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2018.05.06
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54

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訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・



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訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・

ホテルリッツのヘミングウェイバー





TUDOR logo

Theme is... PARIS

『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから送られた手紙、ハガキ、メールを
まとめてご紹介!
旅のエピソードと、その旅に紐づいた曲をシェアします。

後半のテーマは「パリ」。
先日、映画『犬ケ島』のプレミア上映の為に訪れた「パリ」...
仕事の合間を利用して過ごした充実の時間について語ります。
ストリート・ファッションのゴッド・ファーザーとも言われ、
昔からの友人でもある【ショーン・ステューシーさん】と
久しぶりに再会して感じたこととは?


★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。

手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。

リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト


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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2018.05.06

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

I'm Not The Only One / Sam Smith

2

Blue Velvet / Dana Del Rey

3

Flightless Bird American Mouth / Iron & Wine

4

Svefn-g-englar / Sigur Ros

5

エスパー / mitsume

6

Lover Boy / Phum Viphurit

7

You Are Here / Yo La Tengo

8

Used To Be A Sweet Boy / Morrissey

9

A Grand Love Theme / Kid Loco

2018.05.06

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。

Kunichi was talking …


★★★★★★★★
ニューヨークの映画プレミアのあと1週間ぐらい日本にいたんですが、そのあと前々から行く予定だったハワイに3日行って、そこから今度パリに行きました。パリの映画のプレミアに来いっていう話で、最初は無視したんですけど、催促のメールが来たので、『行ってもいいけど、僕ちょっとハワイに行こうと思ってる。』って言ったら、返事のメールにハワイからパリにどう行くかっていうフライトスケジュールが貼り付けられてまして、これは逃げられないなということで行きました。『次はどこに行くんだ。』と聞いてくる人に『ハワイからパリに行く。』と言ったら、奇特な人だなと。夜明け前にホノルルの空港に向かって、ロサンゼルスまでたしか5時間半。そこから次のフライトまで5時間以上空港で待つことになったので、空港のラウンジにあるソファーで横になったまま気絶してました。そして、そこからまた10時間越えのフライトでパリに行く。日付変更線を越えてないのに、出発した日と着く日が違うのってかなり切ないですよね。純粋に1日損してる。結局、パリに着いたのは夜で、そこからウェス・アンダーソン監督と夕飯を食べに行きました。今回取ってくれたホテルは、フランスの友達に聞いても、『聞いたこともない名前のホテルだ』って言われたので、またすごく古くて、ウェスっぽいホテルなのかなと思ったら、なんのことはない、彼の家のほぼ隣のホテルで、どこに行くにもまず自分の家に来てから一緒に行こうっていうのに、ものすごく便利なホテルでした。面白かったのが、パリにいる間、毎晩どこに行くにも僕がまずウェスの家に行って、そこで2歳になる娘と僕が遊んで、その間にウェス夫妻が、ちゃんとした服に着替えて用意をして、玄関でベビーシッターの方に娘を預けて、夜早く寝ちゃいますから『おやすみ。また明日の朝ね。』と。僕も一緒にバイバイをするのが日課になっていたんですが、僕が帰国した日の夜に別件でまた、ウェス夫婦は、夕飯に行かなきゃいけなかったらしくて、外出用の格好して玄関で『おやすみ。また明日ね。』って娘に言ったら、『ママとダダは、訓とお出かけ。』と言われたらしいです。夫婦が出かけるというと、僕がどっかに連れてくっていうふうに頭に刷り込まれてしまったみたいで、2歳児にそういうふうに思われるのってどうなのかなと思ってるんですが。
最初の日、ご飯を食べた後は、パリの高級ホテル、リッツの中にあるヘミングウェイバーというところでまた友達と飲みました。高級ホテルで飲むのねって考えるリスナーの方も多いかと思いますが、一生泊まれない、そして、泊まることがないであろうホテルですが、ヘミングウェイが昔ずっと飲んでいたという素敵なストーリーがある、こじんまりとしたバーです。ここはお酒ももちろん高いですが、宿泊料金に比べれば何とかなるレベルで宿泊客でなくても飲めるので、こういう旅先にいるときぐらい普段行かないようなところでお酒とともに、自己満の気分に酔いしれるっていうのも悪くないんじゃないかと思います。普段の行動と全く違うことをする良い機会っていうのが旅の醍醐味の一つかなと思います。



