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訓市が antenna* からセレクトした記事は・・・
6時間待ち!?ミシュラン星付きタイ屋台
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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#467 --- 価格は約10倍!数時間待ちは当たり前 ---
テーマは「バンコクの屋台」
高校時代からの友人で、
今はビジネスパートーナーとしてタッグを組んでいる
大親友と訪れたタイのバンコク...
友人は15年以上ぶりの再訪
見るもの全てに過去の体験と合致することがなく、
ただただ驚くばかり
屋台料理で初めてミシュランの星を獲得した店で
料理を食べるまでの長?い待ち時間、
そして、料理を口にして感じたこととは?
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Automatic Stop / The Strokes
Ballade De Johnny Jane / Jane Birkin
Turn Me On / Norah Jones
How Come U Don't Call Me Anymore (Live) / PRINCE & The Revolution
2000トンの雨 / 山下達郎
Heartbreaker / Dionne Warwick
Tears Dry On Their Own / Amy Winehouse
Hydrocodone / Cuco
Two Fish And An Elephant / Khruangbin
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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夏の終わり、8月の最終週にタイのバンコクに行ってきました。弾丸の2泊。すごく短い滞在だったのですが、帰りは夜便で1日使えたのでそれなりに時間を過ごすことができました。今回は番組で以前お話ししたこともありますが、バンコクにデザインしたレコードバーのオーナーの別のプロジェクトをやることになり、現場を見たりデザインミーティングがあるということで、僕が内装を一緒にする同僚というか友人と2人で出かけました。考えてみれば2人で一緒に海外に行くのはいつ振りか、多分オレゴンのポートランドに行って以来で10年以上ぶりでした。僕らは学校は違ったんですけども高校時代に知り合い、それから一緒に夜遊びもして旅もして、30歳を過ぎてからは初めて借りた部屋も一緒に住んでいましたから、もう30年以上一緒にいて親家族より長く時間を過ごしてきた友達です。内装業も一緒にやるようになって20年経っていますし、「友達同士でここまで長持ちしたのはミラクルだね」って2人で話しながらタイに行きました。僕らが90年代に行っていた頃はタイっていうのは往復4万円。それがですね、仕事ということで自腹じゃない飛行機のチケットを用意してもらい、ホテルまで用意してもらって泊まれるのです。しかもエアコン付きの。そうです、昔は本当にお金が無くて、とりあえずバンコクまで出てから次どこ行くか決めようかっていう街で、もう疲れ果てて今日だけはって時じゃないとエアコン付きの部屋なんかもちろん泊まれませんでした。しかも個室じゃなくて大体が4人部屋とかで、天井に付いている、いつ落ちてくるのか分からないようなオンボロなファンを眺めながら、ベッドと言いますけどもほぼ木のベンチのような寝心地のベッドに寝る。それが僕ら2人のデフォルトの旅でしたから、今回行きの飛行機で「人生って不思議だなぁ」という話になりました。感謝の気持ちを忘れない50歳、それが僕たちなのです。友人はバンコクに行くのが10年以上ぶりだったので、それはもう空港から度肝を抜かれていました。ほぼ、無言です。「俺って今、バンコクにいるの?それとも違う国の違う街にいるの?」高層ビルを眺めながら、どうも頭が完全にバグっているようで、色んなメニューや価格を目にするたび、当時の価格と比較しながら目を点にしていました。
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昼間は思った以上に打ち合わせだの何だのを詰め込まれて本当に何もできなかったのですが、帰る日のお昼に「ジェイファイ」という店にご飯を食べに行きました。ここは以前から聞いていたのですが、ほぼ屋台に毛が生えたような、いわゆるストリートフードの店です。「ジェイファイ」というのはタイ語で「ほくろおばさん」という意味らしいのですが、オーナーシェフのあだ名で、73歳になるジェイファイさんが全ての料理を1人で作るという店で、屋台なのに価格が普通の屋台の10倍くらいする。それでずーっとやってきたらしくてですね、美味しいとは言われていてもそんな値段を払う人、しかもお店は汚いっていったら失礼ですけども、いわゆる高級店の装いでは全くないので、行きたい時にすぐ行けるお店だったらしいんですけども、5、6年前にストリートフードの店として初めてミシュランの1つ星を取り、Netflixのドキュメンタリーに取り上げられてからはとんでもない行列の人気店になってしまったそうです。僕は旅行中にミシュランの店だから行くとかってことはまずありませんし、そもそも観光客で溢れかえる店に並んでまで行こうとしたこともないのですが、73歳のシェフが1人で料理するというのに大変惹かれました。大体人気になるとシェフの名前だけで実際の料理をしないというのが普通ですし、しかももう高齢。いつまで食べられるか分からないわけで、そう言うと友達が朝から並んでくれて、昼くらいに番号が近くなったから来いというので向かいました。行ってみると店の前は黒山の人だかり。もう並んでも今日は無理だという紙が貼ってありましたが、ひっきりなしに「今日食べられないか?」という客が来ます。そして店の仕切りも無い、ほぼ道に炭火焼きで中華鍋をふるうジェイファイさんがいました。トレードマークのゴーグルをして、なぜか迷彩服を着ているという。その動きがすごいんですよ。とんでもないスピードで料理を作り続けていました。重い中華鍋をふるい、料理が出来上がるとすぐ隣のアシスタントですかね、その人が次の鍋を手渡す。僕らは昼の12時半に並び始めて席に着けたのが結局午後2時半、料理が出てきたのは3時を過ぎた頃だったのですが、ジェイファイさんはその間、1秒たりとも休まず鍋を振り続けていました。店は朝の9時開店で1日に100組まで受け入れるらしいんですが、僕が見た限りその間、休みゼロ。ご飯のほうは名物のカニの卵焼きとかを一通り食べて、もちろん美味しかったのですが、それが実際にミシュランの星レベルの料理なのかどうかっていうのは僕には分からなかったです。そもそも料理の美味しさなんて食べた自分が決めることで、ミシュランさんの基準も何だかよく分からないからです。ただ確かに火入れとかすごく完璧というか美味しかったですし、良いなと思いましたが、それよりも何よりその働き続けるおばさんのプライドというか仕事っぷりに僕はやられてしまいました。73歳ですよ、仕事って色んなこと考えますが、つべこべ言わずにプライドを持ってやれっていう背中を押されたというか。まだまだだなと、そう思いながら一生分くらいのカニを食べて帰ってきました。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。