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2021.06.20
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  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54



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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・

パブリック・アートの制作に約27億円の助成金。ニューヨーク市の「City Artist Corps」プログラムとは?

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TUDOR logo



『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。


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#351 -- 例年、恒例だった初夏のニューヨーク ---

前半はリスナーの皆さんからのメッセージをご紹介!
曲のリクエストや選曲のオーダーにもお答えします。
旅をするのが難しい昨今、
恋愛、進路、人生、仕事などテーマはさまざま。
訓市が誠心誠意、語ります。

後半のテーマは、「初夏」。
初夏、この時期には必ず海外に足を運んで仕事をしつつ、
現地の友達たちとハッピーな時間を過ごしていた訓市。
それが叶わなくなって2年が過ぎた今、
何を感じ考えているのか?

夕暮れ時に飲んだビールやオススメのカクテルの味、
ニューヨーカーたちの初夏の過ごし方を思い返して・・・
訓市のニューヨーク行き願望は募るばかり。

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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
メッセージをお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
皆さんからのメッセージ&リクエストをお待ちしています!!

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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2021.06.20

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Stephanie City / Nick Garrie

2

New York State Of Mind / Shirley Bassey

3

Let It Be / Joan Baez

4

Nothing Can Come Between Us / Sade

5

Girl Meets Cassette / Cornelius feat. Kahimi Karie

6

Barnoon Hill / Pacific

7

Future Now / Pleasure

8

I Don't Know / Nick Hakim

9

Flowers / The Emotions

2021.06.20

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。



Kunichi was talking …


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先日ふと考えていると初夏というかもう夏至の近くですけども、海外にこの時期に最後に行ってから2年経っているということに気付きました。2019年の6月、それが最後なんですけれども。もう2年経ったのか、まだたったの2年なのか?今の僕はついついもう2年と考えてしまいますが、なんだかそれも幻のような気がします。毎年毎年、それこそ夏の時期は毎月仕事で色々なところへ行っていました。似た様なことをし過ぎて、どれがどの時かiPhoneに入っている写真の前後を見ないと思い出せないくらいですが。今の時期の初夏のニューヨークというのは本当に楽しいものでした。インスタで見る友達たちの様子はかつての日常に戻ってきているようで羨ましい限りで、「早くこっちに来なよ。」「まだワクチン打ってないの?ワクチンを打ちに来ればいいじゃないか!誰でも打てるよ。」と陽気なテキストや動画が送られてきます。「そうもいかないんだよ、そもそも行く仕事自体がない。」と返します。リモートで済むようになった打ち合わせという名の楽しい出張はもう戻ってこなそうですし、取材もクライアントがお金を出す様なものでなければまず無いと思います。あんなにしょっちゅう当たり前のように行っていたのに、今では全く行かないなんて。なんだかまるで別れたカップルみたいです。そして当たり前の事としていたものが、そうじゃなくなった途端にいかに自分が今まで恵まれていたかを気付くだなんて。別れた彼女、ニューヨークのために1曲歌でも歌いたい気分です。僕はこの時期のニューヨークが本当に大好きでした。朝、ゴミ収集車のガタガタいう音やタクシーのクラクションで目を覚まし、友達の家の近所にあるカフェに行く。二日酔いと時差ぼけという最悪の組み合わせのカクテルで完全に痺れている頭にコーヒーを飲んでいると、天気が良ければ朝から随分みんな元気で暇ね、という感じにぞろぞろと知り合いが集まってきます。日向と日陰のちょうど境目あたりに陣取って、ラッパーのように早口で英語を捲し立てる友達たちを眺めながら、僕は賑やかな街並みを眺めるのです。昼間の茹だるような暑さに人気の消えた横丁を歩くのも大好きでした。ビルの間にこもった熱風が吹いてそこに湿気が重なるようなものでしたらもう本当に我慢できません。そんな時は、早く夕方になってビール飲めないかなぁ…それしか考えていなくって、実際に夕方になると友達と知り合いの店のテラスでもうこれ以上我慢できないというところまで我慢して一気にビールを流し込む。僕はこういう時最初の1杯はビールなんですけども、以前番組でもお話したネグローニを飲む人もニューヨークはとても多いです。カンパリとベルモット、ジンを合わせた食前酒です。


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ネグローニ、食前酒といってもこれが割といい感じに強い酒で、調子に乗っていると食前で完全に酔っ払います。ネグロー二以外ですと、夏のニューヨークというとフローズンマルガリータをストローの付いたカップに入れてこっそり路上で飲む人も結構います。アメリカでは大体酒を路上でそのまま飲むのは禁止なのですが、よく茶色い紙袋にビールの缶を隠して飲んだりする輩は結構いて、このフローズンマルガリータも結構います。レモネード飲んでまーす!という顔をして近づいてきて話すと「お前、酒臭いな」ということがよくありました。そのぐらい浮かれてしまうほどニューヨークの夏って良い感じなんですけども。そうやって午後が始まり、遅い日没の時間がやってきます。看板に灯が灯り、ミッドタウンから先にある高層ビルたちの先端が光る頃に夜がやってくるとわいわいと夕飯を食べ、バーからバーへと移り歩くわけです。本当に小さな区域に大体の店が固まっているので、東京でいったら渋谷の道玄坂とか新宿の一角をぐるぐる歩き回る様な感じです。店から店へと移動する度に増えていく人数。やがて移動先に入り切らずに外で騒ぎ始めると、そこが一区切り。それぞれが少人数で違う場所へ移動しようぜ、となるのです。夜風が気持ちよくて気をつけないと必要以上に歩いてしまったりするんですが、そうやっているうちにやがて空の片隅が明るくなってきて、やばいやばい朝だと千鳥足で宿へ戻ります。どこかの街角からは酔っ払いが大声で歌う中を這う様に歩いて帰る時もあれば、もう限界だとタクシーに乗って窓を全開にして帰る時もあります。信号の光が酔っ払って見えなくてですね、線になって後方に消えていくのを、宿に着くまで寝ちゃダメだと必死に起きている時の辛さときたら。でも懲りずに毎晩毎晩繰り返すニューヨークの初夏を過ごしてきました。競争が激しいニューヨークでは人の入れ替わりがものすごくて、ちょっと絵で売れたと思っていてもあっという間に消え去って街から見なくなったりします。そういう人の移り変わりというものを初夏の夜には感じていました。冬の間にこもっている時にみんなどこか帰ってしまうんですよね。でもそういう人の新陳代謝が激しいからこそ、活気をキープしているニューヨーク。コロナでのロックダウンを経てニューヨークの週末はお祭り騒ぎだといっていました。まだ道にテーブルと椅子を出して営業することが許可されているので、車1台しか通れなくなった道の両脇にはパリのカフェ状態になったレストランに客が満席で座れないそうです。「こんなに良い夏はないかもよ。」と言ってくる友達たちがしきりに誘ってくるんですが、僕はその光景を果たして今年の夏に見ることができるのでしょうか。