★★★★★★★★
パリの2日目は二日酔いでしたが、朝からショーン・ステューシーという古い友達と朝ごはんを食べました。場所はカフェ・ド・フロールです。こうやって言うと高級志向だって思われるかもしれないですが、これはサン=ジェルマン・デ・プレにある古い老舗のカフェで、観光名所なんですけど地元の人も行くとても良いカフェです。せめてパリに来たときぐらいはこういう古めかしいカフェに行きたくて、今回も結局、毎朝ここにいました。場所柄、偶然、友達と会ったりする場所で、僕がパリの中で一番行ったことのある所かもしれません。Instagramとかをやっていてどこに向かうかをポストすると、必ずそれを見た友達たちが、今この街で何をやってる、というのを教えてくれたりするんですが、今回はそれを見たショーンが『僕もおんなじときにパリにいるから、ぜひ会おう』と、3年ぶりに会いました。彼は今年64歳。自分の名前のついたStussyというブランドを80年代に始めて、ストリートウェアのゴッドファーザーみたいに言われている人で、そのブランド名を聞いたことがある人も多いと思います。この人は40歳手前でさっさと自分のブランドを売って、子育てをして隠居生活みたいなことをしていたんですが、最近、子供が大きくなって、また旅をしだしました。そして、3年前に若いフランスのサーファーたちとフランスで意気投合して、いろんなものを処分して、今、冬はカリフォルニア、夏の間ヨーロッパを旅するっていう生活を送っているみたいです。朝、2人でコーヒーを飲みながら、『これから初めて借りたパリのアパートの家具を探しに行くんだ。』とか、『夏は息子たちが来るんで、車を借りていろんなビーチに行くんだ。』とか、そんな話を目をキラキラさせながら話すんです。日焼けでシミだらけで、最初はショーンも老けたなと思いましたが、話を聞いてるうちに僕と同い歳ぐらいに見えてきて、こういう歳の取り方ってすごくいいなと。『僕は英語圏じゃないところに住むのが初めてだから、いろんなことがわかんなくて大変なんだけど、それがすごく楽しい。』と言ってるのがすごく印象的でした。
夜はフランスでの映画のプレミアがありまして、フランス語吹き替え版をしている俳優さんたちの舞台挨拶に一緒に立たされたものの、何を言ってるのか1ミリもわからず、固まった笑顔で僕とウェスは立っていました。こういうのって海外の完全なアウェー感だよなと、噛みしめながらいたんですが、打ち上げのディナーは知ってる人たちもたくさん集まって、じゃんじゃかワインだウイスキーだ日本酒だって出てきて、すっかりラフな飲み会と化しました。そして、やっぱりフランス人てなんかいいなと思いながら、泥酔でお迎えの車に乗ってホテルに帰りました。酔ってれば酔ってるほど、車の窓から見えるパリの街というのは本当に綺麗なんです。街頭がいつもの2割増しでにじんでますし、窓を開けて、ああ、いいな。街の真ん中に川が流れてるのって、なんて素敵なんだろう。端に佇んで語り合ってるカップルの、なんてかわいいこと。本当にパリってどんな季節に来ても美しいしロマンティックだなと思います。いつか僕も、アパルトマンかなにかを借りて、ここで小説か何か書いて、昼間公園でワインを飲んで、なんていう生活がしてみたいなと2ミリぐらい思っているんですが、この人生で叶うことはあるのでしょうか。