★★★★★★★★★★
訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
何をしてもダメ有名ハリウッド俳優&監督の苦境 『カーズ』と重なる境遇
★★★★★★★★★★
Theme is... Paris, Texas
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★★★★
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅にまつわるエピソードと、その旅にまつわる思い出の曲をお送りします。
お題を頂戴して訓市がセレクトした曲もお楽しみに!
野村訓市が経験した旅の話と、
その旅にまつわるミュージックストリームをお届けしています。
選曲・構成は野村訓市監修、合い言葉は「ここにいても旅はできる」。
忙しい日常を忘れて、心の中で旅に出てみませんか?
番組の前半はリスナーの皆さんから届いたメッセージと
リクエスト曲をオンエア!
後半のテーマは「パリ, テキサス」。
先日、弾丸で訪れたパリで再会した映画監督ウェス・アンダーソンや
初対面のオーウェン・ウィルソンと語り合ったこと。
訓市が10代の頃に憧れた永遠のヒーローであるマット・ディロンと
予期せず出会った瞬間... 訓市は?
★★★★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Sometimes / My Bloody Valentine
La La (Means I Love You) (Hiroshi Fujiwara & K.U.D.O. Remix) / Jackson 5
Good Together / Honne
Una Somma Di Piccole Cose / Niccolo Fabi
ある光 / 小沢健二
When You Were Mine / Lambchops
Here / Pavement
Carissa / Sun Kil Moon
Mayonaise / The Smashing Pumpkins
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★★★
「パリ, テキサス」。・・・とは言っても、テキサスにあるパリという街についてでも、映画についての話でもありません。先日、パリに行ってきました。9月の後半から10月の頭のパリというといわゆるパリコレの時期で、人がごったがえしてる時なんですが、ちょうどその最終日に着きました。僕はコレクションの時期というのがどちらかというと嫌いです。どこも混んでるし、何もかも高い。しかも、服を着るというよりも服に乗っ取られたような人がたくさんいて、なんだか落ち着かないんです。それでもパリという街はやっぱり綺麗な街ですし、行けば必ず、よかったなぁと思うんですけど。今回は2泊という弾丸旅行で、2日目の午後は仕事だったんですけど、それ以外はフリーということで、初日はホテルに荷物を置くとすぐウェス・アンダーソンの家に行って、その後ご飯を食べに行きました。ウェスは今年の頭、『犬ヶ島』のプロモーションやらなんやらで4ヶ月ぐらいしょっちゅう会っていたのですが、そこから突然、4ヶ月会っていなかったものですから、僕らは再会をとても喜びました。ウェスが話したことといえば、「早く日本に帰りたい」だの、「またおいしいウニを毎日食べたい」だの、「お酒が美味しかった」だの。それから、いま構想中の新しい映画の話をしながらパリの道をてくてくと歩いて、レストランに向かいました。そこには友達がいるということで、“誰がいるんだろう”と思っていると、オーウェン・ウィルソンとその兄貴がいました。オーウェンは皆さんも聞いたことがあると思いますが、人気俳優です。もともとはウェスの大学時代の同級生で、ウェスの初期の映画の脚本を一緒に書いたりもしている、いろんなことができてしまう才人。これまで散々オーウェンの話を聞いてきたんですが、今までどういう訳かなかなか会う機会がなくて、今回が初めてでした。ウェスの映画のことはもちろんのこと、ベン・スティラーと出ていた『ズーランダー』という映画とか、ウッディ・アレン監督の『ミッドナイト・イン・パリ』といったウェスの映画以外でもオーウェンの映画をたくさん観ていたので、突然レストランでひょっこり会ってとってもびっくりしましたが、それは素敵で面白い人でした。彼の映画を観たことがある人なら分かると思うんですけれど、彼はとてもとぼけたゆっくりした喋り方なんですけど、それは普段も全く同じで、動きもすっとぼけてます。僕らがタバコを外に吸いに行くと、彼は吸わないんですけどいきなり真後ろに立ってたりとか、とにかく不思議な人です。特に僕が気に入ったのは、兄弟揃って完全にテキサスの英語を話すんです。ゆっくりとした、それでいてすごく巻き舌というか、発音をちゃんとする古い英語の発音です。ウェスにはもうそれほどテキサス訛りはないんですけども、ウィルソン兄弟にはそれがあって、しかも独特の間で話すので、この兄弟と一緒に話していると周りもつられてどんどんテキサス訛りになってくるんです。僕も久しぶりに、“自分、テキサスの喋り方になってるぞ”と自覚するほど引っ張られてしまいました。パリのど真ん中で、しかも、薄暗いライトのレストランの中で、テキサス出身の男とお酒を飲みながら話す。“これぞ本当のパリテキサスだ!”と1人興奮していたのですが、酔っぱらいながらも“素敵だな”と思ったのは、どこに行ってもどこに住んでもどんな人たちと働いても、自分のルーツを隠さずにそのまま生きてるっていうのがとってもいいな、と。パリだけじゃなくて、ニューヨークでもロサンゼルスでも大きい街に行くと、必ずそこの出身者っぽく、ニューヨークだったらニューヨーカーになろうとして、喋り方や服装を変えてルーツを消す人が滅茶苦茶多いです。そんな中、パリのど真ん中にいてもテキサスむき出しで歩いて喋って堂々としているこのオーウェン・ウィルソンと兄ちゃんが本当に素敵に思えたんです。
