尾崎世界観のキングスプレイス
5回目のキングスミーティングはゲストに、
小説家の金原ひとみさんが登場しました。
尾崎「こんなマニアックな話をしても、
リスナーの方には伝わらないと思うんですけど、
文學界新人賞の選考委員に今度からなられるんですね」
金原「はい、参加させてもらうことになりました。」
尾崎「その時のコメントがめちゃめちゃカッコよくて」
金原「(笑)いやいや、何がバズるか分からないものですね。
なんでこんなことが話題になったんだろうって…」
尾崎「何て書いたんでしたっけ?」
金原「小説書けたら送ってね、みたいな感じのことを」
尾崎「あれすごい良かったなー。」
金原「正直言えば、何も言いたくないというか、
読む前に言うべきことは特にないんじゃないかなって」
尾崎「ミュージシャンと小説家の1番の違いかもしれないですね。
何かを評価するっていうことがあんまり無いので」
金原「そうですよね、オーディションとかはあるかもしれないですけど、
デビューを決定するみたいなものはそんなに無さそうですね、音楽は」
尾崎「作家の方は、新人賞を受賞してデビューってことですもんね」
金原「やっぱりそこが1つの登竜門というか、間口になってますね」
尾崎「それでデビューして、キャリアを重ねて、
ゆくゆくは自分が選考委員になるっていう…」
金原「不思議ですね。ついこの間私も応募したような気がしていて」
尾崎「応募します」
金原「いいですいいです(笑)
そんなことしたら尾崎さんとっちゃうんで(笑)」
尾崎「とれないとれない(笑)」
そんな金原さん、よくライブに行っているとのこと。
話は最近のライブ事情について。
尾崎「金原さんも音楽好きで、よくライブに行かれてますよね」
金原「はい、そうですね。
特にコロナ禍に入ってからは、今を逃したら
いつ行けるか分からないって言う気持ちがあって、
後先考えずに気になったものはとりあえず応募するっていう感じで」
尾崎「最近はいけてるんですか?」
金原「はい、割となんかライブハウスの方も気をつけて
対策をしながらって言うことなので、
こちらもあまり気にせずに、歓声出さないとかを
気をつけつつ、楽しませてもらってます」
尾崎「創作にはライブに行ってるとどんな影響があるんですか?」
金原「そうですね、全然違う脳を使うなっていう、
創作している時と音楽に触れている時って。
本を読んでいる時、書いている時と音楽を聴いている時って
いつもとは違うところを活性化させてるみたいな感じがしますね」
尾崎「自分はやってる分、誰かのライブを見てそういう感覚になれないので、
そこはちょっと損ですね」
金原「でも尾崎さんも書いている時と,
ライブをやっている時って全然違いますよね」
尾崎「違いますねー。」
金原「そこの使い分けっていうのはみんな気になってると思いますけど…」
尾崎「どうしてるんでしょうね、
まあライブの時の方が辛いかもしれないですね。
小説はやり直せるし、書いてるところは見せないから
誤魔化せるんですけど、
あとは音楽は本業だから絶対にミスをしてはいけないという感覚です」
金原「文章の方では挑戦とかチャレンジとかが…」
尾崎「ダメでも当たり前だという気持ちでやれるので。
だからある意味お客さんですね。お客さん感覚で…」
金原「いやそんな気持ちでいたらダメですよもう(笑)
芥川賞候補になっておいて何を(笑)」
尾崎「そうか…もう逃げられないか」
金原「もう逃げられないですよ(笑)」
金原さんの新刊『アンソーシャル ディスタンス』。
この本に込めた気持ちとは。
尾崎「作品の中にもライブを楽しみにしていたカップルが出てきますよね。
ああいうのを読んでると、
お客さんってこういう感じでいてくれているのかなと思うし」
金原「そうですね。私自身もコロナになって次から次へと中止になって、
中止っていう連絡が来るたびに『そのために頑張ってきたのに』
っていう気持ちを抱えていたので」
尾崎「それを作品にしたのも早かったですよね」
金原「緊急事態宣言が出るか出ないかぐらいの時に、
これは書き留めておきたいというか、今じゃないと感じられないものが
込められるんじゃないかと思って」
尾崎「当時も『アンソーシャル ディスタンス』っていうタイトルだけで
1人勝ちしてましたもんね」
金原「あの時は私の中でも大きな出来事だったし、
今やりたいこと、好きなことが禁止されている状態で、
それが生活の中心になっている人とかが
どういう思いでいるんだろうっていうのがすごく気になったし、
今こそ書いて置きたいっていう気持ちがありました。」
尾崎「バンドを好きで追いかけてくれている人たちは共感すると思いますね」
金原「自分の大切なもの、好きなものを、
自分とは関係のない所で奪われてしまったっていう人たち、
それでそんなの当たり前だろって世間から抑圧され続けた人たちとか、
やっぱり音楽なんてとか小説なんてとか、不要不急っていう言葉も
出たりとかもして、そういう言葉で傷ついたりした人も
すごく多いと思うので、そういう人たちの息継ぎになるような瞬間を
小説で与えられたらなという気持ちもあって書いた小説なので、
是非読んでいただければと思います!」
音楽に対する思い、ライブに対する思いをたくさん語っていただきました。
金原さん、ありがとうございました!