ON AIR DATE
2023.02.05
BACKNUMBER
  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54



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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
料金爆騰に円安が追い討ち…ゴーゴーバーはもはや高嶺の花「もうタイでは遊べない(涙)」

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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。

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--- #435 あの時の記憶を再確認できず ---

前半は皆さんからの“お便り”を紹介しながら
リクエスト曲をオンエア!

後半のテーマは「バンコク」。

バックパッカー時代には世界旅の出発点として滞在し、
多くの思い出が生まれたバンコク...
右も左も勝手知った「カオサン通り」を
改めて訪れて感じたこととは?

グルテンを自主制限している訓市が
我慢できずに食べた甘?いストリートフード。

今回、約5年ぶりに足を運んだバンコクで
急激な街の成長と変化を目の当たりにして思った、
日本の現在と未来について語る。


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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。

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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2023.02.05

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Someday / The Strokes

2

Myself / Post Malone

3

Love Like The Movies / The Avett Brothers

4

First Of The Year / Cuco

5

PAPA / Beni

6

Alone In Brewster Bay / Minnie Riperton

7

Sweetness / YES

8

No Regard / Vincent Gallo

9

Stay / Blackpink

2023.02.05

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。



KUNICHI was talking

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先日、年末年始にタイに行ったという話をしたんですが、バンコクにたどり着く前に話が終わってしまいましたので続きを話したいと思います。以前も話しましたがバンコクと言うと空港に着くと匂う殺虫剤とスパイスだか何かが混ざったような空気と、爆音を響かせ走るトゥクトゥクというのが長い間の僕のイメージでしたが、それは本当に変わっていました。ご存知の方も多いかと思いますがトゥクトゥクというのはトラック野郎が乗るトラックのような電飾を付けたバイクに荷台というか簡単な座席が付いたもので、これが安いし、風が気持ち良いし、いつか1台買って日本で乗りたいと思っていたんですけども、久しぶりにバンコクに戻ったら数がだいぶ減ったなーと思いました。普通のタクシーの方がはるかに多く走っているんですよ、ミニバンでもなく。4年前最後に訪れた時に建設途中だったような高層ビルがすごい勢いで完成していて、それも一目でどこかの建築家さんがエゴをむき出しに作ったような独創的なビルみたいなのがバンバン建っているんですよ。国の勢いというのを本当に感じました。物価もだいぶ上がってきていますし、なんだか安いからタイに行こうかというのはもう変わってきているのかなという感じがします。タイというのは関税がすごく高くて、海外から輸入する物は品目によって税率が違うらしいのですが、特に車だと倍の値段になると言っていました。例えば1,000万円する外車はタイで買おうとすると2,000万になると。それがデパートの駐車場とかを覗いたら、その1,000万以上する外車がズラーっと並んでるんですよ。貧富の差がとてつもなく大きいのですが、富める人たちはものすごく金持ちになっているのだと思います。財閥のような会社も多く、そこはどんどんと海外の会社を買収したりして国際的にも大きくなっているところが多いらしく、そもそも最近だと日本に来る外国人観光客の中でもタイから来る人っていうのはアジアのトップ3に入るくらい多いらしいんですよね。・・・って言うことは国がそれだけ上り調子で、海外旅行へと出かける余裕のある人たちが思いの外増えているということです。僕がアジアをふらつき始めたのがもう30年近く前のことなので、いつまでも過去のイメージを引きずっていちゃいけないんですけども、それでもタイやインドの躍進というのはびっくりするものがあります。それは90年代の東京から今の東京ってもちろん街並みは変わりましたが、物の値段とかバイト代とか基礎になるものってあまり変わっていないと思えるからです。周りがどんどん成長している中で、日本だけがずっと同じ場所にいるような、そんな気分を味わいました。



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去年2022年、コロナ禍の中で初めて行ったニューヨークからイタリアのヴェネツェア、ロス、シスコと行く機会があったんですけど、もちろんコロナ禍で旅に出ましたから日本人観光客の姿を見かけることはほぼ無くて、海外の物価高を肌で感じて、うーんと思っていたのですが、タイの元気良さを見ていると今まで以上に日本のことがなんとなく心配になってきてしまいました。活気があるというのは国として大事だと思うんですけど、それを路上で歩いているだけでも感じるのです。それは若い人が多いということもあるかもしれませんが、タイもすごく物価が高くなったんですけども、とは言えストリートフードはまだまだ食べられる範囲の値上げ率で楽しく食べました。僕は道で食べるご飯が大好きなんですけども、それって行った街をそのまま胃袋に収めるというか、そんな気がするからです。何でもかんでも食べて、必ず食べていたのがデザートの「ロティ」。タイクレープともタイパンケーキとも呼ばれますが、元々はイスラム教徒の食べ物で、クレープのように生地がサラサラしたものを熱い鉄板の上に垂らして焼くのではなく、パーム油に付けたパン生地のようなものを注文がくると薄く叩いて伸ばして、それを焼くというよりバターで揚げながら折りたたんでいくもの。まぁ使っているのも多分バターじゃなくてマーガリンとパーム油だと思うんですが、それをしこたま使って最後にコンデンスミルクをかけるっていう。まぁ作ってる過程を見ているだけで150%身体に良い訳ない油と糖分の塊なんですけど、これがもうね、ああいう暑い気候の中で食べると甘さが足りないんじゃないかって思うぐらいもっとコンデンスミルクをかけてくれっていうぐらい美味しいんですよ。「グルテンフリーだ」「あぁその麺は小麦麺だから食べない」と言っておきながら、ロティだけはずっと夢に見ていたので毎日一かけずつくらい食べてしまいました。もう最初の一口をピピ島か何かのマーケットで食べたんですけど、食べた瞬間に、ああもう今回無理してタイに来てよかったなぁ〜と全てが報われた気になりました。そうやって感慨に耽ると言えば今回バンコクに行って一番思い出深かったのがカオサンロードにも20何年かぶりに行ったということです。バックパッカーの聖地として安宿と格安チケットの旅行代理店が立ち並んでいたカオサン。僕らは金が無くて、いつも一番安いような冷房無しの宿に泊まって、そこの伝言板に残された友達のメモを頼りにどこかで落ち合ったり、通りで売っていた格安チケットでインドに行ったり。何でしょうね、僕らにとってのバンコクの全てだった場所ですけど、方向音痴の僕はすっかり行き方も忘れていまして、着いても「え、これがカオサン?」っていうぐらい記憶の中の通りと今のカオサンが一致せず、最初は呆然として道のど真ん中で立ちすくんでしまいました。こんなに大きな通りだったっけ? 旅行代理店の看板が見えない! 路地に入ったところにあったはずの安宿は? 90年代の断片が見つかるかと、どこか期待していたんですけども僕はそれを見つけることができませんでした。街は常に形を変え、そこにいる人たちも変えていきます。僕が再会を夢見ていたカオサンロードは、もはや記憶の中の街になってしまったんだなーと気付く旅でした。