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Let's travel! Grab your music.
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『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
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#515 --- あと350日後くらいでしょうか ---
テーマは「フジロック 2024」
1998年、嵐の中の第一回以降、
翌年の豊洲公演を除いて全出席している訓市。
なぜ、毎回、参加しているのか?
フジロックの何に魅了されているのか?
今回の総括も含めて、
フジロックについて語ります。
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「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
訓市がセレクトした“お便り”の中から
毎週1通を厳選して、
「番組オリジナルTシャツ」をプレゼント!
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宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
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MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Whatever Gets You Thru The Night / John Lennon
Seaside Woman Blues / サザンオールスターズ
甲州街道はもう夏なのさ feat. おかもとえみ / fox capture plan
Karen / 藤原ヒロシ
ありったけの愛 / シアターブルック
Thousand Knives / Thundercat
Sweet Life / Frank Ocean
Out Getting Ribs / King Krule
Didn't I / Darondo
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
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フジロックが終わると僕の中では1年の半分が終わってしまい、夏ももう終わりだというふうになってます。僕にとって「正月」「フジロック」「忘年会」というのは1年のカレンダーの中の大きな幹となるものです。初めて行った第1回目が1997年だったと思うんですけども、98年の豊洲かな?湾岸であったのを逃して以外、すべてのフジに参加しています。スマッシュの人間でもないのに…。と言っても、お客さんとして行ったのは1回も無くて、常に仕事として潜り込んでいました。なぜ客としてでなく働くのか?それはチケットを買うお金が無かったっていうのと、何とか入れてくれって頼み込むようなフジロックの主催者や関係者と縁もゆかりも無かったからです。第1回目は知り合いがお客さん相手に水を売るスタンドの権利を得まして、そこのスタッフとして行きました。会場横に売り場があったので、水を売りながらレッチリだのAphex Twinだのを観ることができて、しかもバイト代まで貰えるのなら行かないのはおバカさんだと張り切って行きました。けど、本当に地獄でした。台風直撃でずぶ濡れで震えるお客さん相手に、どうやってキンキンに冷えた水を売れというのでしょうか?4トン持ち込んで3トン余るっていう。しかも、それをピストン輸送で2回、東京まで戻ってトラックに積んだんですけども2往復目に次の台風が直撃しまして、もうトラックは動かない。とんでもないことになりました。けれども不思議なものでフジの1番思い出深い経験はって言うと、そのトラックを思い出します。まあこういうのって大抵旅でも人生においてもそうだと思いますけども、最初から最後までスムースで綺麗なものを見たという旅よりも、トラブル連続の旅の方が遥かによく覚えているものです。第3回目は出演者の通訳をやり、それからバーのバーテンをやり、DJをやったり…という感じでフジに参加しています。お金が無くてチケット代が払えないという頃から、あれ?もうそろそろ自分で3日間買えるかもとなっても、なんとなくそのまま仕事として行っています。もしフジロックに行きたいけどお金が無いから無理だなぁ〜という若い人は仕事を探すっていうのも手だと思います。お目当てのアーティストを観られないかもしれませんが、断言します。フジロックはある意味、参加することに意義がある。知らないアーティストを見つけることができたり、色んな発見があります。「見たいアーティストが今年はいない」「知らないラインナップばかり」というのは過去20年以上、毎年耳にするセリフですけども、行ったら行ったで必ず新しい好きなアーティストが見つかったという話になります。フェスってお気に入りを観に行くっていうより、普段聴かない・知らないアーティストを発見する場なんじゃないかなって思ってます。
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もちろんフェスでお目当てのヘッドライナーがいるのに越したことはないんですが、本当にいなくても十分楽しいです。僕は元々、そんなに邦楽に詳しくなかったのですが、井上陽水や忌野清志郎などはフジで初めてライブを観て好きになり、そのあとソロコンサートを観に行くくらいになりました。もしあの時、別ステージを移動して歩く時に彼らのライブに出くわさなければ、きっと今は無かったと思います。今年もTジーザス&メリーチェインのような、僕が若い頃好きだったバンドを観ることもできれば、今までライブを観る機会がなかったTurnstileやGlass Beamsといったバンドも観られて、とても楽しかったです。今年のフジがどうだったかと言うと、まず暑い。90年代より確実に暑くなってます。もしかしたら7月末じゃなくて8月末とかにできるんだったら、ずらした方が楽かもしれませんね、現実的に。ただ、そうすると僕の1年のカレンダーが狂ってしまうので、それは嫌なんですけども。そして一番変わったなと思ったのがアジア人のお客さんがとても増えていたこと。アメリカでやってるコーチェラフェスみたいな気分なんですかね。フェスファッションみたいな、好きな服を着てセルフィーを撮っている中国や韓国の若い方がとても多かった気がします。楽しんでいて何よりですけども、肌感で言うと日本人より酒を飲んで騒がない気がします。わっと騒ぐよりSNS用の写真。まあそういうのも何度か来るうちに取り込まれて変わっていくんだと思いますけども。反対にすごく減ったのがオーストラリアとかニュージーランド勢。これは何でも、向こうでもフェスが始まり開催時期も近くて出演者が被っていることが理由らしいんですけども、彼らは大酒飲みで朝まで歌ったりとても陽気だったので、いないとフェスティバル感が減少したようで寂しいような気がしました。まあでもフェスというのは本当にいろんな過ごし方がありますから、無理してでもたくさんバンドを観るのが一番っていう訳でもなくて、のんびり過ごしたり、川遊びをしたり、日中温泉に行く人もいますし、なかなか良いですよ。ちなみに僕が一番好きなのは「クリスタルパレス」という古い組み立て式の木造のサーカス小屋です。小さい時はサーカスに入って旅して回るのが夢だった僕としては、この世で1軒建物をもらえるとしたら「クリスタルパレス」が欲しいというぐらい好きです。何しろ天井がストライプでドレープになっていまして、もうそれを見るだけで心が踊ります。その場所では、あまり一般には知られてないかもしれませんが、色んな民族音楽やスカだののバンドのライブが朝まで組まれています。それが本当に良いんですよ。年配の方も若いお客さんも、みんなお酒片手にいろんなリズムで、ゆらゆらゆらゆら踊ってるんです。フジロックがモデルにしたというイギリスのグラストンベリー・フェスティバルを思い出します。あそこも色んなテントがあって、ありとあらゆる音楽を奏でる人たちがいます。ああ、こうやって話していたら、またフジに戻りたくなりました。あと350日ぐらいあるんですかね、次回まで。皆さん、来年はぜひ。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。