BIN'S ROOM

菅原敏の詩の世界をご紹介

2020.04.30

『ふたつ重ねて』

今夜は皆さまから頂いた、暮らしのお悩みや詩を注いでほしい思い出の街などのリクエストに、一編の詩でお答えする「詩の処方箋」。
本日はこちらのご相談です。

ラジオネーム:春二番さん(千葉県在住、会社員26歳)

「こんばんは。毎晩楽しく聞いています。敏さんの番組がきっかけで詩に興味を持つようになりました。素敵な番組をありがとうございます。私が敏さんにリクエストしたい詩は、料理をするモチベーションの上がる詩です。
一人暮らしを始めてから何度も自炊に挑戦しようとしているのですが、いつも数日で挫折していて・・・今回こそはキッチンに立つことを習慣にしたいです。料理が続けたくなるような詩があればぜひよろしくお願いします」
とのこと。春二番さん、ありがとうございます。

春二番さんに処方する詩はこちら。


『ふたつ重ねて』菅原敏

そのふたつをうすく切ったら
バターを引いた鍋のなか
交互に重ねていくだけだから
言わなかったこと 言えなかったこと
時にはレーズン シナモン散らし
半カップほどの水を差し
弱火でコトコト煮詰めていく
静かに湯気が ひび割れた
あの日の頬を うるおして
一枚の紙 にじんだ文字
20年の歳月を折りたたむ
ケーキのように取り分けて
バニラアイスを添えたなら
ひとさじ分のほろ苦い
昨日が明日と 溶け合う午後に

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