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訓市がantenna*からセレクトした記事は・・・
ウェス・アンダーソン&野村訓市、クリエイター2人の友情が生んだ“犬ヶ島”誕生秘話
Theme is... 犬ヶ島
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半はリスナーの皆さんから送られた手紙、ハガキ、メールを
まとめてご紹介!
旅のエピソードと、その旅に紐づいた曲をシェアします。
後半のテーマは「犬ヶ島」。
約3年にわたる製作期間を経て完成した映画『犬ヶ島』...
原案、キャスティング、出演など本作に深く関わってきた訓市が
完成に至るまでの苦労と喜びについて語ります。
日本人だからこそ分かる見どころとは?
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」にまつわる
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト、大募集!!!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Any Fun / Coconut Records
Holding Back The Year / Gretchen Parlato
Little Person / Jon Brion
Hide And Seek / Imogen Heap
Love Space / Love Tambourines
Wolf On The Breast / Cocteau Twins
You're Not The One I Know / The Sundays
Don't Break My Heart / UB40
I Won't Hurt You / Anja Garbarek
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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映画『犬ヶ島』。この番組でもベルリン映画祭のことや、ニューヨークでのプレミアなど、ずっとこの映画にまつわる話をさせていただきましたが、そんな映画も今月の25日から、やっと日本でも公開になります。それは本当に嬉しいことで、この映画は日本が舞台だし、出てくる人物もほぼ全員日本人で日本語を話すので、監督のウェスも「世界で一番この映画の中身を理解できるのはきっと日本人だ」と話していました。テキサスのヒューストンの近くで生まれて、昔から日本映画や文化に興味があった監督のウェスが、1回しか来たことのない日本。その自分の記憶と想像力をミキサーで混ぜ合わせて作った映画です。僕は若い頃にアメリカンカルチャーにすごく興味を持っていて、勝手にいろいろ調べたり、実際に行って、“こうなんだ”という、良いとこだけを見て頭の中で勝手なアメリカ像を作り上げたことがあります。外国に興味がある方たちの中にも似たようなことをしたことがあるという人も多いと思いますし、普通はそこで終わってしまうと思うんですが、ウェスはそれを実際に作品として一つの形にしてしまったわけですから、素直にすごいなと思います。とはいえ、そのために散々働かされて、ものすごく時間もかかりました。今こうやって振り返ってみると、この映画のために何回ニューヨークに行ったかもうわかりませんし、ウェスの家で長い話をして、いい加減ご飯を食べに行こうって家を出ても、ずっと映画の話をしている。やりとりしたメールの数を数えようと思ったんですけど、かかわる人数が多すぎて、何千という数になっていました。しかもそれは、夜の12時以降にやりとりされていて、ほぼチャット状態。ニューヨークに呼ばれてスタジオに行ったら、いきなりアメリカに住む日本人キャストの人たちのセリフをその場で作って、一緒に喋り方の指導したり。考えてみれば、僕はこの映画で声優もやったんですけど、その悪い市長さんの台詞を、今こうして喋っているこのJ-WAVEのスタジオで録音もしました。番組が終わった後、スタッフの皆さんに「すいませんけど、ちょっと録音したいことがあるので、録音してそれを後でデータで送ってもらえますか」と。スタジオの中に入っていきなり僕が、おっきい声でわけのわからない政治家の演説みたいなことを喋るので、ガラス越しにみんなポカーンとしていて、「これは何なの?」と言われても、説明もあんまりできないので、「ちょっと必要なんだよね」って。必要なんだよねって言われても、演説が必要な人ってあんまりいないと思うんですけど。そんなこともたくさんありました。映画のためにいったい地球を何周したんだろうなぁ。たぶん、10回以上したんじゃないんでしょうか。働く人たちは国籍もみんなバラバラのなか日本映画を作る。監督やプロデューサーはアメリカ人とカナダ人。オフィスがパリにもあって、撮影はイギリス。映画というのは総合芸術だって言われますけれど、良いものを作るために世界中から人が集まるというのはすごく素敵なことだなと思います。
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僕はずいぶんと旅をしてきたんですけど、それは人生において何かを買ったりするより、旅をして自分が実際に何かを経験するということをより大事に考えてきた結果だと思います。どこかに行くきっかけが、もちろん映画だったこともありますし、それが本や音楽だったこともあります。そして興味を持った国や街について、見たり聞いたりするだけでは物足りなくなって、実際に自分でそこに行ってみたいっていう欲求が人よりかは大きかったのかもしれませんし、とにかくじっとして我慢することができなかったんです。どんなに貧乏旅行でも、行く前にどれほどひもじい生活をしても、それを実現するためなら、遠くに行って本物が見られるなら、全く苦労とか辛いと思ったことは、当然ですがありません。それに対して、映画はある意味、逆なことです。どんなにリアルに見えるシーンでも、それは完全に作られたものです。例えば、フランスを舞台にした話でも、ブラジルのアマゾンを舞台にした話でも、未来でも過去でも、それっぽく見えても、決してそれは実際の出来事ではありません。映画館の席に座って2時間ばかり知らない人たちと一緒に、まるで動かない旅をするように映画をたのしむ。でも、そういう動かないまやかしの旅というか、2時間夢を見させてくれる映画というものが、つくるためには実際の旅をものすごく必要とするっていうことを、今回、初めて実感しました。世界中から人が集まって行ったり来たりを繰り返して、とにかくやたらと時間はかかるし疲れるし、こんなことをずっとやっていたら本当にあっという間に自分の人生が終わってしまうなと思ったりもしましたが、人が集まって一緒に旅をしながら何かを作るというのは素晴らしいことだなとも思いました。なんでしょう、世界規模の文化祭が3年にわたって繰り広げられているというか、そんな思い出深くて一生懸命作った映画、ぜひ機会がありましたら皆さんも見てみてください。登場人物がとにかくたくさんいて、台詞が1人1行の人も多いんですが、その声を実際に誰がやってるのか当てたりするのもとても面白いんじゃないのかなと思います。松田龍平と翔太の松田兄弟とか山田貴之くんとか。実際、どこで何のセリフをやってるのかってわかんなかったりすると思いますが、それを探すことができるのも日本人の皆さんだけだと思います。それにしても、彼らに声優を頼んだときも、脚本を見せることすらできなかったですし、役の設定とその台詞だけ渡したわけですから、録音するのはすごく大変だったと思います。でも、観ると全体を把握してないはずなのにちゃんと喋ってるから、さすがプロの俳優ってのは違うなと、感動しました。そして、僕もこの映画の中で悪役の市長の声をやっています。普段、リスナーさんたちからよく、「最初は低くてブツブツ喋る声だと思っていた」とか、そんなお便りをいただきますが、そんな僕が、一応、小芝居なんかをして、いつもより抑揚のある怒鳴るような声で話しています。それをぜひ、見ていただいて、「野村君もやればできる子なんだね」って思ってもらえたら、とても嬉しいです。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。