ON AIR DATE
2018.03.04
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54



☆☆☆☆☆☆☆☆

訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・

ラーメンの正しい食べ方とは? 破天荒なグルメ映画『タンポポ』/a>


TUDOR logo

Theme is... ラーメン



『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから送られた
手紙、ハガキ、メールをまとめてご紹介!
旅のエピソードと、その旅に紐づいた曲をオンエアします。

後半のテーマは「ラーメン」。
訓市が「ラーメン旅」を始めるきっかけになった人物との
ユニークなエピソードとは?
ラーメンをテーマにした伊丹十三監督の名作『たんぽぽ』についても語ります。


★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2018.03.04

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Confidently Lost / Sabrina Claudio

2

Dream Sequence / Kendall Miles ? I Eat Plants For A Living

3

Bachelor Kisses / The Radio Dept.

4

Daughter / Four Tet

5

空色のくれよん / はっぴいえんど

6

Sail Away / Randy Newman

7

The First Time Ever I Saw Your Face / Roberta Flack

8

You Make Me Feel Brand New / The Stylistics

9

Something About Us / Kaminsky feat. Signe Kruzmane

2018.03.04

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。



Kunichi was talking …


★★★★★★★★

ラーメン。なんでラーメンかというと、ひとえに今年の冬の寒さです。50年ぶりですか、こんなに寒かったのは。本当に1月2月は辛かったです。朝起きて?1℃、昼間が4度とかで感覚がほとんどない。これだけ寒いと服も全く役に立たないというか、この冬はずっとNORTH FACEのヒマラヤ用というダウンを着ていました。毎日同じのを着るのが嫌だったので、洒落っ気づいて他のを着てマンションを出て、やっぱりこれは無理だと家に引き返したり。そんな感じだったので、なるだけ外に出ない生活を送ってたわけですが、食べ物も当然、体が温まるものを食べたくなってきます。そうすると、やはり汁物。結局、この冬は週の半分ぐらい麺を食べてしまっていたような気がします。麺といっても、ざるそばとかパスタではなく、やはりラーメン。どんなに二日酔いでも食べられる、そして、体と心を芯から温めてくれるスープ。こんな便利なご飯っていうのは他にないと思いますが、考えてみると、一番最初の個人的な旅体験っていうのは、いろんな場所に出かけては食べたラーメン旅だったような気がします。
僕が小学校の6年生のとき、いとこの友達に少しだけ勉強を見てもらったことがありました。その人は非常に背が高くて“キリンさん”と呼ばれていました。190cmぐらいあったのかな。キリンさんは、子供で口が立つ生意気な僕の話をとても静かに、しかもこちらが納得するまで聞いてくれる人で、結局、勉強なんていうのは少しもせずに、ただ、僕がベラベラ喋っていることをキリンさんが聞いていただけのような気がします。そんなキリンさんはラーメンが大好きで、1人でいろんなところを食べ歩いてる人でした。ラーメンを食べるためだけに電車に乗り、どこか遠い駅まで行って、ラーメンを食べてただ帰る。なんて大人な人なんだと僕は衝撃を受けました。自分のその当時の行動範囲は、自転車やスケボーで行けるところや、友達の家の駅周辺、あとは渋谷くらいなもので、ラーメンを食べ歩くために出かけるっていうことが、思いもつかないことだったのです。やがて、キリンさんは就職することになり、僕も中学に上がるということで会わなくなったんですが、最後に1冊の本をプレゼントしてくれました。たしか手渡しじゃなくて、家に届いた気がするんですけども、それはA 3ぐらいある、ものすごく大きな写真集みたいな本で、ページをめくるとラーメンが上から実寸の大きさでプリントされているんです。最初のラーメンランキングの本だと思いますが、その写真を見るとラードのテカリ具合から、背脂が雪のように綺麗にスープに散ってるところまで、完全にディテールが再現されていました。これで僕のラーメン旅が始まり、放課後や部活の帰りに母親にもらった教科書代やらなんやらは、全てラーメンとして僕の胃袋に消えていきました。



★★★★★★★★

中学のときは電車でウロウロしていましたが、高校の頃に周りもみんな免許なんかをとってバイクを手に入れたりするようになると、ラーメンを食べに西に東へと横断するラーメン旅がすごく流行りました。よく幹線道路なんかにはトラックドライバーとかタクシーの運転手さんが行く、かなりこってりなラーメンの名店なんていうのがありまして、そこへ行って油がガッツリ入ったラーメンをスープ一滴残さず飲み干す。そして、缶コーヒーを飲んで、またバイクで移動して、ほぼ寝ないで学校へ行く。そんなことをしていました。夜中のラーメンっていうのは今も酒を飲んだ帰りにたまにやってしまうんですが、さすがにこってり系が食べられなくなってきて、煮干し系が好きになってきました。今でも出張でどこか遠い街に行くと、必ず乗ったタクシーの運転手さんやそこらへんを歩いている、ラーメンを週に2・3回は食べてそうな学生がいると声をかけて、「自分が行く行きつけの店を教えてくれ。」と聞きます。そして、それはだいたい食べに行きます。特にまだ寒い今の季節、夜中にラジオとかがかかってる、ちょっとひなびた感じのラーメン屋ですするラーメンは最高です。まず、最初にスープを一口飲んで、そこから食べだすんですけども、これは伊丹十三監督が作った『タンポポ』という映画にラーメンをどう食べるかというレクチャーがあるんですが、それを小さいときに見て頭に刷り込まれてしまいまして、その通りに食べちゃったりします。皆さんは『タンポポ』って見たことありますか。トラックドライバーふたり組みが流れ着いて、潰れかけたラーメン屋を救う、ラーメンウエスタンムービーみたいな映画です。僕はここに出てくる異常にグルメなホームレスの人たちが大好きで、彼らはおいしいレストランの余ったものだけを食べていて、やたらと料理に詳しいんです。『タンポポ』はニューヨークの単館、インディー映画専門のところで上映されたときに、毎回ほぼ満員になって単館記録を作ったという映画で、ニューヨーカーでこの映画を見てラーメンを知って、いつか日本に行きたいと思って実際に行ったり、ラーメン屋で修行した人がいたり、という素晴らしい映画です。実際、アメリカでもラーメン屋はありますし、ニューヨークで酔っ払った帰りに食べたこともあります。日本のラーメン屋にも今ものすごく外国人の人がいますよね。僕の知り合いのスケーターは1日5回ぐらい食べてまして、とんこつだの煮干しだのWスープだのって言うんです。すごい舌が肥えてきたというか、昔は豚骨を食べさせたら『俺に何を食べさせたんだ、獣臭い。』って文句言われましたが。最近は健康志向の方も多いと思いますが、寒いうちにぜひ、夜中のラーメン旅に出かけてはいかがでしょうか。国内でも、国外でも。