at home QUIET POETRY
一日の終わりに、一編の詩を。
詩人の菅原敏が 街にそっと詩を注ぐ 真夜中のひととき。
新たな街、新たな言葉との出会いをナビゲートします。
菅原敏の詩の世界をご紹介
2020.03.17
今夜はここ、桜の名所・目黒川から。
桜の時期には川の両岸を人々が埋め尽くすほど賑わうこの街ですが、
終電の後や早朝には、驚くほど静かで、
私がこの街から引っ越したのも、ちょうどこんな桜の時期でした。
この川沿いにはどうゆうわけか、美しいエゾシカのような人たちが暮らしているのをご存知でしょうか。
それでは、この川沿いに注ぐ一編を。
『背中に気をつけろ』菅原敏
春を迎えるとエゾ鹿のツノは
ぽろんと自然に落ちるそうだが
この街の女たちはといえば
相変わらずにょきにょきツノを伸ばし続け
ひづめを鳴らして
勇猛果敢にドアを突き破る
スーパーマーケットで背後から
ぼーんと弾き飛ばされたこともあった
セーターの背中にあいた穴
そうして私は逃げるようにして
慣れ親しんだ小さな街を背中に背負い
たどり着いた新たな場所で
荷をほどき ふと見渡せば
やわらかい風の中に
いくつもの花
2020.05.20
『古いホテル』
2020.05.11
『タンザニア』
2020.05.05
『ピーターラビット』
2020.04.30
『ふたつ重ねて』
2020.04.29
『森の生活』
2020.04.14
『すべて悲しき若者たち』
2020.04.08
『街の素顔』
2020.03.30
『裏窓』
2020.03.24
『4月のふたり』
2020.03.17
『背中に気をつけろ』
2020.03.09
『Tea for Two(二人でお茶を)』
2020.03.03
『食卓に溺れる』
2020.02.27
『甘い生活』
2020.02.25
『白と黒』
2020.02.18
『夜のかもめ』
2020.02.11
『バスタブの音楽』
2020.01.30
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