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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
最強すぎる現代っ子“ジェネレーションZ”に大人が伝えられることはあるか?
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Theme is... YOUTH
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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-- 45歳・訓市の「現代若者考」---
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅にまつわる思い出の曲をオンエア!
後半のテーマは「若者」。
日頃接している友人や知人を見渡せば、
いつしか自分が最年長であることに気付いた訓市...
同世代にはない「若い」からこそ感じる魅力とは?
積極的に「若者」と付き合い、交流しているワケについて語ります。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Creep / Radiohead
Leave It In My Dreams / The Voidz
Love And Understanding / Sugar Minott
A Whole New World / Peabo Bryson & Regina Bell
Pone / Rei Harakami
Underneath The Stars / Mariah Carey
Prototype / Outkast
Little Dreamer / Lion Babe
Hold On / Alabama Shakes
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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僕の周りには若い人たちがいつの間にかすごく増えたというか、同い歳の人が姿を消しました。僕は若い人たちといるのがぜんぜん苦にならないというか、どちらかというと好きなんですが、彼らが僕の周りに増えたのには僕が歳をとったことに原因があります。僕は今45歳なんですけど、趣味とかやっていることや、1日の過ごし方というのが昔からあまり変わっていないと思うんです。みんな普通は大人になって僕ぐらいの歳になると、だいぶ変わって落ち着いた生活をするようになったり、考え方も割と保守的になるはずなんですが、僕はそうならずに1人、同年代から浮くことが多くなってきました。こう見えても自分が若い頃は、周りは年上だらけで僕1人年下。しかも生意気だけど、まあしょうがないというふうに見てもらえる、とてもおいしいポジションにいたんですけど、いつの間にやら自分が最年長になっていて、周りにいる子達は生意気だけど怒れないという、一番嫌なポジションに辿りついてしまいました。これは東京だけじゃなくて、ニューヨークとかロスなんかに行ってもそうで、“アンクル訓”とか言われています。しかも“バッドアンクル”とか言われたりして、『どういう意味だ?』っていう感じなんですが、ただ、若い人はやっぱりすごくいいなって思います。まず、なにしろ勢いがあって夢もたくさんあるし、無茶を無茶とも思わない、なにより振り返るより先を見ています。だから、僕が一緒にいると『おじさん、おじさん』という感じで、『昔はどうだった?』とか、『これの初めは何だった?』『あれを教えてくれ!』とか質問攻めにあったりするんですけど、そんな彼らと話しているうちに、僕も彼らから同じぐらい沢山のことを学びます。それは自分の物の見方が凝り固まってしまっているところとか、歳を取るとどうも理屈っぽくなっているということ。そういうことに気づかせてくれることが一番大事なのかなって思います。歳を取ると何を見ても、昔、見たり聞いたりしたことがあるとか、何かと比較をして、そのオリジナルは別にあるとか、ちっとも新しくないみたいな。ものを“そのまま”見られなくなっている感じがします。なので、同年代と新しいアートや音楽の話をすると、プチ批評家の集まりみたいになって、批判に批判を重ねて聞く気も失せたりするんですが、若い人たちっていうのはそういう比較する昔のものを知らない分、感覚的に判断することが多いので、逆に彼らの意見にすごく感心することが多いわけです。ですから、旅先でも昔からの友人とももちろん会いますが、なるべく新しい若い友達とも時間をたくさん過ごすようにしています。そうすると同じ街、同じ地区で暮らしているはずの古い友達と若い友達とではまるで違う地図を持ってるんだなと思うことがよくあります。新しく安い店、穴場の酒場や盛り上がってるクラブ。それは、内装がすごいとか著名な人が作ったとか、そういう物差しでは決して選ばれません。自分たちが使いやすいとか、気に入ったとか、ただ楽しいとか、本当にシンプルな尺度で選ばれているんです。そして、そういう場所に連れて行かれると、なんとなく肌で『なるほど、今はこういうことなのか』と思うのです。
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若者といえば僕にとって大きな出会いだったのが、ニューヨークで知り合ったショーンという若いフォトグラファーです。僕が出会った頃はまだ高校生で、打ち捨てられたビルに侵入して写真を撮ったり、ハドソン川にある有名な崖から仲間と飛び込んだところを写真に撮って、岸に上がった瞬間に全員捕まったり。かなり無茶なやつだと聞いていたんですが、出会った感じはかわいらしい、街にいたら絶対目立たなくて印象にも残らないような子で、その作品と人物のギャップにまずびっくりしました。あとで聞くと、それは意識的にやっているというので余計に感動したんですが、それも、目立つと好きなことができないから、わざとどうでもいい、そこらの量販店の無地の服を着ているということでした。彼が僕にとって、一時期流行ったノームコアのもとみたいな子で、彼と仲良くなってニューヨークのダウンタウンを歩くと、僕が知っている街とは全く違うところばかりを見せてくれて、本当に新鮮でした。知っていたはずの通りでも、曲がる角さえ違うんです。僕が“若い子たちとずっと仕事をしたいな”とか、“もっといろんな話を聞いて、なにか与えられることがあるなら与えたいな”と思ったのは、彼がきっかけです。
先日、ショーンの若い仲間たちが大勢で東京にやって来ました。全員、写真を撮ったり絵を描いたり、友達のブランドのカタログか何かを互いに撮り合って作ったり、音楽を知り合いのお店で演奏したり。ちょこちょこ会っては彼らの東京での滞在中の様子を写真で見せてもらったり、話を聞いたりしたんですが、そこに写る東京は江戸っ子の僕が見ても、やっぱり知った街とは全く違って見えました。ベタですが、渋谷のスクランブル交差点もカラオケボックスも道の自動販売機も、何もかもが僕とは違う角度で捉えられていました。そして、それを全部見ていくと、確かにまた彼らは僕とは違う東京の地図を作り上げているんだなと思いました。この滞在をもとに、また手製のジンを作ったり、曲を書いて発表してそのお金でまた次をやるんだろうなと思ったんですけど、それを見て、自分も何かやらなきゃとか、凝り固まった頭を柔らかな思考で満たさないといけないな、と考えさせられたりしました。皆さんもぜひ、何度も同じ土地に行く時は、同年代の人たちだけでなくて、若い知り合いを作って一緒に時を過ごせるようにしてみてください。第二の故郷だと思っていた街がきっと違って見えるんじゃないのかなと思います。そして、それは僕らの故郷であるこの東京でも同じことが言えるんじゃないのかなって思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。