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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
ANA・JALが飛行ルートを変更、ウクライナ情勢が経営に与える想像以上の打撃 - 激動!エアライン
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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#409 --- “3年ぶり”でココロが動かされつつも ---
先日、約3年ぶりにヨーロッパを訪れた訓市。
降り立ったのはイタリアのヴェネチア。
世界情勢による航路変更で長時間のフライトを強いられつつも、
アドリア海の“青”に感激!
ところが、現地で最も気を配ったのは
帰国時に必要とされている検査と結果・・・
短い滞在日数の中でヴェネチアの街を歩いて
感じたこと、不安に思ったことについて語る。
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Save Your Tears / The Weeknd
Dunkel Party / Charlie Megira
Peace / Eric Godlow
Changes / Sandro Perri
いたいのとんでけ / Zorn
Human / DIIV
Strangest Thing / War On Drugs
Eyes Without A Face (Poolside Remix) / Billy Idol
Il Postino (Titoli) / Luis Bacalov
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
Kunichi was talking
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先日、3年ぶりにヨーロッパへ行ってきました。お付き合いのあるHERMESとAppleが「イベントをやるので来ませんか?」と声をかけてきてくれたのです。番組でも話したかと思いますが、思えばもう3年近く前に世界中からエディターや縁の人を集めて同じ2つのブランドが屋久島で楽しいイベントをしたことがありました。とても良い思い出だったので二つ返事で「行きます」と返信をしました。今回の舞台はヴェネツィア。水の都として有名ですけどもコロナ禍で観光客がいなくなり、運河の水が綺麗になって地元の人が初めて水路に魚が泳いでいるのを見たっていうのがニュースにもなっていました。もはや昔行ったのがいつだかも思い出せないくらいなこの街に行けるなんて、なんて幸運なんだ。しかも今回は行きの飛行機にPCR検査は不要、帰りだけというのもニューヨークと違い楽じゃないか!そう思うと気分も軽やかに荷造りもできるというものです。「ものすごく暑いらしい」「日射病になるかもしれないから帽子はマストで」そう言われて張り切って荷造りをしたのですけども、まぁ会食みたいなのもあるのかなと思いつつ用意できたのはビーサン、短パン、日数分のTシャツにハットが2個。それだけ持って玄関まで行ったんですけども、さすがにこれはまずいかなと思いペラペラのスーツと革靴だけ鞄に仕込んで、一路羽田へと向かいました。現在イタリアには直行便がなく、ドイツ・フランクフルトでの乗り換えが待っていたんですけども、まぁ予想以上に遠かったです。今現在、ヨーロッパに行くっていう時には飛行機はロシア上空を飛べないのですが、そのロシアの国境の南側を飛ぶルートでフランクフルトまで15時間ですよ。夜便で21時半くらいの出発だったのですが、フライトが始まりすぐに食事をして映画を3本立て続けに観て、もう半分くらい来たかなと思って飛行経路を見たら、まだ9時間以上も残っているじゃないですか! バックパッカーの頃は安いチケットを求めて、例えばロンドンまで行くのに乗り換え3回、合計1日以上のフライトなんていうのをよくやりましたけども乗り継ぎと待ち時間が長かっただけで、10時間以上のフライトっていうのは特にあまりなかったと思うんですよね。直行便のないヨーロッパは今本当に大変ですよ、と予定を立てている人には一言言っておきたいと思います。15時間って本当に辛いですよ。そしてフランクフルトで約3時間のトランジットがあって、そこから1時間半のヴェネツィアまでのフライト。空港に着いた頃には、何もしていないのに何かとてつもないことをしたような疲れがどっと出てきました。「あぁだるい」「来なければよかった」「早く湯船に浸かって、その後は何もせずにゴロゴロしてアイスでも食べたい。ヨーロッパはまだ早かった」と愚痴が溢れるところでしたが、そんな気分も空港を後にする頃には一変していました。僕が以前ヴェネツィアに行った時は確か電車で行った気がするんですけども、飛行機で行くのは初めてだったんですよ。なので空港からタクシー乗り場のような所に行ったらそれが船着場で、街まで向かうのがボートだって知らなかったんです。ボートが空港を出て外の景色を見た瞬間に、午前中の青空が広がるアドリア海。もうその頃には僕の気分は『紅の豚』のポルコロッソのようになっていました。
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久しぶりのヨーロッパがコロナの前によく行っていたロンドンやパリといった、ある種馴染みのある場所ではなくヴェネツィアだったということが僕の気分を何倍にも高揚させてくれました。やがて島々が視界に入り、あぁとうとうヨーロッパだという気分が最高潮に達した時、ボートは宿泊先のホテルの桟橋に着きました。この到着の仕方っていうのも、もう『紅の豚』ではないか。さぁすぐに散歩に行きたい・・・そう思っていたんですが、最初にやらなければならないのが帰りのためのPCR検査でした。出国72時間以内に陰性証明を取らなければならない。滞在が短く、そしてヴェネツィアには検査してくれるクリニックが病院しかなく、そこがやっているのが午前中のみで、結果が出るのに最短でも2日かかるということで、なんだかよく分かりませんけれどもホテルに着いて1時間以内で帰りのためのPCRを受けるんです。これって意味があるのかって感じなんですけど、ルールはルールですからすぐ検査したんですが、このPCRには手こずりました。何かと言うとイタリアって色々テキトーで何でも遅れるし、とにかく問題が多いのが陽気なイタリアっていうイメージが分かる分かるっていうリスナーの方もいると思うんですけど、決められた書式で陰性証明のPDFが届かないのです。苗字を書かないといけないところに名前があったりとか、パスポートを渡しているのに間違いだらけ。何度かのやりとりの後、ちゃんとしたPDFが送られたと思っていたんですが、もちろん間違いがあって帰国時に使うアプリ『MySOS』に登録が出来ないんです。結局、出国ギリギリまで正式のPDFが届かなくて、そうこうしている内に帰りの飛行機に乗る時に飛行場に着いてしまい、現状のものを見せたら「君をこのままでは飛行機に乗せられない」と言われてしまいました。ギリギリでちゃんとしたものが届いて乗れたんですが、この陰性証明のトラブルというのは結構あるらしくて実際に乗れなかった人も沢山いるそうです。これが必要なのは日本くらいで、海外のクリニックは慣れていないっていう話もあるんですけども、これがなくなると本当に楽なんですけどね。とにかくPCR、これから海外に行く人はその国のクリニックの状況と、ちゃんと日本の空港で使う書式で書いてあるのかっていうのを照らし合わせないといけないので、それがちゃんとしてないと乗れません。お気を付けを。着いて早々PCRをしながらすぐその後、街を歩いたんですが、その時の感想はと言いますとまるで90年代のヨーロッパという感じでした。なぜかというとアジア人観光客の姿がほとんど見えないからです。見渡す限り他のヨーロッパの国からの観光客とアメリカ人が異常に多い。色んなところからアメリカ英語が聞こえてきました。どうも強いドルの恩恵っていうのを受けているらしくて、ホテルの方にも聞いたら「大量のアメリカ人が来てる」と言っていました。僕がバックパッカーの頃にはアジア人観光客といえば日本人だけで、どんな辺鄙なところに行っても必ず日本人の姿を見たものでしたが今回はそれがなかったですね。それがすごく不思議だと共に、昔だったら飛行機に乗れるっていったらどんな無茶をしても海外に向かう若い人たちが沢山いたのに、それが見えないっていうことに何かまた日本っていう国のパワーが衰えているのかなっていうのを感じた旅でした。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。