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訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・
「クールジャパン」はこんなにひどいことになっていた
Theme is... COOL JAPAN
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半はリスナーの皆さんから送られた手紙、ハガキ、メールを
まとめてご紹介!
旅のエピソードと、その旅に紐づいた曲をシェアします。
後半のテーマは「クールジャパン」。
インバウンドの増加を目指して進められているブランド戦略について、
訓市が持論を展開します。
外国人にとって本当に魅力的な日本の在るべき姿とは?
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」にまつわる
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト、大募集!!!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Valdez In The Country / Donny Hathaway
Lift / Radiohead
Wings Of Speed / Paul Weller
The Blower's Daughter / Damien Rice
天使たちのシーン / 小沢健二
Walk On Water / Eminem feat. Beyonce
Come With Me / Paprika Soul
Whispering Pines / The Band
Wonderful Tonight (Live Vers.) / Eric Clapton
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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『クールジャパン』僕はこの言葉が個人的に、そして、前世レベルで大嫌です。理由は、“わかってないな”と思うから。何かを見て『これはクールだ』って、特に外国人の方がよく言ったりすると思いますが、“あるもの”があって、それをクールかどうか決めるのは、あくまでそれを体験した人とか、外部の人であって、作る側の人間ではないはずなんです。音楽でいうと、例えば、今日僕はかけた音楽を、ラジオで聞いているリスナーの皆さんが『訓市、今日クールな曲をかけたな。』と思われるかもしれませんが、その曲を作った本人たちが、『僕が作る音楽はクールな音楽です。』と言ったらどう思いますか。僕だったら絶対に聞かないです。
なんでこんなに『クールジャパン』に噛み付いているかというと、先日、ニュースを読んでいたら、国が進めていた『クールジャパン』というプロジェクトがありまして、いろんな団体を作って大量の税金がつぎ込まれていたらしいんですが、そのほぼ全部が無駄になっていて、しかも誰も責任を取らずにいる。そして、それが民間とかに叩き売りされていて、その金額というのは森友学園の値引きなんかよりかはるかに大きい。金額でジャッジするわけじゃないですが、クールなものを作ろうと、日本に住んでいるお役人さんやその予算に群がる大人たちに任しておいて、うまくいくわけがないじゃないですか。これは“日本のクールなものを延ばしてこう”というプロジェクトだと思いますが、それは今以上に観光客とかを増やして、日本の景気を刺激していこうということだと思うんです。だから、もし『クールジャパン』というプロジェクトを立ち上げるなら、日本に来たことがある外部の人たちを集めて、どうしてこれが素敵だと思うのか、自分たちが無価値だと思っていたものをすごく有難がる人たちに、どうすればそういうふうに物を見てもらえるかとか、そういうことを聞くというのが『クールジャパン』だと思うんです。というのも、いま日本だけじゃなくて、世界中で同じようなことが起きてると思います。僕らがどこかに出かけて感じるクールなものというのは、だいたい昔からあるものだったり、現地の人が、『何でそんなに僕らが喜ぶのかわからない』というものだったりすることが多いと思います。でも、なぜか国は新しくクールなものを作りたがって、多額のお金をかけて、そういう昔の物を壊してどんどん新しくしていきます。僕はパリの街をとてもロマンティックだと思いますが、もしパリの街に新しいガラスやコンクリートの巨大なオフィスビルとかモールがどんどん建てられて、川沿いとかに広告の看板が建って、街角には液晶のディスプレイで広告が流れていたら、それでも人はロマンティックだと思って、パリに行くんでしょうか。最近、とうとうカストロ兄弟が政権から離れたキューバ。僕の周りにもいつかキューバを旅してみたいと思っている人がまだまだたくさんいます。もちろんあの国は日本とシステムが違いますし、住んでる人たちにとって、その変化というのが必要で大事なことかどうかというのもよく考えないといけないですが、観光客目線で言わせてもらうと、ハバナの街がもし、世界中にある広告で埋め尽くされて、古い車が全部新車のタクシーに変わったとしたら、彼らが行きたい街としてい続けられるのかな、と思います。
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もうすぐ公開される映画で、この番組でも何度かお話しているアニメーション映画『犬ヶ島』。これは60年代に想像した未来という、どこが懐かしいレトロフューチャーな感じの世界観で、架空の日本の街・メガ崎市というのが舞台となっています。それは監督であるウェス・アンダーソンが趣味であるリサーチを駆使して徹底的に調べた日本と、彼の想像から生まれた世界が混ざったものです。だから、この作品に出てくる日本というのが完全に正しい歴史の正しい日本を表しているかといえばそうではないですし、楽しみ方としては、世界的に評価されているビジュアルを作り続けているウェスという監督が、日本という国を舞台にして、どう日本を料理したのか。それが世界中のファンも興味津々で待っていてくれたポイントですし、僕自身にとってもそうでした。ウェスは今まで日本を1回しか訪れたことがないんですけど、そのとき、僕はずっと一緒にいていろんなところを徘徊しました。新宿の昼も夜も、渋谷も中目の高架下とか下町も行きましたし、そのときの思い出というか、彼の印象に残ったものが確実に映画の世界観に残っている確信があります。まだ今ほど外人観光客がいないゴールデン街に行って、ウェスが『面白い街』だねと言っていたときの印象というのは、この映画の60年代を舞台にした未来という世界観に確実に生きていると思いますし、ちょっと横道に入れば、古い店や建物が並んで、それと新しいものがちょうどいい塩梅で残っていた東京。ウェスが来た頃に日本を訪れた外国人たちが、この新旧一体となったカオスな街、東京をとてもクールだと感じたみたいで、それが口コミで伝わったことで、今この観光国家みたいになってきている日本を作っていると思います。でも、オリンピックを前にピッチを上げて開発が進む東京というのは、10年後一体どうなってるのかなと僕は思います。オリンピックの後に景気が下がるんじゃないかとか、地価が下がるんじゃないかとかそんな話をよく聞きますけど、僕が心配するのはもっとその先の東京の景色です。いま日本を訪れる人たちが魅力だと感じるカオスというのを10年後、20年後、そして100年後まで保てるんでしょうか。そういうふうになったときにどう見えるかをちゃんと考えた建築物を作っているんでしょうか。そして、そんな未来でも東京を舞台に映画を撮ってみたいなと一線級の監督が思ってくれるでしょうか。僕は今のままでは絶対にそれが叶わないんじゃないのかと思います。なぜ日本を面白いと思うのか。そして、逆に海外に行ったことがあるリスナーの皆さん。自分の好きな街がなぜ好きで、どこに魅力を感じるのかというのをぜひ考えてみてほしいです。じゃないと、僕らが旅に出る理由の一つが、世界中から失われていくんじゃないのかなと僕は思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。