★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
Let's travel! Grab your music.
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
『TRAVELLING WITHOUT MOVING』・・・
「動かない旅」をキーワードに旅の話と、
旅の記憶からあふれだす音楽をお届けします。
ナヴィゲーターは世界約50ヶ国を旅した野村訓市。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
#517 --- だから、“9月”は・・・ ---
今年の8月もお終い...
たくさんの思い出とともに
夏から秋へと変わる時期を迎えて、
テーマは「9月」。
訓市にとって、一年のうちで最も◯◯な月が「9月」
かつて、バックパッカーだった頃、
夏の終わりから9月に差しかかる時期の過ごし方
毎年9月を迎えて訓市が抱く感情とは?
リスナーの皆さんから寄せいただいた
“お便り”の中から訓市が独断でセレクト
旅のエピソードからお悩み相談まで・・・
テーマは何でもないOK
曲のリクエストや選曲オーダーにもお応えします。
毎週1名の方には、
「500回オンエア記念Tシャツ」をプレゼント!
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
「旅」と「音楽」に関するエピソードや思い出の
“お便り”をお待ちしています。
「旅先で聴きたい曲」のリクエストも大歓迎!
手紙、ハガキ、メールで番組宛てにお願いします。
番組サイトの「Message」から送信してください。
訓市がセレクトした“お便り”の中から
毎週1通を厳選して、
「番組オリジナルTシャツ」をプレゼント!
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
宛先は・・・
〒106-6188
株式会社 J-WAVE
TUDOR TRAVELLING WITHOUT MOVING 宛
_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/
MUSIC STREAM
動かなくても旅はできる。
ミュージック・ストリームに
身をゆだねてください。
Tonight, Tonight / Snail Mail
I'm On Fire / John Mayer
Either Way / Wilco
Gold / Sigur Ros
さまよいの果て波は寄せる / 松任谷由実
Leave My Home / FKJ
Les Fleurs / Minnie Riperton
To Love / Tigran Hamasyan
Aziz And Azizah / Kip Hanrahan
ON AIR NOTES
どんな会話を交わしたのか。
何を見たのか、何を聞いたのか。
その音の向こうに何があったのか。
KUNICHI was talking
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
あっという間に終わってしまうと思ってはいましたが、本当にあっという間に夏は暦上は終わり、9月になってしまいました。まあ猛暑猛暑と言って、本当に未だに暑いですけども、それでもやっぱり9月になると空の青さが変わったり、日差しの角度が緩くなったり、夜は少し涼しくなってくる。それを、「ああ、少しは過ごしやすくなったな」って喜べる自分と、夏の終わりの気配を感じて寂しくなる自分がいます。こうなってくるとセミの声より、夜、耳にする鈴虫の声がより耳に響くといいますか、とにかく寂しい気分になる方が多い気がします。そして夏の終わりということで、こういう時期になると自分がまだ若くて、バックパックを背負って各地をフラフラしていた夏のことを思い出します。夏の間はヨーロッパにいることが多かったのですが、向こうではだいたい6月から夏が始まります。昼がやたらと長くて、夜がやたら短い。そんな期間を目一杯楽しく過ごそうとする現地の人たちの雰囲気もすごく明るくて親切で、ああ夏って素晴らしいなと思ったものです。ヨーロッパの街には良い公園がたくさんあって、そこで昼間芝生に寝転がったり、安いサンドイッチとかを買ってきてベンチで食べたりしたものです。