ON AIR DATE
2023.05.21
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  • J-WAVE
    EVERY SUNDAY 20:00-20:54


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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
世界で最も物価の高い都市トップ11[2022年版]

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TUDOR logo


『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。

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#450 --- 今年お初の“ニューヨーク” ---

前半はリスナーの皆さんから寄せられた
“お便り”を紹介。
曲のリクエストや選曲のオーダーにもお応えします。

後半のテーマは、「ニューヨーク」。

訓市にとって“第二の故郷”と言ってもいい
ニューヨーク訪問・・・
羽田空港で感じたあれこれ。
ニューヨークで過ごした数日間に見たこと、
行動したこと、感じたこと。

今回、最も重要だった旅の目的とは?

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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。

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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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2023.05.21

MUSIC STREAM

旅の記憶からあふれだす音楽。
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
1

Props Over Here / The Beatnuts

2

Selfless / The Strokes

3

Stars (PM-ized Mix) / Simply Red

4

I Do It For Your Love / Toots Thielemans

5

グッド・バイ・マイ・ラブ / アン・ルイス

6

This Time I'll Be Sweeter / Linda Lewis

7

I Would Die 4 U / Art School Girlfriend

8

Day Off / Softy

9

Secret / Fred Again & Brian Eno

2023.05.21

ON AIR NOTES

野村訓市は、どこで誰に会い、
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。


KUNICHI was talking

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去年の5月以来、1年ぶりにニューヨークに行ってきました。出国も入国もやたらと大変だった昨年とは違ってかなり楽になったのですが、代わりに羽田はえらい混雑振りで本当にびっくりしました。出国する日本人の数もそうですが、外国人観光客の多いことときたら。よく”喉元過ぎたらなんとやら”と言いますが、その光景を見た瞬間にコロナ禍で観光客がいなかった頃を懐かしく思ってしまいました。これだけ海外から来日が多いのは、もちろん日本に行きたかったっていうのもあると思うんですけど、円安でとにかく日本はなんでも安いというのもあると聞きました。そんなに安いって言って来るんだったら観光税でも徴収すれば良いのになーと思いました。空港だけじゃなくって京都とか観光客が溢れ過ぎて日常生活に支障が出ているような所は駅とか改札でがっつり税金を取っても良いんじゃないかなーと。本当になんで僕らが払って外国人が遊んでいくんだって腹を立てながら僕はニューヨークへと旅立ちました。今回は知り合いが絡んでいる新しいホテルに泊まらせてもらいました。ダウンタウンにあるヒストリカルビルを改装したその部屋全てには、僕の知り合いのオーディオオタクであるデヴォンが「Ojas (オジャス)」という名前でスピーカーを作っているんですけど、その彼が作ったカスタムスピーカーが全室に設置されていて、しかもスイッチが付いていて2チャンネルの館内専用の音楽番組があるんですよ。それもカレッジラジオでヒップホップを広めた張本人の一人でもあるストレッチ・アームストロングというDJが作っていて、うっかりすると部屋でゴロゴロしてれば良いじゃないかという音環境のとても居心地が良いホテルでした。僕は大体ダウンタウンに宿を取るのですが、それはなんと言っても食べる場所に困らないからです。ちょっと歩けばあらゆる種類のカフェやらバーがあるので、ぱっと食べるのも飲むのも、友達に会うのも楽なのです。しかもですね、大体東京と同じようなもので、歩いていると必ず一人は道でばったり知り合いに会います。そうすると、「おー久しぶり、来てたの? ちょっとコーヒーでも飲まない?」なんてことになって、すぐ近くのカフェでぺちゃくちゃ話したりする。ひとしきり話すと、また一人ふらふらと通りを歩くっていうのがとても好きです。ダウンタウンにはまだ古い看板が残っていたり、そこを抜けてチャイナタウンの雑踏とか色々な食材の匂い、そして意味もなくやたらと鳴らされる車のクラクション。あと、いつもびっくりするんですけど、ヘッドホン経由で一人大声で話しながら歩く人。自分に話しかけられたのかと思うとAirPodsで電話をしてて、恥ずかしい思いをしたことも何度かあるんですけど、そんな光景を見ていると、“あぁニューヨークに来ているなあ” “明日引っ越してきてもすぐにここだったら住めるなあ”って思います。いや、やっていけないなって今回は思いました。昨年も話しましたけども本当に物価が高いからです。アメリカが物価が高いと言うとですね、皆「そうだよね、円安だからね」って言うんですけど、普通に全ての値段が上がっているのです。安いバーに行ってもですね、表記でビールが10ドル以下なんていう店はもう無いです。僕が入ったカフェではですね、烏龍茶の値段を見たら12ドルでした。1ドルが100円だった頃だとしても1,200円。今のレートなら2,000円くらいです。その分、最低時給も20ドルくらいまで上がっているらしいんですけど、それでも生活はとても大変で貧富の差が広がっていると現地の友達も言っていました。それに対して、お値段据え置き、賃金据え置きの日本っていうのは本当に大丈夫なんでしょうか。


