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訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・
舞台は日本のゴミの島。ウェス・アンダーソン監督コマ撮りアニメ映画『Isle of Dogs(犬ヶ島)』予告編
Theme is... Wes Anderson
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅にまつわるエピソードとリクエスト曲をオンエア!
後半のテーマは「ウェス・アンダーソン」。
現在、製作中の映画『犬ケ島』の監督ウェスと過ごした数日間...
ハードなスタジオワーク、つかの間のオフに足を運んだレストランでの
楽しいひと時など、先日訪れた「ロンドン」でのエピソードについて語ります。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
この番組では一度オンエアした曲は、二度と選ばない!
という鉄のルールを勝手に設けていますが・・・
一年の終わり、12月ということで、
過去にオンエアした曲のリクエストも受け付けます。
今年、番組で聴いたお気に入りの曲、
過去にかかっているけど、もう一度聴きたい曲などなど、
ぜひ、お寄せください。
さらに、年末年始の「お悩み相談」特集!
旅のこと、恋愛のこと、仕事のことなど、何でもOKです。
アナタのお悩み、相談、質問を送ってください。
訓市が愛を込めてお答えします。
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてま〜〜〜す!!!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Woman / John Lennon
Wind Beneath My Wings / Bette Midler
Koko / 坂本龍一
In My Life / Judy Collins
Baibaba Bimba / The Tenniscoats
In Your Eyes / Peter Gabriel
How Come You Don't Call Me / Alicia Keys
Need Your Now (iTunes session) / Lady Antebellum
Multiples Un / Frederic Galliano
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
ウェス・アンダーソン。今までも何度かリスナーの皆さんから『映画の進捗はどうですか?』という質問があったので、少しお話できればなと思います。
先日、1年ぶりにロンドンに行ってきました。理由は去年と同じで、ウェス・アンダーソンの新しい映画に関する仕事のためです。去年は空港に迎えの車が来て、もぎたての果物のようにウェスの郊外の家に連れて行かれまして、そこに監禁状態でそのまま帰国日に同じように車で空港に送り返される。僕はロンドンに住んだこともありますし、イギリス体験というか、経験は長いですが、ロンドン市内に一度も行かないという滞在は初めてでした。今回は仕事場がロンドン市内のスタジオで、近くのホテルに全員で泊まる。そして毎日一緒にスタジオに行くという予定でしたので、少なくともちょっとはロンドンを見ることができました。ウェス・アンダーソンという監督は、映画を見ればわかりますが、自分の好きなものとか美的センスというのが首尾一貫しています。ホテルやよく連れて行ってくれるレストランは、必ずちょっとクラシックな感じで働いてる人たちの感じも良く、ご飯はものすごくおいしい。決して何でも高いものっていうわけじゃなくて、地元の人も知らないような本当にいい店に連れてってくれるんです。今回は、映画の原作クレジット、原案を作ったウェス・アンダーソン、俳優のジェイソン・シュワルツマン、それと、それとコッポラ監督の息子で、ソフィア・コッポラのお兄さんであるロマン・コッポラ、そして僕の4人で集まって、同じホテルに泊まり、毎日同じものを食べてスタジオに行きました。あてがってくれたホテルも、入り口は普通のドアがついた古い建物の一角で、外から見たら表記もないのでホテルだともわからないですが、中に入ると大きな中庭もあって、古いエレベーターがある。