サンドイッチは買いましたけど、お金が本当に無かったのでよく自分でサンドイッチを作っていましたが、思い出すのがマヨネーズ。日本のは卵がちゃんと入ってるからですかね、黄色っぽいんですけども、向こうで売ってるマヨネーズというのはほぼ真っ白なのですが、もちろん冷蔵庫なんか無く、自分のカバンに入れて持ち歩いていたので、その真っ白いマヨネーズがすぐ日本のマヨネーズのような色になってくるんですよ。サンドイッチを作る前に必ず蓋を開けて匂いを嗅いで、「うん、今日までならまだいけるかな、これ」というのを繰り返していました。もうあれは食べたくないですね。ヨーロッパ内はバスが安くて便利で、色んな所へ乗り継いで行きました。草原を越えて、山を越えて。バス旅行の素敵なところは国境を越えただけなのに、「ああ、本当に国が変わったんだな」という違いを実感できることです。東京から神奈川、埼玉と車で行くくらいの感覚で、いくつも国をまたいで行くことがあったり。そうすると風景や空気感が変わるのです。島国育ちの自分、日本人にはきっと一生分からない、あの国境という感覚。それを時間をかけて感じられるので、バス旅行がヨーロッパでは一番良いと思います。もちろん時間はやたらとかかりますし、バスステーションにはスリがたくさんいますし、座ったら座ったで腰も痛くなりますが、学生時代か長い休みが取れるうちに絶対一度はやっておいた方がいいと思います。僕はそうやって毎年、ヨーロッパ中をバスで回り、夏が終わるのが嫌すぎて、だんだんと南下したりして夏を引っ張っていました。そろそろ夏が終わりだねって周りが言っても、いや、認めない。そんな感じでした。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
自分がいくらまだ夏だと言っても、9月に入るとやっぱりヨーロッパも雰囲気が変わります。バカンスの時期は完全に終わり、人々は街に帰って日常を過ごし始めます。賑やかだった街の広場のバールやカフェも夜となれば人が減り、観光地は宿も何もかもが安くなる代わりに、「はいはい、夏の間にもう稼いだから、そろそろ店じまいしてもいいかな」というだるい空気感に変わります。島にでも行こうと港のターミナルへと出かけると閑散としていて、船に乗っても特等席のようなデッキの先端にもすぐたどり着ける。そして気温が少し涼しくなった風などを受けているうちに、何とも言えない寂しい気持ちになってくるのです。あの頃はひとり旅をしていましたから、そうなるともう寂しいの二乗ぐらい寂しくなるんですよ。こういう時期に一人、船に乗るのは色んな意味で危険だなと思ったくらいです。とは言え、それでも島などを目指していたんですけど、島に着いたら着いたで目に入る光景全てが閑散としていて、もしそこで写真を撮っていたとしたら寂しいポストカード集みたいになるような雰囲気ばかりでした。人気のないビーチ、1本だけ立つパラソル、乗り捨てられたままの自転車。ピークシーズンには無数に停泊していた沖のヨットやボートの姿を消して、そこにあるのはキラキラと光る水面だけ。思い出すだけで手に取るように寂しくなってきます。あの頃は夏が過ぎると、「ああ、この後、自分はどこに行けばいいんだろう…」と毎年思っていましたが、東京にいる今も似たような気分になります。僕にとって9月は一年で一番メランコリックな月なのです。まあでも、一般的に言えば9月というのはまだまだ暑く、夏気分を味わえる。そしてオフシーズンに入ってくるので、どこへ行くにも費用が安く済んだりもします。忙しくて8月に休めなかった、お盆はどこも高いし混んでいるから家でゴロゴロしていたという人は今がチャンスだと思います。ただし、僕のようにちょっと閑散とした観光地を見て寂しくなってしまう人には向いていないかもしれません。
野村訓市
1973年東京生まれ。幼稚園から高校まで学習院、大学は慶応大学総合政策学部進学。
世界のフェスティバルを追ってのアメリカ、アジア、ヨーロッパへの旅をしたトラベラーズ時代を経て、99年に辻堂海岸に海の家「SPUTNIK」をプロデュース。世界86人の生き方をたったひとりで取材した「sputnik:whole life catalogue 」は伝説のインタビュー集となっている。
同名で「IDEE」よりインテリア家具や雑誌なども制作。現在は「TRIPSTER」の名で幅広くプロデュース業をする傍ら、ブルータス等の雑誌などで執筆業も行う。