☆☆☆☆☆☆☆☆
訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・
ベルリンの壁をすり抜けた“「音楽密輸人”」 鋼鉄の東にブツ(パンク)を運んだ男、マーク・リーダーの回想録/a>
Theme is... BERLIN
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから送られた
手紙、ハガキ、メールをまとめてご紹介!
旅のエピソードと、その旅に紐づいた曲をオンエアします。
後半のテーマは「ベルリン」。
訓市が初めてベルリンのちに降り立って感じたこと、驚いてしまったこと...
若いアーティストがベルリンを活動の拠点にする訳とは?
先日のベルリン旅の目的と、そこで過ごした有意義な体験について語ります。
★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
I'll Be Missing You / Puff Daddy feat. Faith Evans & 112
Queen Of Hearts / Greg Allman
On The Road Again / Willie Nelson
Every Time You Go Away / Daryl Hall & John Oates
Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜 / Chara
Sitting Quietly, Doing Nothing / A Reminiscent Drive
Social Sites / Cosmo Pyke
Lady Stardust / Seu Jorge
Song On The Beach / Arcade Fire
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★
先日、ベルリンに行ってきました。もう何年振りに行ったのか覚えてないくらいですが、最後に行ってから10年は経ってると思います。僕らが高校の時までは街が壁に囲まれて中が東西に分かれていて、冷戦の象徴だったところです。テレビの画面で壁が壊されていくのを見たときに、世界は今の瞬間に本当に変わっていくんだなあと初めて実感した気がします。ベルリンという名前は歴史などで色々耳にしますが、なぜか絶対に行けない遠い街だという印象だったのが音を立てて崩れて行った瞬間でもありました。ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」や、デヴィッド・ボウイの「ベルリン三部作」。そしてキン肉マンに出てくるブロッケンジュニアでしかベルリンを知らなかった僕なのですが、初めて行ったのは確か、イタリアから電車を乗り継いで行った時のことだったと思います。1日半だか2日、寝台列車に乗ったりしながら山を越えて国境を越えてたどり着いた街。西側と東側では建物が全く違うことに、当時本当に驚きました。印象に残っているのは東側にあった、当時海外の政治家とか要人と呼ばれる人たちを泊めたと言われる高級ホテルです。各階毎の窓の間が上下ですごく空いていて、中の部屋の天井が異常に高いのかなあと思っていたんですが、実は天井の上に人が入れるスペースが各階毎に設けられていて、そこに実際に人が入って客を監視したり盗聴したりしていたらしいんです。今なら電話やPCを簡単にハッキングしたりするんでしょうけど、昔は江戸川乱歩の小説じゃないですけど、人が実際に隠れていたっていうのにものすごいびっくりしました。今も当時ほどかはわかりませんけど、90年代、2000年代のベルリンっていうのは家賃が安い割りに随分大きなスペースを借りることができたみたいです。なので、僕の友達で例えば絵を描く大きなアトリエが欲しいとか、自分の家にスタジオを組んで撮影をしまくりたいというフォトグラファー、そして音楽を爆音の中で作りたいというミュージシャンなどは随分たくさんベルリンに移り住みました。まあ住んでもアートを作ってお金になる程マーケットがあるわけじゃないみたいなんですが、ヨーロッパの中心にあって、主要都市なら飛行機でほぼ1時間半で行けるベルリンという街は、そこに住んで実際にアートを作って、お金が必要ならよその街で出稼ぎをするというのに、とても便利な街でした。まあ、どのくらいなのか分からないんですけど、若い子たちと話していると、アトリエを持ちにベルリンへ行くんだっていう子たちもいるみたいで、まだまだ若い世代のアートの中心の一つなのかなあと思います
★★★★★★★★
ベルリンはドイツの首都なのですが、空港がとても小さくて日本からの直行便がありません。普通でしたらフランクフルトやミュンヘン経由で飛んだ方が早いのですが、僕はいつも使っているということでエールフランスのパリ経由でベルリンへと向かいました。深夜に羽田を出て、朝の4時ごろにパリのシャルルドゴール空港に着く。人気のないターミナルは朝早すぎてラウンジさえ開いていませんでした。しょうがないので僕は誰もいないゲートの椅子に座って窓の外が暗闇からやがて薄桃色に色づいて行くのを飽きもせず、ただ眺めていました。あとで時計を見て見たら、僕はどうやら3時間ほど窓の外を眺めていたようでして、とても無駄な時間を過ごしていたのか、はたまたとても素敵な時間を過ごしていたのか、判断に迷うところなんですが。そこからパリを立ち、朝の9時くらいにベルリンに到着しました。今回の目的は、「ベルリン映画祭」に出席するために行ったのですが、空港では映画祭のディレクターという人がちゃんと待っていてくれまして、なんだかとても大ごとだなあと一瞬思ったんですけど、まあドイツ人だからこういうところがちゃんとしているのかなと思い、迎えの車に乗り込み滞在先である「アドロンホテル」へ向かいました。このホテルは「ブランデンブルク門」の真横にある古い大きなホテルで、かなりしっかりした昔からある、多分高級ホテルだと思うんですけど、僕はベルリンにいる間じゅうここに滞在してここで基本的にプレス取材を受けて、ご飯を食べて寝るという生活を送ると、そこで言われました。まあ自由時間はほぼないわけですね。到着日だけは夕方まで自由にしてていい、そう言われていたんですけど、日本で終わらせなかった仕事を持ち込んでしまって、部屋の中でメールを打って、いろんな片付けをして、そして普段は着ないのでしわくちゃになったスーツにアイロンをかけてもらって、色々やってから気温はマイナスだと書いてあった天気予報を確認してダウンを着込んで散歩へと出かけました。すぐそばにある「ブランデンブルク門」を眺めて、そこから続く並木道をゆっくりと歩きました。森の梢にちらつく陽の光を感じながら、雪がまだ残る歩道をゆっくり歩いて行くと、金色の天使像に陽が当たってコントラストの強い影が浮かんでいるのを見ることができました。まあそれを見て当然、ヴィム・ヴェンダース監督の「ベルリン・天使の詩」のあのモノクロの景色を思い出したわけなんですけど、あの映画って最初は80年代ですかね、、、自分が見たのはそのずっと後なんですけど、いつ観たかは覚えてないのにその景色はすごい印象に残っていて、同じような景色をベルリンっていう街にもう一度訪れることができて、見て、感動できるっていうのをなんて幸せなんだと一人で噛み締めてました。その幸運を。そして、またその天使像を見ながらぼんやり考えてしまいました。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。