★★★★★★★★★★
訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
展覧会だけじゃない。ヴァージル・アブローが仕掛ける次世代への取り組み「Re-Creation Center c/o Virgil Abloh」とは何か?
★★★★★★★★★★
Theme is... CHICAGO
『Travelling Without Moving』=「動かない旅」をキーワードに、
旅の話と、旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★★★★
--- 新しいアメリカの姿を体現しているオトコ ---
番組前半はリスナーの皆さんから手紙、はがき、メールで寄せられた
旅のエピソードと、その旅にまつわるリクエスト曲をお届けします。
訓市の“メッセージ返し”もお楽しみに!
後半のテーマは「シカゴ」。
20数年ぶりに訪れたシカゴで過ごした僅かな時間・・・
友人でありルイ・ヴィトンのアーティスティック・ディレクターを務める
ヴァージル・アブローの活動を集大成した大展覧会、
エース・ホテルで行われたアフター・パーティーについて語る。
シカゴのヒーローとなったヴァージルの活躍ぶりを目の当たりにして
訓市が感じたこととは?
★★★★★★★★★★
番組では皆さんの「旅」と「音楽」に関する
エピソードや思い出のメッセージをお待ちしています。
「旅」に関する質問、「旅先で聴きたい曲」のリクエストでもOK!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
メールの方は番組サイトの「Message」から送信してください。
リクエスト曲がオンエアされた方には番組オリジナル図書カード、
1000円分をプレゼントします。
皆さんからのメッセージ&リクエスト・・・ お待ちしてます!
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
antenna* TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
The Whistle Song (Redirected) / Frankie Knuckles
She Said (Jay Dee Remix) / The Pharcyde
What's Goin' On / Donny Hathaway
My Cherie Amour / Stevie Wonder
Love Talkin' / 山下達郎
What Can I Say / Boz Scaggs
More Than A Woman / Tavares
Gone, Gone/Thank You / Tylor,The Creator
Only In Dreams / Weezer
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking …
★★★★★★★★★★
もう何年ぶりでシカゴに行ったのか覚えてない位で多分20年以上経っていると思うんですけど、今回滞在した時間はほぼ24時間位で何も見ていないに等しいです。シカゴというのはアメリカでは“ウィンディシティ”=“風の街”という愛称のある、松本隆さんが住んでいそうなアダ名なんですけど、本当に風が強くてビルの谷間じゃないのにこんなに強い風が吹くのかっていうぐらいな感じで、あとはシカゴというと音楽でいうブルースの故郷の一つであり、僕にとっては自分が小さい時に一番最初に憧れたアメリカ映画『ブルース・ブラザーズ』の舞台です。最初にニューヨークに着いて1泊してから国内線に乗ってオハラ空港に着いて、車に乗って古い工場跡のような建物を眺めながらウェストループと呼ばれる町の一画にあるエースホテルに泊まりました。エースホテルっていうのはもう今は全米だけじゃなくてイギリスにもあったり、もうすぐ日本にも出来るんですけど、僕はそのエースホテルがまだシアトルに一軒小さいホテルとしてあった頃にそれを造ったアレックスという創業者と出会いまして、それから彼が亡くなるまでずっと一緒に仕事をしていたんですが、まぁ20年ぶり以上のシカゴでそのアレックスが完成前に亡くなってしまいましたけど、こんな所にまでホテルが増えてなかなか感慨深い気分となりました。と言うのもそのアレックスという友達は色々な国に、色々な街にエースホテルを造って、それを同じようなデザインや同じサービスにするのではなくて、それぞれの街に合ったものを造ってカルチャーのハブにするんだと力説していたからです。まぁ形になっていく新しいエースホテルを見て、人っていうのは亡くなっても、そのビジョンというか思いというのはちゃんと受け継がれていくんだなぁとすごく感じました。ホテルに着いてすぐMCAと呼ばれるシカゴにある美術館に行ってきました。今、ルイヴィトンでアーティスティック・ディレクターを務めているヴァージル・アブローの展覧会のプレビューを観に行くためです。ヴァージルというのはまだ39歳なんですけども、最初はカニエ・ウエストの後ろにいるチームの1人として世に知られるようになって、そこから自身のブランドをやったりIKEAでコラボレーションをしたり、建築をやったり音楽をやったりNIKEと靴を作ったり・・・物凄い量の仕事をこなして、数年で生まれ故郷であるシカゴのミュージアムで自分の活動の集大成的な大規模展示会を開催してしまうのですから本当に凄いパワーの持ち主だなあと思います。