BIN'S ROOM

菅原敏の詩の世界をご紹介

2020.05.20

『古いホテル』

今夜はここ、港区お台場より。

この街は海沿いに立つホテルの街。
かつて私が目黒区・祐天寺に暮らしていた頃、部屋の水周りの配管を改修することになり、家のお風呂が使えないため、2週間分の宿泊費を支給されたことがあった。

この機会に東京のホテルをハシゴしてみようと思い立ち
新宿、日比谷、紀尾井町など様々な東京のホテルを泊まり歩いた。
そして最後に泊まったのが、ここお台場のホテルだった。

暮れ行くレインボーブリッジや東京の夜景をひとりで眺めていると、
なんだかおかしくもありたまにはこんな過ごし方もいいのかなと、
夜の船が音もなく岸を離れていくのをビールを飲みつつ見つめたり。
そんなお台場での時間でした。

今夜も今夜でお届けする一編の詩は、こちら。

『古いホテル』菅原敏

窓辺に腰掛けて

いつも通りの街の景色

なまり色の石畳

夜の空気を吸い込めば

めまいするほどの歳月

海より深いシーツ

枕を抱えて漂って

何年待っても届かない

ルームサービスを

持ち続けているので

もう二度と

チェックアウトできない

かもしれないと

絵葉書に書くための

ボールペンに書かれている

ホテルの名前

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