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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
シンプルでストレートなメッセージ。欧米の若者のハートを掴む「スポークン・ワード」ってなに?
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Theme is... SPOKEN WORD
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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---「SPOKEN WORD」って知っていますか? ---
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅にまつわる思い出の曲をオンエア!
後半のテーマは「スポークン・ワード」。
人前で自分の好きなフレーズや歌詞の一節、言葉や散文などを
口にする「SPOKEN WORD」... そのスタイルや楽しみ方について語る。
シャイな日本人でも心を開くと思いの外、語る語る。
そのエピソードについても紹介します。
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番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Here Comes The Sun / The Runaways
Say You Love Me / Jessie Ware
Fight Or Flight Or Dance All Night / Kommode
Goodbye / The Sundays
Risky / 坂本龍一
Little Things / Lily Allen
I Remember / Keyshia Cole
Midnight In A Perfect World / DJ Shadow
Tadow / Masego & FKJ
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
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今は秋なのか冬なのか、季節の感じが分からなくなってしまいましたが、仮に秋として“読書の秋”という言葉がありますが、夜が長くなって空気が凛と冷えてくる今頃というのは、確かに本を読むのに最適な季節だと思います。僕は夜遅くに1人事務所で仕事なんかをしているんですが、無音で空気が澄んでいると、ついつい本に手が伸びたり、資料を見ているうちに読み込み始めてしまって、続きとばかりに違う本に手を出して、気づくととんでもない時間になっているっていうことがよくあります。最近、僕が本を読める時間といえば、移動中の飛行機の中、次がトイレ。そして、秋冬の夜中の事務所です。どこか海外に行く時は、たとえ読む時間があんまり無さそうだとしても、読むものがなくなってしまったらどうしよう、という恐怖感から4、5冊は必ず持って行きます。行き先が舞台の小説だったり、その小説の作家の出身地だったりすると、なんとなく着いてからの街のイメージが変わるのでオススメです。トイレは自分が使うトイレにはありとあらゆるところに読みかけの小説が置いてあります。それは家でも事務所でも変わらず、片付けられると怒る、面倒くさい人間です。とにかく、手ぶらでトイレに入って読むものがないっていうのが不安というか、落ち着かないんですよね。逆を言うと、コーヒーとタバコと本さえあれば、僕は割とほっといてもらって大丈夫な人間です。
本といえば、夏前くらいからアメリカから来た若い友達と『スポークン・ワードの夜』というのをやっています。スポークン・ワードって少し聞き慣れないかもしれませんが、直訳すると『口にした言葉』と言う意味だと思います。「ポエトリーリーディングのこと?」ってよく聞かれるんですが、ポエトリーリーディングというのは詩の朗読会で、お互いに自分で書いた詩を読んだり、お気に入りの詩の朗読会という形のものもあって、僕の友人は本当はそれがやりたかったようですが、もう少し敷居を低くして始めようと、『スポークン・ワードの夜』にしました。アメリカに行くとよく本屋さんとかカフェみたいな所でポエトリーリーディングをやっています。自分が書いた詩を人の前で読む。それは本当に素敵なことだと思うのですが、特に日本人にとっては敷居が高いようです。普通に詩を書いている、というだけでも“暗い”とか“文学系なのね”という風に型にはまって見られてしまい、それを不特定多数の人前で読むとなると、よっぽどマニアな人しかできない、という状態になるわけです。アメリカでは学校でやたらと自分の意見を発表させられたり、ディベート会があって討論させられたりと、“人前で話す”ということに慣れさせるんですが、日本の学校は、今はどうなんでしょう。僕が学校に行っていた頃はそういう授業は皆無だったと思います。だから、日本人に「詩を読んでくれ」というのは、すごく難しいのかなと思っていたんです。
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スポークン・ワード・ナイト。口にした言葉ということで、僕らは言葉であればなんでも良いことにして始めました。もちろん自作の詩は大歓迎、他の人が書いたものを読むのも大丈夫。自分の好きな誰かの詩、それから好きなバンドの歌詞の一節、映画の中のセリフ。好きな言葉なら何でもいい。ただし、ルールは一つ。それは、マイクを使ってみんなの前で読まなければいけないということ。初めてやったときは『人が来るかなぁ。来たとしても果たして誰か読んでくれるのかなぁ』と、特に若い友達は心配していたんですが、思いの外たくさん来てくれて、そして、思いの外いろんなものを読んでくれて、聞いていて本当に楽しかったです。将来の不安をいきなりマイクで語ってくれた大学生の子とか俳句のようなものを読んでくれた子、それから、とぼけた相田みつをみたいな人もいましたし、まじめに以前書いた散文みたいなものを持ってきて読んでくれた大人の方。そして、もちろん英語を話す外国人もたくさんき来ましたし、それ以外にもフランスや他の言語の人も来ました。英語は僕が翻訳したんですけども、他の言語だともちろん何について語っているのか、1ミリたりとも理解はできませんでした。それでも、時に恥ずかしがりながら読んでくれる言葉というのはいつしか美しいリズムみたいなものが生まれて、聞いているだけでその人の内面を感じるというか、とても楽しいものでした。それにしても驚いたのは、外人は照れずに堂々と読むだろうなと思っていたんですが、日本人も若い子から大人まで、「次は誰?」って司会をして挙手を仰ぐと、結構みんな「次、僕やります!」とか、その場で携帯で調べて「好きだった歌詞を読ましてくれ!」とか。もっと照れるかと思ったんですが、予想以上にみんな次から次へと読んでくれて、それが本当に面白かったです。お酒の力もだいぶあったらしいですが、お酒を飲みながら人が読むのを聞いてると、だんだん羨ましくなってくるみたいです。僕も一つ読もうかな、と。まるでスナックのカラオケのような気持ちになるみたいです。それが、ありものの歌を歌うんじゃなくて、自分の好きな言葉とか感動したセリフとか、そういうことに差し替わったというか。そして、自分が好きな言葉を人に向かって読んで、「良かった」と言ってもらえたり共感してもらえると、とても嬉しいようです。冬の寒い夜の静かな読書というのもいいですが、朗読をして、それを誰かに聞かせるというのもまた素晴らしいものです。1人で読んでる時と違って、自分にとってもまた新しい発見とか新しい響きを見つけたりします。この冬は何をしようかなという皆さん、もちろん僕たちがやっている『スポークン・ワード』に参加してもらうのも大歓迎ですが、ここは一つ、忘年会でもしっとり友達と飲む時でもいいので、自分たちの気に入ってる言葉とか歌の歌詞とかをメロディー抜きで読み合う、というのをやってみてください。意外な言葉を発見できるんじゃないのかなって思います。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。