★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
トーキョーの夜のつくり方。〈SOUND MUSEUM VISION〉村田大造×〈翠月 -MITSUKI-〉RYUZO対談
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
#418 --- ありがとう! VISION & Contact ---
前半は皆さんからお寄せいただいた
“お便り”とリクエスト曲をオンエア。
選曲のリクエストにもお応えします。
後半のテーマは「クラブ」。
40代以降、訓市がことあるごとに足を運び、
パーティーを企画し、知人・顔見知り・初対面を問わず
数えきれない人たちと会い、酒を飲み、夜通し遊んだクラブ...
渋谷の「ビジョン」。そして「コンタクト」。
時代の流れに飲み込まれて再開発を目的に
閉店してしまった2軒のクラブでの思い出について語る。
年齢や性別を越えて一緒に時を過ごすことができた
真の理由とは?
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Since I Left You (Stereolab Remix) / The Avalanches
Dirty Blvd / Lou Reed
Free / Seal
Clouds / Gigi Masin
無い! / ゆらゆら帝国
Eyes Of Mind / Axel Boman
Death Of A Disco Dancer / The Smiths
God (Love Theme From Purple Rain) / PRINCE & The Revolution
Follow Me Down / Swallow
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
道玄坂にあった「Contact」と「VISION」・・・ 本当によく通った場所なんですけども、渋谷の駅から道玄坂を登って駐車場を曲がり込んで地下を覗くと突然、別世界のようだったあの場所が僕はとても好きでした。入り口にいるエントランス係やセキュリティの人たちはもう馴染みで、ほいと挨拶して地下へと辿ると3つのフロアから違う音が鳴り響いて、奥には馴染みのバーテンたちがいました。カウンターに寄りかかって後ろで鳴っている音をつまみに延々と他愛もない話をしながらリズムを取る。僕も、僕の周りの音楽好きの友達も座るのに何万円も払うVIPルームみたいなものがあったり、シャンパンばっかり飲んでる客がいるようなクラブっていうのがすごく苦手で、700円、800円でハイボールやウーロンハイを夏はまるで麦茶のようにゴクゴク飲める… そんなお店が好きでした。薄いんでね、クラブのお酒って。外タレ、新人、もはや何のジャンルだかよく分からない音。そんな音がいつも鳴っていて、それらを肴に朝までよく飲みました。僕の年齢になると夜出掛ける人たちっていうのは洒落たバーだのキャバクラだの高級ラウンジだの、そういう所に行く人ばかりになってしまって全く話が合わないんですけども、僕は音があって雑多な人と雑多に飲める所が好きです。僕の友達は若い時は同じことを言っていたんですが、今じゃそんな人たちは全く周りにいなくなってしまいました。「VISION」、そして「Contact」っていうお店は9月の頭と半ばにそれぞれクローズしてしまったんですけども、最後の営業前にDJをする機会があって、それで場所にお別れをしようと思っていたんですけども無くなってしまうっていうと猛烈に寂しくなって足繁く通ってしまい、最終日も二日酔いの中行ってしまいました。クラブという商売っていうんですか業態は、とても寿命が短いと思います。10代で通うようになったんですけど、好きだった店や行ったことある店っていうのは全部消えていきました。レストランなどでは3世代が通う店などっていうのがまだ残っていたりしますけども、クラブではそれが決してないですね。「あの店は良かった」「音が素晴らしかった」そんな話をしても全ては想い出話の中で、もうクラブで飲むには歳をとったし、今はどんな店があるか分からないからもう行かない。大体が大人になるにつれてそうなっていくものです。僕も実際に40代に突入する頃に馴染みの音楽箱が無くなってしまって、そろそろ潮時なのかなーと思っていたんですが、それを変えてくれたのが道元坂のクラブでした。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
最初に「VISION」が無くなってしまい、その後「Contact」が閉まってしまったんですが、最後に行った日に色んなパーティをしたなぁ〜と振り返ると思い出すことが多すぎて止まらなくなってしまいました。ディスコで神様扱いされているDJハーヴィともやりましたし、オーストラリアのThe Avalanchesたちとやったパーティーは本当にハッピーで思い出深いパーティーになりましたし、番組で話したことがありますけどルイヴィトンのディレクターをやっていて、去年亡くなってしまったヴァージルとやった忘年会パーティーっていうのは本当にあらゆる年齢やジャンルの人がごった混ぜになって一生忘れないものになりました。「VISION」は今年でちょうど11年目、「Contact」は6年半で閉まったのですが、ちょうど世代交代の時期で、新しい若い世代と出会って友達になって一緒にパーティーをやったりするようになったのがラッキーだったなーと思います。それまではまだちょっと年上や同じ歳くらいの仲間で集まってDJをしたりパーティーをやっていましたが、この道玄坂のクラブではそれこそ20歳以上年下の子たちと普通に友達になって、「じゃあ今度一緒にやろうか」とか、そうやって輪が広がっていったのがとても面白かったです。僕たちが昔の音を教えたり、逆に新しい音を教えてもらったり。参加する人たちがどんどんと増えてきて、いつの間にか一晩でDJが20人以上集まって、皆が一瞬で仲良くなっていく様を見るのはとても楽しいものでした。今思い出すといつの間にか道玄坂の僕らの周りというのは上下関係が無い、とてもフラットな付き合いが当たり前の雰囲気になっていたと思います。それが出来たのも良い箱、つまりクラブとスタッフのお陰だったと思うんですが、これってよく行っていたニューヨークやロンドンのクラブもそんな感じで、年寄りと若者の距離感が近いっていうんですかね。昔はやっぱり何でも上下関係ってあるじゃないですか。アシスタントがいたりレコード持ちがいたりとか、年上の人に自由気ままに話すっていうのが少し無い時もあったと思うんですけども、渋谷はそうではありませんでした。「Contact」の最後の夜、ちょうど外に出た時に一緒にいた友達と看板の前で写真を撮りました。よく見たら一番年上は60歳過ぎ、下は20代前半でした。寂しがっていましたけど、ニコニコとして仲良く写真に収まりました。年齢とか性別を超えて一緒に色んな人と時を過ごせるのがクラブの良いところだと思います。危ない場所だとかセクハラがあるとか色々と悪く言われることも多いクラブですけども、バーにもぼったくりバーもあれば良心的なところもありますし…。飲食店はそれがある街の縮図みたいなものですから色んな店があると思いますけどもクラブも同じで、そういう場所を皆さんも見つけてフラットな年齢幅の広い音楽好きな仲間ができたら本当に人生豊かになるんじゃないのかなって思います。今でも悲しんでますけども・・・「VISION」と「Contact」、本当に長い間遊ばせてくれてありがとうございました。また渋谷の街で、どこかで。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。