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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
スティーブ・ジョブズの死から10年、わたしたちは“彼の世界”に生きている
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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#416 --- “オンライン < リアル” を実感 ---
前半は皆さんからお寄せいただいた
“お便り”とリクエスト曲をオンエア。
選曲のリクエストにもお応えします。
後半のテーマは「アップル」。
3年間のブランクを経てリアル開催された
アップルの「キーノート」に参加・・・
2泊4日の弾丸旅で訪れた
サンフランシスコ郊外の街クパチーノにある
アップルパークで過ごした時間、
そこで出会った懐かしい顔、新しい顔。
訓市は何を思い、感じたのか?
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Tonight / Phoenix feat. Ezra Koenig
Aikea Guinea / Cocteau Twins
The Moon Song (Film Version) / Scarlett Johansson & Joaquin Phoenix
Will You Still Love Me? / Chicago
あの街に風吹けば / 羊文学
Dream / Forest For The Trees
How Me How / Men I Trust
Have You Never Been Mellow / Olivia Newton John
Song For A Blue Guitar / Red House Painters
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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先日サンフランシスコに行ってきました。サンフランシスコといっても実際に泊まったのはアップルの本社があるクパチーノという街から近いパロアルトという街なので、厳密にはサンフランシスコではないのですが…。何をしに行ったのかと言えばアップルの新製品の発表会、俗に言う「キーノート」です。かつてはスティーブ・ジョブスが一人壇上に立ってイッセ・イミヤケのタートルネックを着て、リーバイスを履いて、足元にはニューバランスのスニーカーを履いて・・・あれが個人の制服だったと思うんですけども、それで新製品を紹介する。そして説明しながら最後に、「そうそう、もう一つ!」という感じで本命の新製品を発表していたあれです。まだまだ色んな素敵に新しいこととか新しい使い道のプロダクトが世界中で生み出されていた時代、その中でもジョブスの「キーノート」っていうのはどこか手品=マジックショーを見ているような雰囲気がありました。夜中に始まる「キーノート」をみんな見ていたりスレッドを目で追っかけて、次の日には「あれ見たか?欲しい!」という会話で溢れかえっていました。僕はジョブスが亡くなってから1、2年後のキーノートから訪れるようになり、毎年9月になるとそろそろ“リンゴの季節”だなと思ったものでした。会場は以前は毎年移動していたんですが、写真で見たことある人も多いかと思いますが本社の「アップルパーク」。あの宇宙船のようなリング形の建物が建設され、そこに「スティーブ・ジョブスシアター」という発表用のシアターが完成してからはそこで「キーノート」が行われるようになりました。初めて「アップルパーク」を訪れた時の印象は植えられたばかりの樹木を根付かせるために肥料の匂いが凄かったっていうのと、その樹木の先に見える建物の巨大さが現実離れしすぎてびっくりしたのを覚えています。本当に宇宙船が地面に着陸している様でスケール感がとにかくおかしい感じで、なんかフィルターがかかったように見えるっていうか…。初めて行った時はもう亡くなってしまったヴァージルとかもいたんですけど、本当にみんな大はしゃぎでした。とにかくそこで新製品を見て、タッチ・アンド・フィールでそれを実際に触ったりしてレビューを書いたり、そうして「キーノート」を過ごして夜はアップルの知り合いたちが開くアフターパーティで酒を酌み交わすというのが僕の夏の儀式の一つとなっていました。“なっていました”と言うのはもちろんコロナのせいです。今年は2019年以来、3年ぶりの人を集める「キーノート」となりました。それまではオンラインでの発表に切り替わっていましたから、誘われた時には久しぶりだから行かなくちゃ!と意を決して行きました。なんで“意を決した”かと言うとですね、日程がすこぶるタイトで、火曜日の夜のフライトで羽田を経ち、その日の夕方にシスコに着いて、水曜日は「キーノート」と打ち合わせ。そして木曜の朝には日本に向けて帰るという地獄の弾丸旅行だったからです。
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もう歳を取り始めたから無駄に飛行機は乗らない、もう少しゆっくり時間を過ごそう。そういうことをこの番組で今年に話したような気もするんですけども、結局それってなかなか難しいんだなと今回思いました。面白そうな話を人参の様に目の前にぶら下げられると食いついてしまう… なんだかすごく卑しい人間の様にも思えましたけど、とにかく行こうとなりまして、今回7月ぶりに羽田に行きました。5月にニューヨークに行って7月にイタリアに行ったんですが、行った感想は回数を重ねるごとに人が増えているな〜と。そして、帰国前72時間以内のPCR検査というのが9月の7日から無くなりました。これは本当に楽ですよね、前回のイタリアなんて着いて最初にやったのがPCRでしたし。今回のアップルの旅っていうのは滞在時間が40時間とかだったんですよ。つまり行きの羽田でPCRをやって、その結果をメールを送ってもらえば帰りに使えたっていう… これってもはや意味あるの?っていう感じだったんで無くなって大歓迎です。夜の羽田を11時近くに飛び立って、サンフランシスコへ。「君は何をしにアメリカへ来た?」「アップルのキーノートを見に。新しいiPhoneくれないかって思って」「俺のも貰ってくれブラザー。ハイ!」とスタンプ。それだけで入国できまして、本当に書類とかいらないんじゃないのって感じなんですけども、そこから一路「パロアルト」まで目指しました。高速越しの風景を眺めながら、コロナ禍最後の海外出張だったのがシスコとビッグサーの旅だったので、その時のことを思い出しました。あの時はもうコロナが日本を覆い尽くすのは時間の問題で国境がもうすぐ閉まるんじゃないかって言われた時でしたから、次はいつここに戻れてこの景色が見られるんだろうっていう、どこか感傷的な気分で見ていました。それが2年半が経ってやっと戻って来られたと思うと、とても感慨深く…。まずホテルでチェックインしてからシスコにとんぼ返りして友人と再会しワインをかっくらい、そして翌朝は朝から打ち合わせをして、「キーノート」に臨みました。3年っていうのはやっぱり長い様で随分顔ぶれも変わっていたんですけども、古いアップルの友人たちもニコニコしながらシアターで雑談していました。「キーノート」の新作の発表っていうのはオンラインで完全に出来るようになりましたけども、やはり一同に人を集めてやるのとでは全然違います。それはアップルのみんな全員も言っていました。同じ場所に立って、同じ空気を吸い、その瞬間の感情を共有する。コロナ禍でははっきり言ってアップルの製品が無ければ僕はやっていけなかったと思います。仕事のPCもそうですけども、電話もそうですし、音楽を聴くのもビデオチャットも全部iPhoneやFaceTimeを使っていました。100%の仕事にそれを使って、しかも寂しいって時はそれらのプロダクトを使って人と繋がる。もし無かったら結構世の中一人取り残されたような気分になっていたと思います。そんな命の恩人の様なプロダクトやソフトウェアを作った張本人たちが発表会するのにわざわざ世界中から人を集めて、そしてその姿を見て喜んでいる。デジタルで世の中が変わって家から出なくていいとか弊害も色々言われますけども、あくまで人生をよりラクに楽しくしてくれるためのツールがデジタルプロダクトで、それを使っても人の人生の本質っていうのはやっぱりリアルな人の繋がりなんじゃないのかな〜っていうことを強く実感する「キーノート」でした。帰る時に「また来年ね!」っていう話をしまして、もう来年もどんなに弾丸でも行けたら行こうって思ってます。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。