TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING

『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。

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#458 --- 雑居ビルから生まれる独自の文化 ---

番組前半はリスナーの皆さんから寄せられた
“お便り”を紹介！
曲のリクエストや選曲オーダーにもお応えします。

後半のテーマは「道玄坂」

訓市が中学生の頃から今に至るまで足を運び、
遊び場にもなっている渋谷...
今も雑居ビルが残る道玄坂地区を
再開発する計画を知って感じたこと

世代を超えて様々な人種が行き交い、
それぞれの楽しみ方がある渋谷の魅力とは？

個性的かつユニークなプランの提案・・・


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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎！
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。

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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛

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KUNICHI was talking

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最近だけでもないんですけども、外苑の再開発に反対みたいなことを言ったりインスタでポストしたりすると、「なんで反対なんですか？」とよく聞かれるので、今日はそのことについて話したいと思います。先日、ちょうど僕がアメリカにいる時なんですけども、東京都と渋谷区が道玄坂の百軒店あたりを再開発する、エンタメを呼び込む場所にするというような旨を発表しました。建物の老朽化に合わせて、回遊性向上のための貫通道路の整備、最先端のエンターテイメントなど文化施設の誘致を謳って、地権者と協議するというものでした。これは都市計画に基づく容積率の規制緩和などに伴うもので、また大手が土地を買収して大きなビルを造ったりして整備するいつもの再開発です。読んでいて呆然としてしまったんですけどね、なんで僕がいつも「再開発反対」的なことを言うのか？別に全部反対しているわけではないんですよ。もちろん耐震の問題もありますし、火事が起きた時に避難をどうするのかとか、消防車が入れるのか？といった問題があるのも分かります。けれど、もしタワマンとか高層ビルで同時に火災が発生したらどういう手立てで解決できるの？という疑問もありますけども。再開発の時は「建てる、建てる」で、そういうことを絶対に言いませんから。僕が反対しているのは再開発する時に必ずまとめて大きなビルを造り、大手企業しかテナントに入れないことです。だから金太郎飴みたいな街しかできません。それがもしも地方都市で、近隣の住人の利便性だけを考えているのであればいいのかもしれません。けれども、やれ国際都市だとか、海外から外国人を呼び込む観光業をメインに考える・・・そういう話だと全く違うと思います。「新しかろう、大きかろう」、それが通用しないのが観光です。より新しいもの、より規模の大きなものができれば人はそちらに流れます。J-WAVEのある六本木ヒルズができた時、たくさんの人で溢れていましたが、ミッドタウンができた時はすぐ一瞬そちらに人が流れました。やれソラマチができた、ミヤシタパークができたと、常に新しい商業施設とそれを核にした街づくりというのが叫ばれますが、本当にそうなっているんでしょうか。そこに本当に海外から観光客が集まり、文化は産まれているのでしょうか？「文化というのが何か」それは僕にも分かりませんが、一つだけ分かることは何かをしよう・作ろうという若い人たちが自然発生的に集まり、そこから渦のような力が産まれ出て来るものだと思っています。それは例えば安いアパートが並ぶところだったり、家賃が安くて、商売や自分のスタジオを作りやすい街だったり。誰かが箱を作って、「はい、新しい文化を生み出す場所ですよ。皆さんどうぞ」というところに人は集まりません。僕は長い間いろんなところを歩いて回りましたが、世界を見渡してもそんな街ができたことを見たことがありません。


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僕は百軒店あたりのすごく雑多なところが好きです。散歩をしたりすると、未だにこんな所に古い飲み屋がある。うわぁ〜ちょっといかがわしそうだけれど雰囲気あるな〜と思うような発見がまだあります。雑誌の撮影の舞台として何度も使ったこともあります。外人観光客がカメラ片手にバシャバシャ写真を撮りまくっているのもよく見かけます。もちろん、ぼったくりのような店も怪しい店もあるのかもしれません。いやきっと多分あるでしょう。でもそれと同時に、本当に古い喫茶店や、戦後からずっと続くカレー屋さんがあったり、雑居ビルの中に突然安い定食屋があったりします。レコードバーがあったり、剣道の防具屋さんがあったり、80歳を超えるお母さんがやっているスナックがあったり、僕の知らない店もまだまだたくさんあるんでしょう。そんな街が、大きな商業ビルが並ぶ横にあったりする。それが渋谷を面白い街にしているのだと思います。再開発反対と言うと、「訓市は若い子が遊べる今の渋谷を残したいんだね」と言われますが、そんなことはありません。そういう勘違いな質問をする人こそ渋谷にちゃんと来ていないんだなって思います。実は渋谷はどんな年齢の人も来られるところが好きです。安い焼き鳥屋や串焼き屋は夕方の4時には呑兵衛のおじさんでいっぱいになっていたり、その後ちょっとするとサラリーマンが肩を組んで酔っ払って歩いていて、その横を大学生が騒いでいたり。こんなに雑多な性別や年齢層が混ざる街というのはそんなに他にないと思うのです。それは日本だけでなく、世界的に見てもとてもユニークだと思います。そのユニークさというのは「雑居ビル文化」だと思います。小さなビルが立ち並んで、その中に入ってみないと分からないような店がたくさんある。ジャズしかかけないバーとか、自分の趣味を商売にする店がたくさんあるのです。そんな街って他ではあまりないと思うのです。そしてこういう商売ができるのを可能にさせているのが雑居ビルです。再開発はその雑居ビルを駆逐して、個人が身の丈の商売をすることを決して許してはくれません。道玄坂を再開発するという時に、容積率をそこまで上げないとか、土地の表面積をそのままにするとか。新築でも元々あった雑居ビルの良さを守って欲しいです。路地を歩き回る楽しさを残して欲しいです。それは以前、番組で話しましたけども、神宮外苑の再開発にも言えます。あそこはもともと「風致地区」で、建物の高さが15メートルに制限されていたのが、国立競技場を新築するという時にその制限を変えて、知らない間に「S地域」に変更されていました。「S地域」というのは高層建築を建てられるということですけども、オリンピックが終わったのですから元の15メートルに高さ制限を戻して、その範囲内で再開発をしてほしいです。そうすれば木を切るような大型な建物を建てることとかはなくなると思うんですけども、皆さんはどう思いますか？そして僕はついでに思うんですけども、都内に「雑居ビル地域保護区域」を作って欲しいです。