★★★★★★★★★★
訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
トム・サックスの“ティーセレモニー”展、東京を席巻中!
★★★★★★★★★★
Theme is... TOM SACHS
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★★★★
--- 現代アーティスト、トム・サックスの「ティーセレモニー」 ---
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、ハガキ、メールで寄せられた
旅のエピソードを紹介しながら、
その旅にまつわる思い出の曲をお送りします。
訓市による“メッセージ返し”もお楽しみに!
後半のテーマは「トム・サックス」。
現在、東京オペラシティアートギャラリーで開催中の展覧会、
「ティーセレモニー」を生み出した現代アートのトム・サックス・・・
彼のキャラや魅力について友人でもある訓市が語り尽くします。
訪れる度にワクワクしてしまうトムのスタジオとは?
★★★★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Here Comes The Sun / Nina Simone
All Apologies (MTV Unplugged Vers.) / Nirvana
A Lover Sings / Billy Bragg
I Get Along / Pet Shop Boys
Morning Glory / 竹内まりや
Romeo Had Juliette
O Superman / Laurie Anderson
Moon River / Frank Ocean
I Think Of You / Rodriguez
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★★★
今、現代アートで5本の指に入るとでも言うんでしょうか、かなり異色な人なんですけどトム・サックス、彼の個展は初台のオペラシティでは6月末までやっているので、もう少し彼のことを話してみようかなと思います。僕がトムの作品のことを知ったのはもういつだかよく覚えてないんですけども、エルメスの有名なバッグ、ケリーだったかバーキンだったか忘れてしまいましたが、それをベニヤ板と蝶番を用いて作ってちゃんとパカパカ動くんですけども、それからマクドナルドの店舗をすべてベニヤ板で作って手書きでサインを書いてあるとか・・・そういうのを本や雑誌で見たのが最初です。アーティストの人って大抵は「自分たちは反体制派だ」と言ったり、オリジナリティの追求に命をかけるとか、商業主義に反対の声をあげることこそアートだと言う人が多いと思うんですよね。まぁ実際、僕が会って来た人っていうのが大体そうなんですが、トムは自分が好きな物、ブランドの物だったりNASAの宇宙基地だったり、そういう物を身近なホームセンターで売っている物だけで作っていく。その行為に対していろんな深読みもできるんですけどそれは置いといて、ふざけたことをどこまでも真面目にやることで生まれるユーモアのセンスと、本当にその物が好きで欲しかったんだ!という愛情を深く感じます。子供の頃欲しかった物をレゴや粘土、紙で作った経験っていうのはきっと皆さんもあると思うのですが、それを大人になっても本当に真面目に取り組んでいるのがトムです。そこに独特のちょっと日本語に翻訳するのも気が引けるような言葉が書いてあったりして、それがまたものすごく面白いので見るとついつい笑ってしまいます。現代アートというと僕も旅行中に機会があればよく見に行くんですけども、大体が抽象的だったりアヴァンギャルドっていうんですか、難解な感じを評価する風潮っていうのが世界中にあると思うんですが、その中でトムの作品っていうのは異彩を放つと言いますか、誰が見ても「おお、こんなもの!」っていう驚きと入りやすさがあります。まぁ入りやすさの先にはクレイジーなまでの細かさとかそういう再発見があるんですけれど。ですから、僕が初めて彼のスタジオを訪れた時はどんな人なんだろう、どんなスタジオなんだろうと期待に胸を躍らせて行ったんですが、結果は期待を裏切らないどころかそれを軽く飛び越えて、本当にその日からここで働きたいとお願いしちゃおうかなと思うような素敵なスタジオでした。道具や物でもちろん溢れかえっているんですが、全部ベニヤ板などをくり抜いて、“このドライバーはここ、ドリルはここ”って全部収納されるようになっているんですよ。そこに全部に手書きでそれは品番が何で、例えばドライバーだったらサイズがいくつとか全部書きこまれていて、それ以外にもいろんな所に「整理整頓!」とか「健康のためには正しい睡眠」とか「1日1回ビッグマック」とかその他諸々のスローガンも書いてあります。そしてスイッチがやたらとあるんですけどスイッチにも全部、“これは天井の右側の2番目で、ナショナルの110ワットの電球”とかそういうことまで全部書いてあります。
?
★★★★★★★★★★
彼のスタジオというのはいつも何かしら作っていて出来上がった新しい作品があってもう本当に面白くて飽きないので、なるだけ仕事の邪魔になるっていうのは薄々感じつつ遊びに行ってしまうんですけども、まぁとにかく子供の頃に一瞬でも思った夢の工作場みたいな、そのすべてが詰まってるんですよ。で、そこはかとなくいろんなところにパンクなアティテュードみたいな乱暴な言葉が書いてあったりして、それがまた凄く面白くて初めて会った時も取材した後の挨拶っていうことで初めて本人にちょろっと顔を見せるだけだったんですけど話し込んでしまったら馬が合ってしまいまして、隣に大事な美術館の館長がいて今から打ち合わせっていうのを放おって数時間も話し込んでしまいました。トムは何か興味があること、アイディアが閃いた瞬間に目がくわっと大きくなりまして、少女漫画の男の子みたいに目がキラッキラ状態になります。この番組でもよく話しますが、いろんな国でいろんな人と出会ってきましたが、年齢に関係なくこのキラキラ輝く目をする人というのはまったく老けないというか、人生を謳歌している人が多いです。自分の思いつきに興奮できるというのは簡単なようで実はとても難しいことなのかもしれません。オペラシティで開催している『ティーセレモニー』は日本のお茶をトムが研究して自分なりの独断と偏見も交えながら真面目にリスペクトを欠かさずに作り上げた展覧会で、そこにあるものを観ていると思いついたときのトムが異常に想像できます。飛び出しナイフを改造した茶杓や、NASAと書いてある茶碗、電動になってしまった茶筅。合理主義を貫くアメリカ人として修行にはそんなに時間はかけたくない。でも本物を楽しみたい、できるだけ楽はしたい。そして茶の伝統を守り、楽しむということは貫きたい。外人ならではの視点で作り上げたこの『ティーセレモニー』。オープニングに来たお茶の先生が、「この展覧会をもし日本人がちゃんと見て楽しむことができたら、今度こそ茶を楽しむ人口というのが増えるかも」と言っていたそうです。「日本人には伝統があるので、こう崩すことは出来ないけども、彼はちゃんと本質を捉えている」と。お茶=禅。“禅といえばスターウォーズのヨーダだろ”と茶菓子に使うお菓子のペッツの容器がヨーダだったり、ふざけていると思うかもしれませんが、普通のアメリカ人だったら一瞬頭に浮かぶそうした考えをすべて形にしてしまうのがトムです。僕もそうですが海外に長く行くと日本がより好きになったり、その問題が見えてきたりします。それもまた旅に出る理由の一つなのかもしれませんが、そんなことをトムの展覧会を観ていてまた思い出しました。みなさんも、まだ1ヶ月くらいありますのでぜひ観に行ってみてください。帰りには“ちょっと家であれ作ってみようかな”ってきっと思うはずです。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。