お寄せください。
さらに、年末年始の「お悩み相談」特集!
旅のこと、恋愛のこと、仕事のことなど、何でもOKです。
アナタのお悩み、相談、質問を送ってください。
訓市が愛を込めてお答えします。
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてま〜〜〜す!!!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Tuesday's Gone / Lynard Skynard
Just For Thrill / Ray Charles
Kerala / Bonobo
A Sky Full Of Stars / Coldplay
Time Will Tell / 宇多田ヒカル
Romeo And Juliet / Dire Straits
Mercedes Benz / Janis Joplin
Dilemma / Nelly feat. Kelly Rowland
The River / Bruce Springsteen
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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もう12月なので暦でいうと冬ですが、今ほど読書に合う季節っていうのはないんじゃないでしょうか。夜中のピンと張り詰めた乾いた空気と、寒い無音の夜が生み出す時間というのは、本を読むのにこれ以上ふさわしいときはないと思います。ただ、気をつけなきゃいけないのは、時間の経過があまりにも落ち着いていて、気づくと明け方近く。新聞配達のバイクの音か何かで『やばい』って思ったことが僕には何度もあります。こういう時期にどんな本を読めばいいのか。僕が思うにすごく集中しやすい季節なので、普段は挫折しそうになる長編なんかに手を出すのがいいんじゃないのかなと思います。アメリカ文学だとピンチョンとか。何しろ一つの物語あたり登場人物が100人以上いて、昔のテレビ番組の名前や地名やら。もうとにかく固有名詞のオンパレードで、よほど集中しないと読めません。僕も読むとき、しょっちゅう登場人物欄に戻っては『この人誰だっけ?』と確認しながら読むんですが、とても面白いです。あとは旅文学と呼ばれるものを読んで、これからどこに行こうか思いを馳せるのもいいかと思います。では、お勧めの旅文学、どんなのがあるかといわれると、僕はいわゆる旅本、つまり作者が、それを本にして売ってやろうっていう気満々で旅に出かけた小説とか、冒険に出ようぜ!出会いがたくさんあるよ!みたいな自己啓発本みたいなものには全く興味がなくて、どちらかといえば、自分の知らない街を舞台にした物語を、旅っぽいので勝手に旅文学と呼んでいます。小さい頃は本当の冒険家や登山家たちのドキュメンタリーものがすごく好きでした。植村直己さんの北極旅の話とか、ヘディンという冒険家の『さまよえる湖』っていう湖の話や南極探検の話、そういう記録物に胸を躍らせていたものでした。そこに出てくる聞いたこともなければ、想像もつかないような不思議な食べ物や風景や現地の風習なんかの描写に、いつか自分もいろんな国を見てまわりたいなと夢見ていました。それがそのうちだんだんと、そういうドキュメンタリー本よりも、移動中に頭に浮かぶ考えを述べたものや変わり映えのない景色の中を移動するときに思い出す過去の記憶とか、そんなもの描いた本により惹かれるようになりました。今年、戯曲作家で俳優だったサム・シェアパードが亡くなったんですけども、サム・シェパードというと『ライトスタッフ』といった映画での演技を覚えている人や、『パリ・テキサス』の脚本を書いたというイメージ、ブルース・ウェバーが撮った写真集のイメージとか、いろいろあると思うんですが、僕にとってサム・シェパードのイメージというのは、彼の著作で最初に読んだ『モーテル・クロニクルズ』でした。
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『モーテル・クロニクルズ』。これはサムが書いた、モーテル暮らしが続いた70年代の終わりから80年代初頭の日記というか、いろんなメモや散文をまとめた1冊です。これを読んだときに題名と相まって、写真集以上にアメリカの風景を感じてしまい、激しい旅の欲求を感じるようになりました。それは、どこどこに行って何をしたいとか、あれを買いに行きたいとか、これを見たい、食べたいではなくて、目的自体が移動を重ねること。それ以外の目的がない旅です。寂れた町の寂れた通りにある古いモーテル。電飾が点灯してしまうような古いネオンのサイン。そういうものをものすごく見たくなってしまいました。それこそサム・シェパードのその日記に書いてあったことなんですが、僕はそれを読んで、同じことがしたいと思ったんです。僕はこのモーテル・クロニクルズで読んだことやいろんなアメリカのそういう風景を撮った写真集。そして70年代の映画を見まくったあげく、実際にやってみようと思って、モーテルを転々とした旅をしたことがあります。勝手にモーテル・カーボーイズなんて思ってましたけど。だいたい1日が終わると大通りに出て、安いモーテルを探して、ロサンゼルスとサンフランシスコの間を日々転々としながら移動しました。だいたいが看板に“カラーテレビ付き”とか“エアコン効きます”みたいな、逆になかったら困るよっていうことを謳い文句にしている、家族経営の古いモーテルばかりを狙いました。ただ気をつけなければならないのが、たまにそれを探し求めていると、治安の悪い地域のモーテルに入ってしまって、客層がもう死ぬほど怪しい。夜のプロの方たちのような女性が出たり入ったり、毛皮を着たアニキみたいな人たちがいたり。古いモーテルというのは壁が薄いんで、あることないこと全て筒抜けだったりします。それこそがスリリングで僕が求めていたものなんですが、今でもそういうモーテルは残っているんでしょうか。それを確かめに、そろそろまたどこかに行きたいなと思っています。来年こそはどこかに行きたい、でも、何をしに行っていいかわからない。そんなことを思っているリスナーの皆さんは、何か自分が知らない街を舞台にしている小説とか、そういうものを読んでみるのはいかがでしょうか。それは何も海外だけでなくても国内でもいいと思います。例えば、村上春樹さん。彼の本でも『ノルウェーの森』が好きな人が新宿とか、主人公が住んでる寮なんかを探して散歩するブログなんて書いてる人もいます。自分が好きな本というのは、どこかに行こうっていう指針と、そこでの過ごし方っていうのを教えてくれるヒントになる気がします。そして、あそこに行ったら僕も同じ風景を見たいとか、同じ飲み物を飲みたいとか。そんなことを妄想するのに、今の季節の夜ほどふさわしい時期はないんじゃないのかなって思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。