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Let's travel! Grab your music!
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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#493 --- 旅先で思いがけず聞こえてきた曲 ---
番組前半はリスナーの皆さんからの“お便り”を紹介。
リクエスト曲もオンエアします。
後半のテーマは「ロサンゼルス」。
先日、三泊の弾丸でロスに行った訓市...
ごくわずかな限られた時間の中で訪れた
気になる建築物とは?
建設途中で放置されているビルが・・・
そして、何気なく入店した古着屋で聞こえてきたのは・・・
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Island In The Sun / Monty Alexander
Air A Danser / Penguin Cafe Orchestra
Flowers In The Window (BBC Session) / Travis
Stumble / J Mascis
Old Snow, White Sun / 幾何学模様
May Ninth / Khruangbin
Cry / Cigarettes After Sex
How Does It Make You Feel / Air
Different Names For The Same Thing / Death Cab For Cutie
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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先日はロサンゼルスに行ってきました。前回のパリと一緒で、また3泊の弾丸旅行というもので、もう少し長く滞在したかったんですけど、何しろ3泊と言っても実質使えるのは2日半ほどで、ほぼ国内旅行と一緒ですよね。「疲れに行ってるんじゃないの?」とよく友達に言われるんですが、それでも行けば友達に会えますし、行ったら行ったで楽しいので引き受けてしまうんですけども。今回は新しい商品ラインを発表するということでスニーカーを作るVANSに招待されて行ってきました。夜便に乗って着いたのが同日の午後。空港で友達がピックアップしてくれて、宿泊先のあるダウンタウンへと向かいました。ダウンタウンはやはりホームレスが増えている印象で、これはサンフランシスコとかニューヨークも同じ現象なのかなと。コロナでビジネス街がロックダウンした後に、みなリモートで仕事をしたりオフィスが縮小したりして、周辺のお店が潰れまくって人気がなくなり、そこで治安が悪くなるという悪循環な現象で、ちょうどポートランドに住む友達と話した時もポートランド中心部も同じだと言っていました。東京で言ったら新橋や丸の内、新宿の副都心あたりの会社が引っ越して、周りの店が潰れて治安が悪くなるといったところでしょうか。数年前だったら考えられないんですけども、街っていうのはやはりそれ自体が生き物で、常に変わっていくものなんだなーと思いました。そんなダウンタウンで面白かったのが建設途中で資金繰りが悪化し、未完成のまま放置されていた中国企業が持つ高層ビル。去年マイアミで行われたアートの祭典「アート・バーゼル」の時に、ちょうどギャラリーがグラフィティアーティストを集めてビルを描かせたのですが、それを見たロスのグラフィティアーティスト達が、「そんなのはグラフィティじゃなくて、ただの拝金主義だ!本物はこうだ!」と、そのダウンタウンの無人のビルにみな不法侵入して、わずか数日で3棟あるビルをグラフィティで埋め尽くしてしまったみたいなんですね。もちろん違法行為なわけで、現地でも色んな意見がニュースになっていましたけど、実物を見るとなかなか素晴らしい作品になっていました。エレベーターもない高層ビルのバリケードを突破して、階段を登り、多分命綱なんて無しに、塗料も自費で買って自分たちで持ち運び、高層ビルの側面に絵を描いていく。1円にもならないこと、さらに言えば全て持ち出しなのにやるという気合いは、確かに最近まで言われていたバブルに浮かれていたアート界には無いもので、色々と考えるものがありましたね。ダメなものなんですけど、絵を描く初期衝動というか、子供がダメと言われた家具に描いちゃうみたいな心意気をすごく感じてしまいました。
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僕の親友がシルバーレイクという、まあよく知られた街の隣にあるロスフィリスに住んでいるのですが、そこに築100年以上の映画館がありました。それは最近LAに行くたびに、見ると工事中となっていました。コロニアル風とでも言えばいいのか、細かい装飾が施された古い小さな映画館で、こういう映画館が東京にもあればいいのになと常々思っていました。それがある時から仮囲いがかかり、1階横のスペースが取り壊されて剥き出しになり、俗にいう耐震構造の建物じゃないから壊されてしまうのかと気を揉んでいたのですが、今回横を通ると復活しているじゃないですか。昔は赤というか、えんじ色の建物だったのですが、今は渋いベージュに塗り替えられ、「VISTAシアター」として復活していたのです。オーナーは元祖映画オタク、クエンティン・タランティーノ。きちんとセレクトされた映画を見にたくさん集まっていました。こういう映画館っていうのがあると良いと思うんですけども、誰かセレクターとして人を立てて、良い名画をセレクトして、隣でお茶ができたり酒が飲めたり、カウンターに行けばお手頃価格の良いお土産Tシャツなんかも売っていたりする。そういうところをちょこちょこ見たり、時間が無い中で色んな人に会い、色んなことを考える時間があったんですけども、今回一番記憶に残っているのは、珍しくロスに雨が降っていたのですが、たまたまメルローズの外れを歩いていた時のことです。タバコを吸いながら人影の無い辺りを歩いて、窓を覗き込んでいました。いつか見た映画のポスターやガラクタが売っている。そんな中、買う気もないのに古着屋さんがあったのでフラっと入ってみました。並んでいるTシャツを順番に眺めていきながら、もう出ようかなとすると店員さんに、「奥にもっとありますよ」と声をかけられてしまいました。そのまま出るのも失礼だなと思って、言われた通り奥まで行き、とりあえずハンガーにかかっていた服をひと通り眺めていました。お店には古いスピーカーが置いてあり、入った時から小さな音で音楽がずっと流れていたのですが、ある瞬間に突然、音が大きくなったような気がしてメロディが耳に飛び込んできました。あぁこのピアノの音は…。それは昔よく聴いたデス・キャプ・フォー・キューティの曲でした。窓の外に広がる灰色の空としとしと雨。少しカビたような匂いの古着屋さんの中でその音がものすごくマッチしてですね、しばらく僕は服も見ずにずっとそこに立ちすくんでいたんですけども、そういう時に思うのは、旅先で知った音楽と出会うって、やっぱり最高だなっていうことです。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。