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ニューヨークの街全体っていうのはコロナ前の賑わいを取り戻したように見えました。昨年久しぶりに行った時に空き家だった所にも新しい店が入ったり、通りには無数の人が行き交っていて道はいつも通りの渋滞でした。でも何か感じが違う。それは出て行った人たちと新しく引っ越してきた人たちのバランスが急激に崩れて、何か少し地元感が薄れた、そんな印象を受けました。それは東京でも少し感じたことなんですが、急にお店がたくさん潰れて、そこにいた人たちがいなくなり、新しい店が急にできたとしても、街の枠組みが変形してしまったような。もちろんそれでも楽しかったですけどね。予定通りにというか、予定もせずにたくさん友達に会いました。向こうでも昔の友達がカフェの地下にあるスペースでジャズのレコードをかけながら誕生日会をしてくれましたし、懐かしい友達にたくさん会えました。東京の誕生会にも来てDJをしてくれたジェームス・マーフィーが大きいパーティーをやるというので、「DJ見に来いよ」って本当に良いディスコや古いハウスを一晩中聴いて、友達たちと踊りましたし。「インドシン」という80年代にヤッピーに人気だった内装がすごいクラシックな「インドシン」っていうレストランがあるんですけど、高いし自分じゃ絶対行かないんですが、そこでご馳走もしてもらいました。トム・サックスのスタジオでは無理やり短時間で彼が最近作ってる新作の説明とレクチャーを受けてそれはそれは面白かったです。やっぱり旅はとにかく人だなと、僕はまた思っていたんですけども、人以外で1番思い出深かったのは、ちょうど滞在の最終日にRADWIMPSの北米ツアーのファイナルがあったんですよ。それはタイムズスクエアに新しくできた「パラディアム」という名前のコンサート会場だったので向かったのですが、僕はタイムズスクエアって最後に行ったのがいつだか分からないぐらい行かないんですよ。ブロードウェイ沿いのタイムズスクエアっていうのは有名な劇場だらけ、いわゆるブロードウェイというやつなんですけど、どんどんコマーシャル化して、ちょっとしたディズニーランドみたいなんですよね。ものすごく混んでるし。けれども洋次郎のライブは絶対に観に行かなければとタクシーに飛び乗って向かったんですが、その日はもう5月だというのにものすごく寒くて、雨もすごいし渋滞で着くかなーと思って外を見ていると、濡れた路面に劇場や広告看板の光が反射してすごく綺麗でした。ああ、タイムズスクエアってこうやって見ると悪くないなーっと窓からそんな景色に心を奪われて見ているうちに、そういえば自分が中学生の頃にタイムズスクエアに来たことがあるということを思い出しました。あれは80年代後半で、それこそミュージカルとかでも有名な42丁目。あそこはですね、もう本当にストリップだのポルノ映画館などがずらっと立ち並んでいてスリや追い剥ぎが横行していて、とにかく信号とか気をつけろ、僕のおじさんもケチャップをかけられて、ケチャップが付いてるって指摘されている間にお財布を盗まれたりとか。そんな場所だったんですけど、僕にとっては映画『タクシードライバー』とかで観たような景色の匂いが残ってて最高だっていう場所でした。あれから40年も経ってしまったのかっていうのと、40年近く経ってもまだこうして同じ場所にいられて、その場所の遍歴っていうものを目撃できるっていうのは運が良いというか、人生って本当に不思議だなーと、なんとも言えない気持ちになりました。そんな気分で、満員に膨れ上がった会場で現地の人を沸かせるRADWIMPSのライブを観て。打ち上げは、みんなで飲もうということになり、もう20年近くニューヨークで行われている名物ナイト、モリッシーナイト、一晩中スミスとかモリッシーとかニューウェーブの同じ曲が4回ぐらいかかるんですけども、伝統芸みたいな感じで盛り上がるんですよ。そこに何年ぶりかに行って、ノスタルジックな気分に浸りながら朝まで飲んで空港へと戻りました。ニューヨークに行って、何の思い出があるっていうと、昔のことを懐かしく思い出すことだな、そんな思いを新たに帰ってきました。