★★★★★★★★★★
パリは2泊しかしなかったんですけど、なぜだかハリウッド2日間!みたいな滞在になってしまいました。ウェスとオーウェンとご飯を食べたあと、日本だと『トゥームレイダー』の主人公とかで知られている女優のアリシア・ヴィキャンデルの誕生日会に行きました。彼女は今年の夏前に実は、日本で2ヶ月ぐらい映画を撮っていたんです。その時に友達の紹介で「面倒を見ろ」って言われて、彼女は3日撮影して1日休みというペースで撮っていたので、つまり3日おきぐらいに一緒に飲んでました。「今日は何やってるの?」「あなたの友達はどっかでレコードを回してないの?」とか、あとはカラオケに行ったり、すっかり仲良しになりました。そのアリシアの30歳の誕生会が偶然あったので、そこに行ってたらふく飲んでぐっすりと寝て、夕方からがっつり仕事をして、夜はまたウェスと夕飯を食べに行きました。「友達が遅れてくるから席を空けといてくれ」と言われてパクパク食べていると、後から遅れて二人組が来ました。“歳とった人だけど、なんか見たことあるぞ”と思ったら、それはなんとマット・ディロン。ちょうど自分が出た映画のプレスでパリに来ていたらしいんですが、僕はウェスの友達に会って初めて固まってしまいました。なぜなら、マット・ディロンは僕ら40代の野郎にとっては青春映画である『アウトサイダーズ』や『ランブル・フィッシュ』、それからガス・ヴァン・サント監督の『ドラッグストア・カウボーイ』とかで大人気で、みんな死ぬほど映画を観てました。洋服からタバコの吸い方まで真似しまくった、同時代のヒーローの1人だったんです。が、自己紹介も「俺、マット」「俺、訓」みたいな感じでお互いフルネームを言わないので、本人が横にいるにもかかわらず、気づくのに数分かりました。本人はブルース・スプリングスティーンみたいな渋い声の渋みある、もうお酒も一滴も飲まなければタバコも吸わない健康的な親父でした。「日本ではいまだにあなたと同じような煙草の吸い方をして、『ドラッグストア・カウボーイ』を観てからベッドの上に帽子多くのは縁起が悪いと言って絶対に置かない。置いた奥さんと大ゲンカしたこともあるっていうような人がたくさんいるぞ」と言ったら、すごく嫌な顔をして、「タバコは良くないからやめろ」と言いました(笑)。次の日、もう帰る日だったんですが、オーウェンから連絡が入って、「自転車でぶらぶらしているから、コーヒーを飲んで散歩に行こう」と誘われました。会って2度目だったんですけど妙に引っかかる人で、本当は買い物でもしようかと思ってたんですけど、オーウェンとの散歩の方が面白いと思ってそっちに行きました。パレ・ロワイヤル近くで待ち合わせして、なんとなくリパブリックというスケーターが集まる広場の方まで行くことに。テキサスの話やフォトグラファーであるお母さんのこと、ウェスの若い頃の話から、オーウェンの離婚話まで、訳の分からない話を永遠としながら歩きました。そして、リパブリックに着くと、そこで撮影をしているスケーターの子たちがすぐオーウェンに気がつきました。彼はもちろん俳優として知られていますが、昔スパイク・ジョーンズが撮ったスケートビデオに、すごくふざけたスケーター役でオーウェンもカメオ出演してまして、スケーターにも知られているんです。彼に声をかけてきた1人のスケーターが、オーウェンに見られていると張り切って歩道で技を決めようとしたんですが、通行人にぶつかってしまいました。すると、彼は自分からぶつかったのに気張って喧嘩をふっかけて、いきなりそこでもみ合いになったんです。オーウェンがそこにすっと止めに入って軽くいさめ、「もういい、訓。ちょっと別の所に行こう」と歩き出そうとしたら、いさかいを起こしたスケーターの子がすぐ追っかけてきて、「なんか変なとこ見せちゃったな。悪かったよ」と、オーウェンに言ってきました。すると、オーウェンがくるっと振り向いて「君が謝るのは僕じゃなくて、相手にだろう。ぶつかったのは君だ。何をするにも自分が間違った時に謝れない人間は、どんなものでも上手くならないよ。分かっているかい?」と。そのスケーターの少年はすごくバツが悪そうにうなだれて・・・まぁ、オーウェンに謝ってもしょうが無い訳ですから。オーウェンは「とにかく、あの人に謝りなさい」と。僕はパリのど真ん中で本物のテキサスのカウボーイに会った気がして、またまた胸熱になったんですけども、パリもいいけどテキサスに帰りたいなぁと、強く強く思いました。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。