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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
就活生が「タクシー運転手」に新卒カード切る理由
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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--- #414 継続は偶然と驚きの“出会い”を生む!---
前半はリスナーの皆さんから寄せられた
“お便り”の中から訓市の目に留まったものを紹介。
曲のリクエストや選曲のオーダーにもお応えします。
後半のテーマは「タクシー」。
約8年間、番組を続けているからこその体験が、
突然の声がけ。
特に正答率が高いのがタクシー内での偶然の遭遇...
その中でも訓市が特に驚いた車内での“出会に”ついて語る。
日頃、番組宛にお寄せいただいている
たくさんの“お便り”の中から
訓市が独断で選んだものを読みつつコメントを加えて。
曲のリクエストや選曲のオーダーにもお応えします。
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
King Of Pain / The Police
Where Are We Going? / Donald Byrd
You Don't Love Me (No,No,No) / Dawn Penn
The Battle Is Over (But The War Goes On) / Sonny Terry & Brownie McGhee
みなと / スピッツ
Change / Lisa Stansfield
You Gotta Be / Des'ree
I Don't Want To Talk About It / Everything But The Girl
Nepalese Bliss (DJ Food Remix) / The Irresistible Force
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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長いことラジオをやっていると、“面白い出会い”っていうのが沢山あります。突然お店で働く人に声を掛けられたり、セキュリティの人に「ちょっと!」と声を掛けられて、なんかしたのかな?と思うと「ラジオ聴いてますよ!」と言われたり。日曜の夜8時、休みの日に色んな人がラジオを聞いてくれているんだとびっくりもしますし、ありがたいなーとも思うんですけども。その中でよく声を掛けられやすい職種の1つにタクシーがあります。タクシーに乗り込んで目的地を告げその間無言で走っているんですが、やがて目的地に着き精算をする時に「野村さんですか?」と言われてびっくりしたことが何度もあります。いきなり名字を、それも下車する時に言われてびっくりして、何だろうと思うと「ラジオ聴いてます」と。目的地を伝えた時の声だけで分かったというのですから、自分の声が特徴的なのかどうかというのは本人には中々分からないことなんですけども、そもそも自分が人の声を聞いただけで「あ、あの人だ!」と気付くことがほぼないので、当てる人たちって凄いなぁってびっくりするんです。全く接点のない人といきなり繋がる機会を作るラジオっていうのは、この番組でも何度も言ってますけど、雑誌とかの年齢や性別でターゲットを作るメディアとは全然違うなーって思うんですが・・・こういうタクシーに乗って声を掛けられるっていうのが月に1回とか必ずあるんですけど、先日タクシーに乗り込んで瞬間で「訓市さん!」と声をかけられました。訓市さんって言われることってあまりないな〜って思って、「はい、そうです!」と慌てて答えると、運転手さんが「僕、昔お見かけしたことがあるというか、喋ったこともあるんですよ。覚えてないと思いますが…」と突然言われてさらにびっくりしました。車はすぐに動きだして、前を向いた運転手さんがバックミラー越しに話を始めました。「僕は今年で50歳なんですけど、昔はダンスミュージックが好きでミュージックフェスに行ったり、90年代には色んなところを旅してクラブに行ったりパーティに行ったり。とにかくそういう生活にどっぷりハマっていたんですよ。だから訓市さんのことは色んなところで見かけていましたし、タイの島だったかどこか忘れましたけど喋りかけたこともあるんですよ」。突然そう言われて僕はさらにびっくりしてしまいました。
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90年代、弾けたバブルを本当に実感するようになったのが92、93年だったと思うんですけど、東京っていうのは凄く混沌としていて面白かったです。潰れて空き家になった店舗やビルが都心の一等地にはたくさんありましたし、強い円を求めて海外のバックパッカーがたくさん東京を訪れるようになっていました。ヨーロッパや、多かったのがイスラエルの若者ですけども徴兵があるんで、終わった後に1年半とかやって貯まったお金で旅行する人たちが多かったんですよね。随分そんな彼らと知り合って自分もどこか行ってみようかなーとバックパッカーになったのですが、その頃のことっていうのが走馬灯のように頭の中を駆け巡りました。ちょうど246を走っていたんですけども、そのタクシーの外の景色っていうのが急に90年代になったような気がしてしまいました。その運転手さんは僕の当時の友達のことも知っているようで、「彼とかは今はどうしていますか?」。そう聞かれて僕は「いや、どこにいるのか。もう10年、いや20年くらい会っていないかもしれません」そう答えていました。バックパッカーの頃の友達たち、最初に出会った人たちっていうのはほぼ30年ぐらい前になります。スーツを着て会社で朝から働く者もいれば、自分の店を持つ者、ヨガの先生になった人、普通に主婦になって子育てに追われている人。若い頃を思えば信じられないくらい、みんな一生懸命働きながら家族を養ったり、自分の好きな生き方というのを模索しています。たまに会うことがあるんですけども、髪型が昔はドレッドだったり長髪だったり体がタトゥーだらけで銭湯に絶対一緒に行けないような友達が、みんな凄く普通に働いていて。同一人物なの本当に…?っていう。信じられない時がありますけども、「あの頃はバカだったなぁ、けど楽しかったなぁ〜」という話によくなります。それと同じくらい、もう今はどこにいるのか誰も知らない友達もたくさんいます。旅を続けて、どこかの国を移動を続けながら転々と居場所を変え暮らしている者もいれば、長い間色んな場所を彷徨っているうちにどこにも居場所がなくなって消えていった者もいます。帰国してみたら浦島太郎状態。気ままな旅暮らしとは違って、日本に帰ってきて友達の家に転がりこんでからのバイト暮らしというのも、年齢が上がっていくとそう簡単には出来なくなっていきます。まぁ僕も経験しましたけど、「俺、就職して朝も早いから、ちょっともう泊められない」とか「今度、結婚するんだ」。なんかそう言われて逃げ場がどんどん少なくなっていくような気をしてましたけど、今どこにいるか分からない友達たちっていうのも中にはそういう風に感じてどこかにいなくなってしまったのかなーとも思います。みんな元気にしてるのかな? 当時の自分たちが今の自分たちを見たら腰を抜かすと思いますけども・・・。そのタクシーの運転手さんと結局10分くらい色んな話をして、色んなことを思い出しました。「いつかまた」そう言って僕はタクシーを降りましたけど、久しぶりに実感したTravelling Without Moving in taxiな10分間でした。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。