全員の部屋を訪れて見てみましたが、どこも内装に手を加えてなくて、とてもクラシックで何だかシャーロック・ホームズになったような、そんな雰囲気のホテルでした。ウェスは僕がタバコをよく吸うのを知っているので、ひと部屋だけ裏通りにこっそり出れる隠し扉みたいのが付いている部屋を取ってくれて。夜中、そしてみんなと会う前の明け方、誰もいないロンドンの路地でひんやりした空気の中でいつもよりも美味しく感じるタバコを吸っていました。ロンドンも仕事場に行くときに歩いたので、景色だけは見れましたが、自分が住んでいた90年代からやっぱり変わったなとすごく思いました。スタジオがあったSOHOも、途中歩いたオックスフォード・サーカスのあたりも、僕がかつてほぼ毎日行ったレコード屋や安いカフェもなくなっていました。ちょうど近所を歩いたので、かつて住んでいたアパートの前も通ってみました。歴史ある古いケバブ屋さんが1階にあって、お金がないので家帰るときいっつもその匂いがして『辛いな』と思ってたんですけど、その古いケバブ屋さんすらなくなってました。なんだか自分の記憶があやふやになったような、やっぱり年をとったんだなと感じるような、なんとも複雑な気分でした。
★★★★★★★★
ウェスと一緒に作ってる映画は、英語で『Isle of Dogs』、日本語で言うと『犬ヶ島』という作品で、ストップモーションの映画です。ストップモーションとは、人形を動かしてコマ撮りで撮っていく、とても原始的なアニメの手法で、気が遠くなるほど時間がかかります。1日あって30秒しか撮れなかったり。ウェスの映画だと『ファンタスティックMr.FOX』という映画が同じやり方です。今回の話は日本のごみの島が舞台で、たくさんの犬たちと、そしてたくさんの日本人がキャラクターとして登場します。僕はこのキャスティングもやっていたので、知り合いの日本人がたくさん声をやってくれています。知ってる人も多いと思うので、このセリフを1行だけ読んだ人が誰なのかっていうのを当ててもらうのも、とても面白いと思います。制作はもう終盤で、今回は今まで撮りためたものを4人全員でチェックして直す。そしてメイキング本の取材を受ける、というのがメインの仕事でした。予想はしてましたが、朝から晩まで窓のないスタジオに缶詰。昼飯くらいは外に出れるかなと思いきや、全て出前。ウェス・アンダーソンという監督は、いわゆる天才監督として知られています。確かに天才だと思いますが、一番の才能は、やはり集中力が非常に持続するということ、本当に映画を作るのが好きで、その情熱が1ミリたりともぶれないところだと、今更ながら今回また確認しました。あんなに痩せてて丈夫そうに見えないのに、全くペースが変わらず、疲れたとも一言も言わず、しかもワンシーンワンシーンをちゃんと見て一喜一憂して喜んだり、皆の意見を聞いたり、とにかく化け物なんじゃないかっていうくらい、ペースが変わりません。こちらは一瞬たりとも気が抜けないので大変ですが、それを昼飯を食べている以外、12時間ぶっ通しでやるわけです。その代わりそれが終わると、必ずおいしいレストランを予約してくれていて、4人でそこまで歩いていって、ワインをがぶ飲みしながら今度は楽しく、他の映画の話をしたりするわけです。あの映画が面白い、このシーンにはこういう意味がある、とか。映画製作を夢見る人にとっては最高の授業だと思いますが、僕はそんな人間じゃないので、ただお酒を飲んで酔っぱらって、楽しいな、おいしいなと。そして、それが終わるとほろ酔いで皆で歩いてホテルまで帰るとていうのがすごく楽しくて、人通りの減った大通りを4人で並んでぺちゃくちゃ話して帰るんですが、普段は国も街もバラバラに住んでいる友達というのが、こうやって仕事という名目のもとに、外国で集まって合宿のように過ごせるというのは本当にラッキーだなと思います。海外は無理だとしても日本の友達ともぜひこういうことをしたいです。大人になるとそれが一番難しいですが、仕事して、夜は打ち上げる。この映画は、海外は来年の3月が公開、日本はその後を予定しているんですけど、もう少し細かい話も年が明けたら順次話せるかなと思うので、ぜひ楽しみに待っていてください。外国の方が想像でつくる未来の日本というのがとても面白くて、興味深いビジュアルが見れると思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。