彼はSNSを駆使して自分の活動を自分で発信してそこから得る情報をまた自分の仕事にフィードバックして形にしてきたというある意味で今という時代の申し子のような人で、僕はひょんなことから知り合ったんですけど、まぁもちろん彼の仕事とか洋服とかも凄いなぁ〜と思うんですけど、それよりもその仕事の仕方とか飛行機の移動時間は寝ているのかな?と思いきやそういう間にも仕事をしている。なんかそのパワーみたいなところにすごく惹かれているところがあります。まだまだハイファッションの世界というのは白人の世界で、ヴァージルはマイノリティである黒人なんですけどザクザクと白人社会の中に切り込んでいく様っていうのは同じくまだ少数派であるアジア人の僕らが見ていても何か痛快なところがありますし、何より音楽好きで気さくで、すぐに「一緒にパーティーをやろうよ!」とか言うヴァージルはちょこちょこ連絡を取る仲なんですけど、今回わざわざシカゴに1日だけ来たのも、「プレビューの後のアフター・パーティーを一緒にエースホテルでやろうぜ!」っていうお誘いから始まったことでした。
★★★★★★★★★★
美術館でのプレビューをパッと観てホテルに戻ると今度はご飯をささっと食べて、すぐ最上階にあるラウンジに向かいました。何しろパーティーのスタートが夜7時だったのでめちゃくちゃ早かったんですよね。まぁ7時に始めるっていう時にとてもヒヤヒヤだったのは僕とあと2人、別件でちょうどアメリカに来ていて彼らもいつも一緒にDJをする仲間なんですけど、それ以外に東京から2人DJとして友達が前日からシカゴに入るはずだったんですよ。それが僕がちょうどニューヨークに向かう飛行機に乗る時に同じ日にシカゴに向かうはずだった2人が飛行機に乗れなかったっていうテキストが入りまして、「どういうことだ」と。「ESTAっていうものがあるんだねえ」。2人は52歳なんですけど余りにも長きにわたってアメリカに行ってなくてESTAを知らなくて乗れなかったんですよ飛行機に。ギリギリで次に日には飛行機に飛び乗って来たんですが到着したのがパーティーの始まる1時間半前。そのまま荷物を置いてサウンドチェックをして7時から一緒にDJをして、次の日のお昼前には東京に帰るという売れっ子のイビザのDJみたいなスケジュールで帰っていった2人組。「レコードを買いに行くんだ」とか「〇〇を見にいくんだ」って張り切っていましたが買って帰ったのは多分アメリカでしか売ってないっていう『チートス』、スナック菓子を袋いっぱい持ってまして、「それどうするの?」って言ったら「友達とかに頼まれてたんだけど、これをカップヌードルに砕いて入れるとめちゃくちゃ美味しいんだよ」っていう、皆さんそんなの知ってますでしょうか。まぁとにかくギリギリに残りの2人も着きまして時差ボケのまま皆で音を鳴らし始めました。どんなお客さんがくるのか全く予想もつきませんでしたし、そもそもハウスの生まれ故郷でもあるシカゴで日本から来ている無名の僕らの音でみんなちゃんと楽しんでくれるのかと少々不安だったんですけど、特に始まりが7時ということで客の反応も最初は鈍いんですよね。ところが1時間経った頃でしょうか、だんだんお酒の消費量が上がるとともにこちらの音楽もテンポが上がっていくと人が徐々にブースの前に集まってきて、「いいねぇ、日本人最高!」となってきました。そしてヴァージルと彼の友人のDJであるベンジーBっていうのが11時過ぎにやって来たんですけど、その頃にはフロアはかなり暖まっていて、そこからはもう歓声が上がってお酒がひたすら回る素晴らしい素敵な夜になりました。「やぁやぁやぁやぁ」と色々な人がグラスを持ってブースにやって来ては乾杯するので、それを全員で受けていたうちに向こうの人たちに「日本人がこんなに酒飲みだとは思わなかった」とびっくりされましたけど、終わった頃に見たらブースの裏の壁と床全部にグラスが重なって置いてあって、「これ全部、君たちが飲んだんだよ」って言われて、まぁ奢りだったものでねホテルの・・・ちゃんと残さず全部飲んできました。夜の2時までぴったり音を回してヴァージル達とも乾杯をして、おめでとうと伝えました。ミュージアムはプレヴューの日だったんですけど街のヒーローとなったヴァージルの仕事を一目見ようと沢山のシカゴっ子で溢れていました。「みんなすごく本当に君を誇りに思ってるよ」っていうことをヴァージルに伝えました。白人の国だったアメリカも今年かな?もしくは来年ぐらいからはもう人口の半分以上が白人以外となるそうです。アジア人やヒスパニック、そしてアフリカ系の人達の力がどんどん強くなっていくアメリカっていうのはトランプさんがあーだこうだと割とネガティブな話しかないですけど、新しい力とか文化っていうのは今トランプさんのお陰で逆にすごく強くなってるんじゃないのかなあと思います。そんな新しいアメリカの姿っていうのを現している1人がヴァージルだと思うんですけれど、彼らがどうやって今のアメリカをまた変えていくのかな?というのが凄く楽しみになりました。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。