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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
ウォーホルもみんなも知らないバスキア「原点の2年間と晩年」高校・無名時代の“はじめての相棒”が明かす
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Theme is... GRAFFITI
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅にまつわるエピソードと、その旅にまつわる思い出の曲をお送りします。
お題を頂戴して訓市がセレクトした曲もお楽しみに!
後半のテーマは「グラフィティ」。
ストリート・アートの一つのスタイルとしてお馴染みの「グラフィティ」...
訓市が初めて「グラフィティ」を意識した意外な場所とは?
ロサンゼルスやニューヨーク、そして、世界各地の大都市で目にした
「グラフィティ」から感じたことについて語ります。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
She's Got You High / Mumm-Ra
Something In The Air / Thunderclap Newman
Doolin Dalton / Eagles
Like Someone In Love / Bill Evans
祝日 / カネコアヤノ
Please Don't Go Girl / New Kids On The Block
I Need Love / L.L.Cool J
Mike Mills / Air
Downtown Train / Everything But The Girl
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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先日、ストリートアートとして出てきたアーティスト、バンクシーの話やニューヨークでの『Beautiful Losers』という展示会の話をしたところ、いろんな友達に『懐かしいわね』とか、『僕らが小さいときは街にたくさん絵があったよね』なんていうメールをもらいましたので、ちょっとその話をしてみようかなと思いました。ストリートアートの形として最も知られているのが「グラフィティ」だと思います。壁に描かれた落書き、と乱暴に言えば説明できるかもしれません。グラフィティというのはどこに描くかがすごく問題で、人が所有している建物、住んでいる家、店のシャッターとかに勝手に描くのはもちろん犯罪で、見つかったら逮捕される違法行為です。なので、それをやれとはとても言えませんし、実際、迷惑している人もたくさんいると思います。が、僕は昔からそんな絵や言葉を見るのがすごく好きでした。グラフィティの最初は自分たちの名前や仲間の名前をスプレーで描く「タギング」というものなんですけど、そうやって考えると、僕が最初にタギングに触れたのは海外ではなく、家の近所です。井の頭通りや五日市街道なんかのコンクリートの壁や、ちょっとしたトンネルに暴走族のお兄様たちが自分の族の名前をスプレーで一筆書きするわけですが、子供心に見ても漢字が異常に上手い。最初は本当に小さかったので、習字の先生たちが勝手に壁に描いてるんじゃないかと、そう勘違いするほど上手かったです。不思議なのはアメリカやヨーロッパのグラフィティも、ギャングあがりや不良たちがよくやるんですけど、彼らもやたらと字が上手いんですよね。途中で気づいて悩んだんですけど、不良っていうのは皆んな字が上手いのか、それとも、所構わず描きまくるから上手くなるのか。もしくは、上手い人しか描かないからみんな上手いのか。大きな謎です。僕が初めてアメリカに行ったのは80年代の後半で、ちょうどオリジナルの世代が入れ替わる前の、まだ黄金期だったと思います。ロサンゼルスのベニスビーチは観光地であると同時に物騒な場所で、裏にはギャングなんかが住んでいたんですが、あそこに初めて行って壁に描かれたグラフィティを見た時は、もう興奮のるつぼになりました。『This is America!』みたいな感じですよ。そこに描かれているのはその地区を縄張りにするギャングの名前だったり、死んだ仲間の似顔絵や追悼する言葉だったりといろいろなんですが、僕はとにかく文字、タギングにハマりました。いろんなスタイルがあるんですけど、それを見てはせっせと真似をしたりしてました。ロスの高速脇のコンクリート塀なんかには、いろんなタギングがされていまして、僕にとってはもうそれがただのギャラリー状態。そして、その次に行ったのがニューヨークで、ニューヨークの地下鉄というと昔は本当にグラフィティだらけだったんです。それが取り締まられて、減ってなくなってきたような時期でしたけど、それでもまだちょっとありまして、感動しました。落書きがアメリカではこんなにかっこいい。日本の山手線に描かれてるのは、相合傘とかそんなものしかなかったです。
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アメリカに行って本当のそういう壁の絵とかを見てからものすごい影響を受けまして、とはいえ、夜な夜な家を抜け出して壁にスプレーで描いてたわけじゃなく、僕の場合はもっぱら自分の学校のノートでした。名前を含めて全部そんな風になってしまいまして、誰も読めない。『お前ラッパーなのか?』って言われましたけど、ほっといてくれって思うくらい描いてました。グラフィティが面白いなと、違った目で見るようになったのはそれから数年経って、いろんな所に旅に出掛けるようになった時です。どこの大都市に行っても必ず同じような絵が鉄道脇や高速、ダウンタウンのビルの横の壁に描かれていたんです。ネットがまだ普及してなかった時代に、どうやって皆んながそのスタイルを学んで広がっていったのか、とても不思議な気がしましたが、とにかく必ずあったんです。イタリアのミラノ駅の近くのターミナル駅なんてグラフィティだらけでしたし、ドイツでもイギリスでも、小さな島の街にもありました。やっぱり地元の不良少年たちや、そういう絵を見て、自分も大きな絵を描いてみたいと願う男の子たちが、アメリカ生まれのその文化を世界中に広めたんだと思うと、なんだかとても痛快な気分になったものです。なんでかというと、世界中に生きる同年代の若者たちが言葉は違えど同じものに反応して、同時多発的に広げていった証だからです。もちろん、先ほど言いましたように問題は山積みで、勝手に描けば捕まる犯罪行為です。街を汚してると怒る人もいます。ただ、そうやって路上で絵を描き始めた若い子たちが、例えば、そこからギャラリーへ活動の場を移したりして、アートの世界で認められて成功した人もたくさん出ています。もちろん、そういう商業的な世界に背を向けて、ずっとアンダーグラウンドで好きなことだけをする人もいますが、そういうアーティストとして、また1人の人間として、証を作っていける学校としての路上っていうのはすごいなと思いますし、どこかで応援したいという気持ちも確かにあります。いろんなアーティストがいて、例えば、世界中を旅して同じ絵をいろんな場所にこっそり描く人もいるんです。旅行中に歩いていて、ふと街角を見上げた時にそんな絵を見つけたりすると、呆れるよりも、こんな所までちゃんと来てやってんのかと、感心してしまったりする自分もいます。今では自治体が“ここでは描いていいよ”という、絵の開放区とかもあったりするので、そういう所が増えていけば合法的にいろんな人のいろんな絵が見られるようになるのかなと思います。でも、若い子は今でもわざと警備の厳しいお店のガラスに、どうやって隙を見つけるんでしょうね。神業のようなスピードで描いたり、あと、ニューヨークとかで前に見た時には無かったのに、たぶん誰かが描いたんでしょうけど、ものすごい高いビルの端っこにグラフィティが増えていていたり。昔会った子も、命綱なしで30階を超える所で描いてる子がいましたけど、事故のないよう、問題を起こさないようにやってほしいものです。でも、やっぱり彼らのそういう街の落書きと言っていいんでしょうか。僕は好きで、どこへ行ってもキョロキョロキョロキョロ新しいものを探してしまいます。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。